258.心ここにあらず
「マスター。どこに行かれますか?」
「えっ?マヌセラに行こうかと思ってるんだけど」
「私もついていきます」
「うん!」
俺はゴーレと共にマヌセラに向かった。
▽ ▽ ▽
マヌセラに到着すると、レオは庭を駆け回り、海にはタックがいた。
「タック!居心地はどう?」
ギャムギャーム!
たぶん問題ないのだろう。
港エリアに行くと、ノヴァと漁師達が居た。
「ノヴァ!今到着したの?」
俺が声をかけると、ノヴァはものすごい勢いで詰め寄ってきた。
「え?どうしたの?」
「なんなの?この凄い港は!!それにこの建物は!」
「あー。ライル商会の港だよ」
「ライルのエクストラスキルってこんなにすごいの?」
「いや普通だよ。戦いに全然使えないし」
「いや充分すごいでしょ。だってお父さん達を見て!あんなキョトンとしてる姿見たことないよ」
ズサスさん達は港を見たまま動かなくなっていた。
「ちょうどいい。港を案内するよ」
俺はそう言って、みんなを船着き場まで案内した。
「ここが船着き場です。基本船はここに止めて、荷物の積み下ろしなどをしてください」
「ライルくん。これはなんだい?」
ズサスさんが大きな水晶のようなものが乗っている台座を指さした。
「これは船の管理ができるマジックアイテムです。ゴーレ、船を海に出して」
「承知致しました」
ゴーレはマジックバックから船を1隻出した。
「これに触れながら魔力を込めてください」
俺は水晶に触れて魔力を込めた。
すると、水晶の上にウィンドウが現れた。
「これを操作して船の出し入れができます。船の種類によってはマジックボックスがついてる船もあります。中身をしっかり取り出してからしまってくださいね。船は全部しまっておくので、ズサスさんのほうでチェックお願いします」
「あ、ああ。わかりました」
心ここにあらずだった。
「他の説明も1回で終わらせたいなー。ゴーレ、アイザックさんにマヌセラで働く従業員を連れてきてって伝えてくれる?料理チーム以外ね」
「承知致しました」
「それと、ライル商会すべての部署に今日はマヌセラで歓迎パーティをすることを伝えて」
「はい。すぐに伝えてきます」
ゴーレはものすごいスピードで向かった。
数分後。
アイザックさんとマヌセラで働く従業員が到着した。
従業員達は久々の家族との対面より、港の変貌のほうが衝撃だったようだ。
「じゃあ。施設の説明をしますよ!」
俺はみんなを連れて案内に向かった。
「ここは港関係の施設です。東側にある建物は2階建てで倉庫のようなものです。1階は自由に使ってください。今後加工品などを作るのを2階でやりたいので覚えておいてください」
みんながポカンとしているがどんどん説明を続ける。
「西側の3階建ての建物はイザッドとノヴァが3階を使って。椅子とか机は用意してあるから。2階はカラッカからの荷物を置く用です。店舗担当になる人は毎朝ここに商品を取りに来てください。1階は漁師の方々が自由に使ってください」
「は、はい」
「わかった」
ノヴァまでポカンとしてるせいで調子が狂う。
そんな様子をニヤニヤ見ているアイザックさんにイライラした。
「次は店舗です。まだ魚屋以外は何の店にするか決めてませんが、服や日用品や野菜などを販売することになると思います」
俺はリアクション薄いのを気にせずに案内を進めた。
「ここは従業員の住居です。中は広いので家族で暮らせます。部屋割りはイザッドに任せるから」
「は、はい。わかりました」
「ノヴァ以外はここに住むことになります。あとで中を自由に見てください」
俺がそう言うとノヴァは慌てたように口を開いた。
「え?うちはどこに住むの?」
「俺の家。2棟あるから、ガボガ達とノヴァで住んでもらう」
「あの大きな家に住んでいいの?」
「俺達が基本この街にいないから、ノヴァに管理してほしい」
「わかったよ」
ノヴァは重要な仕事だと思っているのだろう。早くも気合が入っていた。
「あっ。でも今日から『テイム』を覚えるまではタックの中で寝泊まりだから」
「えっ?どういうこと?」
「タックが家エリアの海にいるんだ。テイムしてないモンスターが街の近くをうろついていたら困るだろ?だからテイムを覚えるまではタックやうちのテイムモンスターと積極的にコミニケーションをとってね」
「は、はあ」
たぶんノヴァは俺の言ってることをあまり理解していないだろう。
あとでヒューズさんに説明してもらおう。
「とりあえずこんなものかな?パーティーまでは自由に見学してて」
そう言うとみんなは散らばっていった。
俺はノヴァを呼んだ。
「ノヴァ!」
「なに?」
「パーティーの前か最中にでも、街の人とガボガ達を会わせておいてよ。たぶんガボガ達は街の人に謝りたいとおもってるから」
「あーそうだね。わかった」
「よろしくね」
「うん。じゃあうちはタックに会いに行ってくるね」
ノヴァは家エリアに向かっていった。
俺はアイザックさんのもとへ向かった。
「じゃあアイザックさん。更地にした街の一部を購入させてください」
「え?どうしたんですか?増築ですか?」
「1晩限りの宴会場を作ります」
「なるほど。大所帯になりましたもんね」
「商人ギルドも冒険者ギルドも強制参加ですからね」
「わかりました。人が居なくなると困る宿屋などは交代で参加できるように調整します」
「よろしくお願いしますね」
俺はアイザックさんから土地を買い、会場づくりに向かった。




