226.王女襲来中
俺はヤルク村の自分の部屋のベットで横たわり、
ポゼッションドールを使って15歳の身体になった。
「よし、とりあえずアイザックさんに報告に行くか」
俺は商人ギルドに向かった。
商人ギルドに入ると、受付にはエルフの女性が座っていた。うちの従業員だ。
「ヤルク村商人ギルドです。どなたかとお約束ですか?」
「あーそっかそうだよね」
いつも顔パスで入っていたから、受付に止められたのは初めてだった。
「えーっとごめんね。ライと言います。アイザックさんに用があるんだけど」
「アイザックですね。そちらに掛けてお待ちください」
俺は言われるがまま椅子に座り待った。
とりあえずカラッカの商人ギルドよりはるかに接客が良くて安心した。
アイザックさんがやってきた。
俺を見るなり駆け寄ってきた
「ライルさん!待ってましたよ!」
「ライル様??」
受付のエルフの女性が驚いていた。
「ごめんね。抜き打ちチェックみたいなことして。マジックアイテムを使ってるんだけど説明するのがめんどくさくて」
「いえ、申し訳ありません」
「いやいや、何も悪いことしてないよ。むしろカラッカの商人ギルドよりはるかに丁寧で好印象だよ。これからもよろしくね」
「はい!ありがとうございます!」
受付のエルフは喜んでいた。
「それで何かありましたか?」
「大きな問題は起きていませんが、ライル様が気にしそうな事が1つあります」
「なんですか?」
「ブライズさんの仕事量が半端ないです」
「え?なんで?」
「領主代行館で朝昼晩と料理を作って、レストランもブライズさんとゴーレムだけで回しています」
「なるほど、それはどうにかしないとですね」
「はい。そういえばマヌセラはどうでした?」
「良い土地を買いましたよ。あとガークさんがアイザックさんがギルドマスターになったことを悔しそうにしてました」
「ガークは変わらないな。久しぶりに会いたいものです」
「落ち着いたら行きましょう。とりあえずは目の前の事を解決しなくちゃ」
「そうですね」
「王女の遠征チームはいつ出発予定か知ってますか?」
「3日後です」
「とりあえず出発までの領主代行館の料理は俺が作ります」
「わかりました。ブライズさんも助かると思います」
「とりあえず、レストランに行ってきますね」
「お願いします」
俺はレストランへ向かった。
レストランに入ると数人お客さんがいた。
俺がマヌセラに行ってる間に村に人が来ていたようだ。
調理場にブライズさんが居たので話しかけた。
「ブライズさん!」
「いらっしゃいませ!空いてる席にお座りになってお待ちください」
「俺ですよ。ライルです」
「ライルくん!?」
ブライズさんは俺の姿を見て驚いていた。
「マジックアイテムで15歳の姿になってます」
「びっくりしたよ。ライルくんが出掛けてる間に、村に人がちょくちょく来たからレストランライルも大繁盛だよ」
「アイザックさんが心配してましたよ。領主代行館の料理もやってるから大変そうだと」
「ははは。まあ大変だけど楽しいんだよね」
「俺的にはブライズさんに倒られるとだいぶ困っちゃうので、王女が出発するまでの領主代行館での料理は俺が作ります」
「本当かい?助かるけど、ライルくんも出かけてる最中じゃないの?」
「まあ土地は買って秘密の通路を繋いだので問題ないです。王女に目を付けられなければ、村に居ても問題ないので」
「それじゃあお願いしようかな」
「そのかわりレストランライルはお願いしますね」
「それは任せて!」
俺はレストランを出て、家に帰り身体を戻した。
俺は秘密の通路を領主代行館の厨房に繋いだ。
ポゼッションドールをまた使い、秘密の通路を通った。
スキルや魔法が使えないのはこの身体の難点だ。
「よし、この身体でどれくらいできるか試さないとな」
俺は料理を作り始めた。とりあえずパスタだ。
料理スキルが使えない分、調理スピードは遅くなっていたが技術は問題なさそうだ。
俺はひたすら料理を作り続けた。
すると厨房の扉が開いた。
「どなたですか?」
ポーラさんだった。
「ポーラさん、怪しいものではないです。ライルです」
「え?ライル様?」
「そうです。マジックアイテムでこの身体になってるんです」
ポーラさんは俺をジロジロ見てきた。
「ライル様なのは信じます。それでここで何をされてるんですか?」
「ブライズさんの代わりに領主代行館の料理を作ることになりました。なので作り置き用に料理を作ってるんですよ」
「なるほど。ライル様、言いづらいのですがその料理は無駄になってしまうかもしれません」
「え?どういうことですか?」
「王女殿下の口に入るものですので、同行している侍女の目の前で料理を作る必要があります」
「え?まじですか」
「はい」
「それはだいぶ面倒ですね」
俺はとりあえず下準備だけをすることにした。
夕食時になると、カレンさんと一緒に侍女が2人やってきた。
2人のうち、先輩と思われるほうが口を開いた
「料理人の方が変わられたのですか?」
「ブライズが少し体調が悪くなり、一番弟子のライが代わりに参りました」
「わかりました。では調理をお願い致します。何か気になることがあったら声をかけさせていただくことがあると思いますのでよろしくお願いします」
「わかりました」
俺は調理に取り掛かった。
王女一行は護衛3人侍女2名の6人。セフィーナさんとポーラさんとカレンさんの分含めて9人前を作る。
まずはお湯を沸かしてパスタをゆでる。
その間にオリーブオイルでみじん切りしたニンニクを炒め、アボカドを入れる。
アボカドに火が通ったら、牛乳と塩と醤油を入れてとろみが付くまで火を通す。
ゆでたパスタを入れてアボカドソースと絡めて出来上がりだ。
侍女の2人は匂いにやられたのか生唾を飲み込んでいた。
俺は小皿に少量のパスタを入れて、侍女2人に渡した。
「毒見は食事の直前に行います」
「いや、いい匂いしたでしょ?毒見じゃなくて味見ですよ」
「え?」
「見てるだけだとお腹すいちゃうでしょ?1口くらいなら味見してもいいんじゃないですか?」
「あ、ありがとうございます」
「カレンさんもどうぞ」
3人はアボカドのクリームパスタを食べた。
大きくリアクションはしないが、表情を見る限り美味しいようだ。
俺はすぐにスープとサラダ、そしてオーク肉の生姜焼きを作った。
「こんな感じでいいですかね?」
「護衛の方が多く食べれるように12人前くらい作ったので、毒見が終わったら配膳お願いします」
「ご苦労様でした。とってもおいしかったです」
侍女は全部の毒見を済ませて、皿に盛って行った。
侍女達が居なくなるのを確認し、秘密の通路で家に帰った。




