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244.マヌセラ緊急会議

ノヴァが起きたのは、翌日の昼だった。

俺達はライルの家に居た。

「あー。ヒューズごめんね。『海獣化』使っちゃった」

「ああ。わかってる。ちょっとノヴァに謝らないといけないことがあるんだ」

「ん?」

俺達はノヴァを街の中心地に連れて行った。


ノヴァは黙って壊れた街を眺めている。

「申し訳ない。ここまで壊されるのは俺達の力不足、そして俺の判断ミスだ」

「気にしないでいいよ。ありがとう」

ノヴァの様子を伺うが何を考えているのかわからなかった。

「ライルに頭を下げれば家はすぐ作ってもらえるはずだ。あっ!いや、土地を購入しなくちゃいけないから無理か…」

「大丈夫。マヌセラの街はうちらで作るから」

「え?」

俺はノヴァの表情を見て驚いた。

負の感情が一切ない、希望に満ち溢れていた。


「街の人を逃がしているときに、町長とお父さんと話したんだ」

「なんて?」

「ヒューズが言うようなことが本当に起きたら、街はたぶん壊滅する。だけどヒューズの指示に従わなかったら、多くの人が死んでいた。だから街が崩壊してもヒューズ達を責めることはうちらにはできない」

「…」

「それに町長もお父さんも今回の件についていろいろ反省していたんだ。ガスター商会を調べずに街に入れたことや漁師達が仕事が無くなったのに何もできなかったこと。今まで街がスムーズに動いていたせいで危険に対する察知能力が欠けてたみたいなんだ」

「なるほど」

「だから大丈夫。この街にまた暮らしたいと思う人達で、新しいマヌセラを作ってみせるよ」

「わかった!俺達も手伝うから何でも言ってくれ」

「うん!」

俺は家へ戻り、俺とリリアンとノヴァで現状の確認をした。


「まず街の8割が崩壊した。ガスター商会の港も、元々あった港も」

「うん」

「復興には俺達と街の人間の一部でどうにかやるとして、金はどうするか」

「…うちの冒険者の資金が少しならある」

「うちからも出せるわよね?それに素材とか売れば」

「でも足りないよな。領主からいくらか支援はしてもらえるだろうが…」

リリアンは嫌そうに口を開く。

「私達の知り合いで一番お金持っている人に借りる?」

「それは最後の手段だ」

「え?誰?」

ノヴァはわかっていなかった。

「ライルだよ」

「えー商会長って聞いてたけどそんなにすごいの?」

ノヴァは驚いていた。

「ああ。金がどうにもならなかったらライルに頼もう」

「わ、わかった」

5歳の子供に金を借りるというのがピンときて無いようだ。


「次にメーサルとその他の従業員は捕縛して、形を保てている家で捕まえている。ゴーレさんが監視しているから大丈夫だろう」

「あいつらにも話を聞かないとね」

「暴れていた巨人族はマジックアイテムで回復中だ。そっちはクララとレオが監視している」

「巨人族は明らかに様子がおかしかったんだよね?」

「ああ。たぶん奴隷の上に、何かやられて狂人化していたんだと思う」

「なるほど」

「多分主人はガスターかメーサルだろう。これはカラッカの領主に相談してから動くことにする」

「わかった」

ノヴァは頷いた。


「それでここからが一番の問題だ」

「一番?」

「ライルについてだ」

リリアンは大きく頷いた。

「ライルってマヌセラに来てから魚を食ってないよな?」

「そうね。時間もなかったし、街にもあまり出回ってなかったし」

「まずあいつが楽しみにしていた魚料理が食べれていないことだ」

「え?そんなこと?」

ノヴァは理解が出来ていなかった。

怒った時のあいつの怒りがどこに飛んで行くのか、俺らにもわからない。

「重要なんだ」

「そ、そう」

ノヴァにも早くわかってもらいたい。


「そしてガスター商会を潰すのをあいつが出来なくなってしまったことについてだが、徹底的につぶせたよな?」

「う、うん。大丈夫だと思う。誰も逃がしていないし」

実際は1人逃がしているが、そのことはコータさんに口止めされている。

「街がこの状態のことはなんか言われるよな」

「そうね。でも前もって復興の根回しさえ済ませてれば大丈夫じゃないかな…」

「そうだな。セフィーナ様とアイザック様とマリーナにも相談しないとな…」

俺とリリアンが頭を抱えていると、家にクララが入ってきた。

「ねえ!巨人が起きた!それに馬車が1台来たよ」

「え?」

俺達は巨人達の元へ向かった。


▽ ▽ ▽


巨人達の元へ行くと、知っている人物が巨人達と話していた。

その人物はヤリネさんだった。

ヤリネさんと商会の従業員と思われる人が何人かいた。

「ヤリネさん?」

ヤリネさんは俺を見つけるといつもの笑顔で話しかけてきた。

「ヒューズ様。お久しぶりでございます」

「どうしてここに?」

「まあ運命とでも言っておきましょうか。巨人族の皆さんは奴隷解放しておきましたから」

「え?」

俺は驚いた。

ヤリネさんの言っていることも分からなかったし、なぜ奴隷解放をしたのかも。

理解してない俺を見てヤリネさんが口を開く。

「巨人族なんてライル様がお気に召すと思うのですが?それに彼らは自分達がやったことをうっすらわかっているようですよ」

ヤリネさんは何を思ってそれを俺に言ってきているのだろう。

「わ、わかりました。巨人達と話してみます」

「それが良いと思います。それと私達はカラッカに帰ろうと思うのですが、何か連れて行くべき人は居ますか?」

ヤリネさんは何をどこまで理解しているのだろう。

「マヌセラで大量発生を起こし、巨人族を暴れさせた犯人達を領主様に引き渡してほしいのですが」

「わかりました。私が責任を持って領主様に届けましょう」

「護衛とか平気ですか?」

「大丈夫です。元奴隷の冒険者も居ますし、私も意外と強いんですよ」

ヤリネさんはニコッと笑った。


俺とノヴァは巨人族の元に向かった。

「えー俺はヒューズでこっちはノヴァだ。お前達を止めた奴らっていえば理解できるか?」

「ああ。本当にすまない」

ウルフに変身した巨人が大きな頭を下げた。

「自分達が何をしたか覚えてるのか?」

「ああ。船でここ連れて来られ、そこから一切身動きが取れなくなり、気付いたら暴れまわっていた」

「そっちの事情はまだこっちも把握していないが、この街の崩壊させたのはお前達だ」

「本当に申し訳ない」

巨人達は頭を下げた。


「お前達は奴隷解放されたんだが、これからどうするつもりだ?」

「え?解放?」

巨人達は気付いていなかったみたいだ。

「ああ。さっき解放された。俺としては意思がなかったとしても、実行犯であることには変わらないと思う。拘束をし、領主に引き渡した方がいいと思っている」

「俺達もそれで文句はない」

巨人達は反省しているようで抵抗をしてこなかった。

俺は悩んだ。

本当にこの巨人達を罪人のように扱ってもいいのだろうか。

ノヴァは黙って俺の話を聞いている。


「お前達はこの街に対して申し訳なさとかあるか?」

俺がそういうと先ほどより大きな声で巨人達は叫んだ。

「当たり前だ!何にも関わりの無い他種族の街を破壊したんだぞ!」

「俺達は人間を殺していたかもしれない!」

「何もできなかった自分に腹が立つ!」

「そうか。ならこの街の為に働かないか?」

「「「え?」」」

巨人達は俺が言っていることを理解していないのだろう。

俺はノヴァに問いかけた。

「こいつらにも街の復興を手伝ってもらおうと思うのだが、どうだ?」

「うん。良いと思うよ。いろいろ大変なことはあると思うけど、力があって大きい人が居ればやれることが増えると思う」

ノヴァの承諾は得られた。

街の人たちへの説得もやってくれるだろう。


俺は巨人達に話しかける。

「この街はこれから復興に向けて動き出す。それの手伝いをしてほしい」

巨人達は顔を見合わせている。

「本当にいいのか?俺達が手伝っても」

「ああ。まあいろいろ問題はあるからそれを解決しないといけないけどな」

「私にいい案がございます」

口を挟んできたのはヤリネさんだった。

「いい案?」

「はい。巨人族の方々はライル商会に所属して、この街の復興を手伝う。それが今回の件の罰とするのがよろしいかと」

「罰なんて俺達で決められないですよね?」

ヤリネさんはニコッとした。

「私が領主様に口添えいたしますよ。今急上昇中のライル商会の管理下になり、疾風の斧やノヴァ様が居るとなれば領主様も安心して任せてくれるでしょう。それにカラッカに連れて行ったところで、巨人族を収容できる場所がありません。襲撃についての聴取はカラッカからこの街に来ないといけないので、聴取がない間の管理をしてくれるのもだいぶ助かると思いますよ」

「そうか」

ヤリネさんの提案は助かるが、この人は最初からこれを狙っていたように思えた。

「わかりました。ヤリネさんの案でお願いします。ライルの説得は私がやります」

「承知しました。領主様に伝えておきますね。では我々はこれで」

そういうとヤリネさん達は馬車に乗り込み、メーサルを連れてカラッカに帰って行った。


巨人達とノヴァには瓦礫の掃除をしといてもらい、俺達はセフィーナさん達に現状報告をしに村へ戻った。




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