232.ジェイクの災難
フシバの街を出発してから3日経ち、ササントの街が見えてきた。
ササントの町に着くまで10を超える大量発生と遭遇をした。
やはりここら辺は大量発生が多いみたいだ。
卵も数個回収したが、王女預かりとなった。
ササントの町はソブラ領に一番近い町だ。
領境の山脈を越えるとすぐソブラ領らしい。
ササントの街に入る直前に馬車が止まった。
護衛の馬車からオステオさんが降りてきた。
「一度、ここに集まってくれ。街へ入る前にこれからの話を伝える」
俺達は馬車から降り、オステオさんの元へ集まった。
「明日から3日間、ソブラ領との領境になっているこの山で大量発生の原因を探す。ここは大量発生が多く報告されている場所だ、気を引き締めて捜索をしてくれ」
「「「「「「「はい」」」」」」」
「ガッツは前回同様、ササントを拠点にしている冒険者達から情報を聞いてくれ」
「わかりました」
「あとテイムモンスター達は今回も街に入る事は難しいだろう。申し訳ないが、街の外で何人か野宿をしてくれ」
「はい。わかりました」
「では明日朝7時にササントの街の門前集合だ。我々はこのまま町長の家へ向かう。何かあれば、冒険者ギルドに人を置いておくからその者に伝えるように」
オステオさんはそう言い、馬車に乗り込んだ。
王女を乗せた馬車と護衛の馬車は街へ向かって行った。
「よし。それじゃあいい機会だし打ち合わせをさせてくれ」
ガッツさんがそういうとみんなが集まった。
「王女達は街へ向かったしいいか」
俺は馬車に戻ってアメリアに身体を出してもらい、身体を戻した。
俺がガッツさんの元へ行くと、光剣の輝きが驚いていた。
「おい!何でお前がいるんだ?」
「説明めんどいから、あとでガッツさんにでも聞いてくれ」
「は?」
俺はジェイクを適当にあしらった。
ガッツさんが俺を見て口を開く。
「いいのか?姿を戻しても」
「王女達が居ないのですし、野宿するつもりなので」
「わかった。じゃあ話を進める」
そういうとガッツさんは地図を取り出した。
「ササントの街の南側以外は山脈に囲まれている。北東方面の山を越えるとソブラ領、北西側の山を越えるとエサトス領だ。今回は街の北西側を俺と光剣の輝き、北側と北東側を鬼将軍の弟子に捜索してもらうつもりだ」
「「「「「「はい!」」」」」」
「前回の捜索では卵を置く鳥モンスターや盗賊がいた。気を引き締めて捜索してくれ」
ガッツさんはそういうと俺の方を見た。
「ライルは人数にカウントしていいのか?」
「あー良いですよ。北側と北東側は俺が指揮しますよ」
「助かる」
「でもソブラ領側が俺達でいいんですか?」
「ああ。ソブラ領側はモンスターが多くて、エサトス領側は盗賊が多いんだ。過保護かもしれないが、人間相手は俺達がやろうと思ってな」
「なるほど。了解です」
ガッツさんなりの優しさなのだろう。
「じゃあ野宿を希望する者は手をあげてくれ」
俺は決定してるので手をあげなかったが、他全員が手を挙げた。
「おいおい。野宿組はそんなに人数いらないぞ。ジェイク、お前はライルと微妙な関係だろ」
ガッツさんはオブラートを知らないようだ。
「いや、久々に野宿でもありかなと」
「昨日も一昨日も野宿だったろ!」
俺はジェイクが何か企んでいるように思えた。
「おい!ジェイク、何企んでるんだ?」
「い、いや…」
「なんだ?」
「う、うまい飯が食いたい…」
「はぁ?」
ジェイクはものすごく恥ずかしそうだ。
「フシバの街で宿屋の飯を食ったが、まずくはないがお前ん所の飯と比べると…」
「そんなアホみたいな理由なのかよ」
俺は呆れたが、雷虎の拳と光剣の輝きのメンバーの顔を見るとみんな恥ずかしそうにしていた。
「はぁー。全員手をあげてるのは飯目的かよ」
ガッツさんも恥ずかしそうに口を開いた。
「これはしょうがない。だが全員野宿はダメだ。誰かしら街に居ないと」
「ん?じゃあガッツさんが行くべきじゃ?」
「え?」
「いや、冒険者を束ねてるリーダーだし、この街の冒険者とも打ち合わせしなきゃですよね?」
ガッツさん以外が全員頷いた。
「おい!それはひどいぞ」
「いやでも、ガッツさんが街に居ないといろいろ困りますよね?」
「そうだが」
ガッツさんは本当に嫌そうだった。
「わかった。ただ、俺だけ街は許せん」
「許せんってなんですか」
「ライルとあと3人以外は全員街だ!リーダー命令だ」
「「「「「「えー!」」」」」」
ガッツさんは自分以外で美味しい飯を食われるのが本当に嫌みたいだ。
俺達より子供みたいなことを言い出したのでちょっと面白かった。
「あと3人はどう決めるんですか?」
「それはライルが決めていい」
俺は悩んだ。
みんなは自分を選んでくれと目で訴えてくる。
せっかくだから面白い事をしたい。
「じゃあチャールズ兄」
「やった!」
「あとニーナ」
「うん!」
「それとジェイク」
「え?」
ジェイクは自分が選ばれるなんて思ってなかったのだろう。
「は?え?」
「ジェイク。美味い飯食いたかったんだろ?」
「い、いや。そうだけど。俺?」
「ああ」
俺は今夜やろうとしてることを考えるとニヤニヤが止まらなかった。
光剣の輝きと雷虎の拳のメンバーはジェイクが選ばれたことをうらやましがっていたが、弟子達は俺の表情で察したのか誰一人文句を言っていなかった。
▽ ▽ ▽
「おい!また回復必要なのか?」
「こんな化け物級の奴らと一人で戦ってんだぞ」
ジェイクはうちのテイムモンスター達と模擬戦をしていた。
ニーナは回復役、チャールズ兄には料理を頼んだ。
ジェイク達の戦闘を旅路で何回か見た。
成長していないダンジョンなら攻略できるレベルではあったが、うちの弟子達やガッツさんにはまだ敵わなかった。
俺達が模擬戦をした時に壊した剣が相当なマジックアイテムだったらしく、その力でやっとBランクに上がっていたらしい。
いまはCランクにまで落ちたが、実際はDランクが良いところだ。
武器を壊したお詫びとそれなりに反省しているようだから、弟子達に大人気の特訓をしてあげることにした。
「ラーちゃん!もっと魔法をバンバン使って」
キュー!
ラーちゃんのエアロボムとシャドウボールが至る所から飛んでくる。
ジェイクは剣で防いだり避けたりしているがなかなかきつそうだ。
シャドーボールが身体に当たって吹き飛んだ
「ジェイク!終わるか?無理ならやめてもいいぞ?お前はその程度だったってことだ」
「うるせーぞガキ!いつまでも調子に乗るなよ」
ジェイクは立ち上がり、ラーちゃんに向かって行く。
「ホーリーシールド!」
ジェイクの目の前に光の盾が現れた。
光の盾はラーちゃんの魔法をどんどん弾いていく。
「ほー!しっかり防ぐねー」
「うるせー!これ終わったらちゃんと美味い飯食わせろよ」
「オークナイトの肉を出してやるよ」
「よし!」
ジェイクは一瞬気が緩んだのか、ラーちゃんのエアロボムの爆風で吹っ飛んだ。
ニーナがジェイクの元に駆け寄るがなかなか起き上がらない。
「大丈夫か?」
「気絶してる!」
「まあ1人でもったほうだな。起きたらうまい飯でも食ってもらおう」
俺はジェイクを運ぶために近づこうとすると、ニーナの後ろに人影があった。
「ニーナ!逃げろ!」
「え?」
ニーナの後ろにはワーライノが立っていた。
前にダンジョンで見たワーライノとは様子が違った。
上位種?ちがう。
この感覚はあのオークとワ―ウルフと同じだ。




