253.ササントダンジョン攻略
地下11階層。
ダンジョン内は土砂降りだ。
「ガッツさん。こういう情報は前もって言ってくれないと」
「すまんすまん。俺もササントの冒険者に聞いた話を伝えたんだが、ダンジョン内で雨が降ってるって情報はなかったんだけどなー」
引くほどの雨。
いや、ものすごい勢いの風も吹いている。これは暴風雨だ。
「どうします?進みます?」
ガッツさんは悩んだ。
「とりあえず進もう。厳しそうなら撤退してもいい」
「わかりました」
俺達は暴風雨の草原を進んでいく。
数分進んだが、全く進んでいない。
流石にこの雨と風は俺達の進行を遅延させた。
俺の視界に何かが映った。
「この状態でこの数のモンスターかよ」
俺らの視線の先には猿のようなモンスターが大量にいた。
「これはちょっとまずいかもな」
ガッツさんが呟いた。
「ここにいるのはアーミーエイプって聞いてたんだけどな。まさかレインエイプがいるのか」
「レインエイプ?」
「雨が降っていると力も早さも数倍になるモンスターだ。しかも雨で回復するから本当にめんどくさい」
「これはどうしますか?一旦撤退?」
「そうだな。さすがにこんなに動きにくい状態であいつらと戦うのは厳しい。上の階層に戻ろう」
「わかりました。ライム!悪いけど足止めをお願い」
ポニョン!
ライムにしんがりを頼み、俺達は上の階層へ戻った。
▽ ▽ ▽
俺達は無事地下10階層に戻ることができた。
「ガッツさん。これからどうします?」
「今日はここで1泊しよう。明日の朝、地下11階層の様子を見て決めよう。ササントの冒険者がこんな重要な情報を伝えなかったとは思えないんだよな」
「そうですね。天候が変わるダンジョンとかあってもおかしくないですもんね」
「ああ。まあ今日は休もう」
俺達は野宿の準備を始めた。
▽ ▽ ▽
翌朝、起きると既にガッツさんは起きていた。
「おはようございます」
「おう。おはよう」
ガッツさんは完全装備だった。
「もう見に行ったんですか?」
「ああ。今は猛吹雪だった」
「あー天候が変わるダンジョンっていう予想が当たっちゃいましたね」
「だいぶめんどいな。お前の村のダンジョン並みにめんどくさい」
「ははは。そうなんですね」
そういえば俺がダンジョンマスターだって話をガッツさん達にはしていなかった。
いつか話してもいいかもしれない。
「それで、攻略はどうしますか?」
俺が問いかけるとガッツさんは悩んだ様子だった。
「うーん。天候がランダムに変わるのか、周期があるのかを調べたい。食事もあるし、人手も多いから地下10階層から1階層のモンスターを間引きながら、ダンジョン内に数泊してもいいと思ってる」
「そうですね。天候について少しは情報がないときついですもんね」
「ライルは途中で村に戻ってもいいぞ?」
「えっ?」
「戦力はあるし、お前はやることが多いだろ?」
俺は少し考えた。
「わかりました。あと2泊はモンスターの間引きを手伝います。そのあとは一旦村に戻ります」
「わかった」
「1つお願いがあるんですが」
「お願い?」
ガッツさんは首を傾げた。
「間引きの時、ガッツさんと2人でやりたいんですが」
俺がそう言うとガッツさんはにやにやした。
「なーるほど。さすがに弟子達に負けてられないと?」
「まあそういうことです。魔装も完全じゃないですし、棒術以外も鍛えなきゃとは思ってたんで」
「よーし。任せろ!俺が臨時の師匠になってやる!」
「ありがとうございます」
俺とガッツさんが話していると、ほかのみんなが起き始めた。
「そろそろ朝食の準備をするか」
「朝食の準備は俺とチャールズ兄なんで、ガッツさんは何もしませんよね」
「うるせー」
俺は起きたチャールズ兄のもとへ行き、朝食の準備を始めた。
▽ ▽ ▽
朝食を食べ、ガッツさんが全員を集めた。
「今日から数日間、このダンジョンに籠って地下11階層の天候について情報を集める」
「「「「「「「はい!」」」」」」
「地下10階層は俺とライル、地下9・8階層はダモンとパリスとノコ達とライム。地下7・6・5階層は鬼将軍の剛角、地下4・3・2階層は鬼将軍の剱、地下1階層と1階層はゴーレさんとフリードに魔物間引きをしてもらう」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
「休憩と食事は各自でとって、夜になったらこの10階層に戻ってきてくれ。上の階層の者から順々に戻れば、大変な思いをせずに済むからそうするように」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」
「では、自分の担当階に移動してくれ」
ガッツさんがそう言うと、みんなは移動を始めた。
「俺らも行きますか」
「そうだな。この階層はテイムモンスター達が常に殲滅してくれていたから、地下9階層からやろう」
俺とガッツさんは地下9階層に向かった。
▽ ▽ ▽
地下9階層。
モンスターはリザードマンとその上位種だ。
魔法や毒は使ってこないが、防御力が高くて武器を使う。
訓練相手にはぴったしだ。
「じゃあ最初は、ライル式の訓練にするか」
「俺式?」
「魔装と棒術だけで倒れるまで戦う。まあ緊急避難用でワープは使っていいぞ」
「ははは。自分がやるとなるとなかなかハードだな。まあやりますか」
俺はリザードマンの群れに向かっていった。
久々に使った森帝のロッドは意外と手になじんでいた。
流石高級な武器なだけあって、傷つかないし壊れない。
俺はそんなことを考えながら、リザードマンの顔面を森帝のロッドで殴った。
「ライル!攻撃方法がワンパターンだぞ。今やれる範囲で奇策を考えるのがお前の強みなんじゃないのか?」
「無茶言わないでください!思いついてたらもうやってますよ!」
「ははは。そうかそうか」
ガッツさんはなぜか楽しそうだ。
2時間ほどで地下9階層のリザードマン達の殲滅が終わった。
「よし。棒術はそれなりになってきたな。だがやっぱり魔装が甘い、次は武器なしで魔装のみで戦うか」
「ははは。わかりましたよ」
俺は弟子達に特訓が人気なのかが理解できなかった。
「じゃあ移動するぞ!」
俺とガッツさんは地下10階層に向かった。




