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229.遠征隊出発

村の入り口には馬車が5台もあった。

王女の馬車・護衛の馬車・雷虎の拳の馬車・光剣の輝きの馬車・俺のマジック馬車だ。


弟子達全員がマジック馬車に乗れないので、雷虎の拳の馬車に強弓と鋭牙、光剣の輝きの馬車に剱、マジック馬車には俺と剛角が乗ることになった。

テイムモンスターはフリード・ノコ・ライム・ラーちゃん・ライドン・イムニだ。

さすがにグーちゃんやマシューやロズは移動が遅くなってしまうのでお留守番だ。


フリード・ノコ・ライムはニーナのテイムモンスターということにしている。

ゴーレには疾風の斧の手伝いを任せたので今回は留守番だ。



甲冑を着たおじさんが俺達の前に出てきた。


「今回の遠征は、ここ最近頻発している大量発生の原因の解明と殲滅が目的だ。なので勝手な行動はせず、我々の指示に従ってもらう」

多分護衛のお偉いさんなのだろう。少し高圧的だった。

「冒険者のまとめ役は雷虎の拳のガッツにやってもらう。馬車の先頭は我々の馬車、その次が王女殿下の馬車、それ以降の配置はガッツの指示に従え。すぐに隊列を確認し、出発するように」

甲冑を着たおじさんが話し終ると、ガッツさんがみんなを集め指示を出した。

ガッツさんにはこの姿のことを話していないので俺は隠れるように馬車に乗り込んだ。


ガッツさんの指示が終わり、みんなが馬車に乗り込んだ。御者はガッツさんがすることになった。

マジック馬車は最後尾を任されたようだ。

前の馬車を追いかけるようにマジック馬車も進み始めた。


▽ ▽ ▽


「ライル。本当にその身体で大丈夫?」

アメリアが心配そうに聞いてきた。

「ライルじゃなくて、ライね。身体は平気だよ。この悪魔の鳥籠に入れてるから」

俺は席の横に置いてる鳥籠を見せた。

「本当に小さいライル様が入ってますね」

「なんか可愛らしいですね」

ゾーイとルーシーは興味津々に見ている。

「そうだよ。2人も入ってみる?」

「「いえ、やめときます」」

2人は少し引いているようだった。


「全然話を聞いてなかったんだけどさ、これってどこ向かってるんだっけ?」

「村から馬車で5日程の場所にあるササントの街だよ」

アメリアは自慢げに説明をしてくれた。

「ガッツさんが調査の際、ササントの近くの森で卵を置く鳥のモンスターを見たって報告があったのでそこに向かうようです」

ゾーイが補足の説明を入れてくれた。

「あーそういえばガッツさんが言ってたなー」

俺は数日前にガッツさんと話したことを思い出した。

「なんかアサルトヴァーチャルってモンスターがいるっぽいね」

「事前にガッツさんに情報は共有してもらったわ。鬼将軍の弟子が全員居るので、空中への攻撃も問題ないと思うわ」

「ちゃんと対策は考えたのね」

「まあね。ライルに追いつくためには頭を鍛えないといけないから」

アメリアは照れ臭そうにそう言ったが、みんなにはだいぶ前から追い抜かされてるんだけどな。


俺達は馬車に揺られながら進んでいった。


▽ ▽ ▽


朝食と昼食は侍女からマジックバックを預かり、サンドイッチを配って食べてもらった。

大量に作って置いたので、無くなることはないだろう。

さすがに王女様に手で持ってかぶりつかせるわけにはいかないので、王女用の料理は別で用意した。


俺は皆への食事提供が終わると馬車に戻り、ゴーレに鳥籠から身体を出してもらって素早く食事を済ませた。


馬車に揺られながら、俺はアメリアと話した。

「どっかの街に寄るんだよね?」

「明日フシバっていう街で1泊する予定みたいよ」

「フシバの街の情報ってなんかある?」

「うーん。普通の街みたいだけど…」

アメリアはなぜか申し訳なさそうにしていた。

「どうしたの?」

「いえ。もっと下調べをしとけばよかったと反省してるの」

「堅いって!世間話だから。普通の街なら調べようが無いし」

「うん…」

アメリアは少し真面目すぎるかもしれない。


「そういえばヤルクダンジョンでの訓練はどうだったの?」

「地下10階層のアイスドラゴンに苦戦して終わったわ。何回か地下11階層に行けたけど、日帰りだとなかなか」

「まあだいぶ難しく作ったからね。他の冒険者達はどれくらい進んでるの?」

「ガッツさん達は地下8階層、光剣の輝きが地下6階層、他の冒険者は地下1~5階層ってところね」

短い間しかダンジョンに挑めなかったのに、ガッツさんと光剣はなかなか進めているのに驚いた。

「村にはどんどん冒険者が来るはずだから、負けない様に頑張んないとね」

「そうね。他の冒険者もそうだけど、他の鬼将軍の弟子にも負けないわ」

アメリアの闘志は凄かった。

「頑張ってね!」


そのあとも野宿予定地に着くまで、剛角との会話を楽しんだ。


▽ ▽ ▽


野営地に到着した。


護衛の人達が大きめのテントの設営を始めた。

ガッツさん指揮の元、みんなもテントの設営をする。

俺はやることがなかったので、後輩侍女を呼んで夕飯の準備に取り掛かった。



夕食はパスタにした。

コッコ肉のペペロンチーノだ。

王女の分は気を使ってニンニクを使わなかったが、護衛や冒険者達の分はニンニクを大量に使った。


作っている間、周りのみんなは臭いにやられたのか、腹の音が鳴り響いていた。

俺は出来上がったパスタを大皿に盛り、冒険者チームに配って行った。


みんなに配り終わると、後輩侍女が話しかけてきた。

「ライさん。こちらは王女様用ですか?」

「はい。王女様は町で人と会話をする可能性があるのでニンニクは使っていません。護衛の方の分と侍女の方の分はこっちにあるので、良きタイミングで獲りに来てください」

「ありがとうございます」

そういうと後輩侍女は食事を持って行った。


数分すると朝にみんなの前でしゃべった甲冑のおじさんがやってきた。

「食事があると聞いたから取りに来たのだが、ここで合ってるか?」

朝の高圧的な態度が嘘のような態度で俺は驚いた。

「はい。コッコ肉のペペロンチーノです。疲れていると思うので、スタミナが上がると言われているニンニクを使っています」

「おーそうか。いい匂いだ。そういえば挨拶してなかったな」

「はい。私はヤルク村のライと言います。今回料理作りを頼まれました」

「私は黄盾騎士団長のオステオという。セフィーナ様のところでも料理を作ってくれていたそうだな」

「はい。そうです」

「とても美味くて感動した。慣れない旅だと思うが、何かあったら言ってくれ」

「わかりました。ありがとうございます!」

オステオはそういうとペペロンチーノが乗った大皿を持って行った。

「朝と別人過ぎないか?」

騎士団長ってことはお偉いさんなんだろう。

ああいう場では厳しい人間を演じているのだろうか。


俺は馬車に戻り、身体を戻した。

「俺も食うか」

みんなが外で食べている中、俺は馬車の中で食事を進めた。

すると馬車にニーナが入ってきた。

「ごめん。ライルくん」

「え?」

ニーナの後ろにはガッツさんが居た。


「あーそういうことね」

「ごめんね。ガッツさん気付いちゃったみたいで…」

ガッツさん相手に隠すのは無理な話だった。

うちの村に居る期間も長いし、俺の能力の一部を知っているんだから。

「言えよ!」

ガッツさんは俺を小突いてきた。

「ニーナは気にしないでいいから。ガッツさんはどこで気付いたんですか?」

「はぁ?見た目がまずライルに似てる。それに飯を作る様子を見てた。俺はあんなスムーズにパスタを作る人間を5人しか知らない。ブライズさん、チャールズ、カラッカのエルフ2人、それにお前だ」

「そうですよね」

「エルフの変装するマジックアイテムの話を聞いてたからな、年齢を変えるマジックアイテムをお前が持っていてもおかしくない」

ガッツさんは思ったより鋭かった。

「年齢を変えるんじゃないですけどね」

俺はそう言いながらポゼッションドールを使って見せた。


「おお!すごいな」

「スキルや魔法は使えないんですけどね。王女の周りの人にも言わないでくださいよ。遠征が終わるまではライで通すつもりなので」

「わかったよ。まあなんかあったらフォローしてやるよ」

「ありがとうございます」

俺は頭を下げた。

俺はこの機会に情報を仕入れることにした。

「ガッツさん。いろいろ聞いてもいいですか?」

「あ?今はちょっと。これから見張りの指揮をとらないとダメだ」

「なるほど」

「何か聞きたいことでもあったのか?」

「王女周りの情報を聞きたくて」

「じゃあ、夜の見張りの時にでも来い。俺と鬼将軍の弟子の誰かをセットにしておくから」

「わかりました」

そういうとガッツさんは馬車から出て行った。


▽ ▽ ▽


ガッツさんとニーナが見張りの時間になったので、俺とニーナは周囲を確認して馬車の外に出た。

少し歩くとガッツさんが焚火の前に座っていた。

近づくと俺らに気付いた。

「おー。お前の所のテイムモンスターが優秀すぎて見張りの必要がないぞ」

「それはよかったです」

ガッツさんは機嫌が良かった。

「それで聞きたいことってなんだ?」

「特別何かあるわけじゃないんですけど」

「ん?」

「侍女って言えば通じます?」

ガッツさんは驚いた。

「お前なんで知ってるんだ?」

「ライを食事係に指名したのが、その人だからですよ」

「あーなるほど」

「その感じだとガッツさんは知ってるんですね」

「ああ。出発前にオステオさんに言われたよ。守る対象が多くて申し訳ないと」

ガッツさんは苦笑いをしていた。

「そういえばオステオさんって朝と夕食の時の雰囲気が違いますよね」

「そうだな。朝みたいに騎士団長として働いているときは厳しいが、普段は物腰が柔らかいおじさんだぞ」

「よく知ってるんですか?」

「元々冒険者だったから、休みの日に王都の冒険者ギルドに来て手合せしてくれてるんだ。俺も王都に居た頃、何回か手合せしてもらったよ」

「なるほど。黄盾騎士団って言ってたんですが、それは?」


ガッツさんはなぜか手を差し伸べてきた。

「ん?」

「これ以上情報が欲しいなら」

「わかりましたよ!」

俺はマジックバックからオークベーコンを取り出した。

木に刺して焚火で炙った。

「わかってるなーライルは」

「ライです」

ガッツさんのニヤニヤが腹立った。

「ニーナも食べる?」

「ううん。私はこれがある」

ニーナはマジックバックからプリンを取り出した。

準備が良い子だ。


ガッツさんは話もせずにオークベーコンを炙っている。

「それで騎士団の話をしてくださいよ」

「あー騎士団な。王都には7つの騎士団があり、黄盾騎士団はその一つだ」

「他にはどんな?」

「王様直属の騎士団が白剣騎士団、他にも黒剣・赤槍・蒼斧・黄盾・緑弓・灰魔という騎士団がある」

「なるほど」

「噂では暗部もあるらしい。王女が2人もいるならついてきてるかもな」

「え!それは困る!」

「まあ噂だから心配するな」

「噂って意外と怖いんですよ」

「ははは。ライルでもビビるとはな」

ガッツさんはベーコンをかじりながら笑っている。

「俺は出来るだけ目立ちたくないんですよ」

「それならあの身体でずっといた方がいい。オステオさんは鋭いぞ」


俺はガッツさんにビビらせられながら、見張りが終わる時間まで話した。




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