222. 大盛況
俺は村でダラダラしていた。
今日はカラッカの店がオープンなので手伝いに行こうとしたら、アイザックさんに止められた。
従業員を信じて、手を出さない方がいいとのこと。
なのでダラダラしている。
鬼将軍の調理場は昼時と夜のみ営業する予定だが、今日はオープン日なので朝から晩まで営業することになった。
休憩もちゃんと取れないが、雷虎の拳と光剣の輝きの宣伝で来たお客さんが席が空いてなくて帰ってしまうよりかは良いだろう。
俺は暇すぎて、村のレストランに行った。
レストランにはブライズさんだけしかいなかった。
「ブライズさん。聞きましたよ、このレストランの名前がレストランライルにしたらしいですね」
「ははは。知ってしまったか」
ブライズさんは笑っていた。
「確信犯ですね」
「でもわかりやすくていいじゃないか。それともここも鬼将軍のって名前にするかい?」
「はぁー。いいですよレストランライルで」
ブライズさんに珍しく丸め込まれてしまった。
ブライズさんにハンバーガーを作ってもらっていたら、ワー・ヨーが秘密の通路に入って行った。
「アボカド入れてくださいね」
「任せて!」
トレスとターが秘密の通路を出たり入ったりしている。
ブライズさんが出来上がったハンバーガーを出してくれた。
俺は手でつかみかぶりついた。
チュー・イーも秘密の通路に入って行った。
「ブライズさん。もしかしてやばいんじゃない?」
「だよね。気付かないふりしてたけどおかしいよね」
「俺、ちょっと見に行ってきます」
「お願いね」
俺は急いでハンバーガーを口に入れ、秘密の通路を通った。
▽ ▽ ▽
秘密の通路を通ると、鬼将軍の調理場は満席になっていた。
「え?まじ?」
満席だが、思ったより殺伐とした雰囲気ではなかった。
上手く店を回せているように見えた。
しかしちゃんと見てみると会計をフィーゴさんがやっていたし、調理はワー・ヨー・チュー・イーがフル稼働していた。
「これはまずいな」
俺は配膳の手伝いを始めた。
「ライル様すみません」
アルゴットが調理をしながら謝ってきた。
「気にしないで。落ち着いてさばいていこう」
「「はい」」
料理の美味しさのせいか、客が帰るのが遅かった。
そのせいで店の前にできた行列はどんどん増えて行った。
「これはどうしようか…」
俺は頭をフル回転させながら働いた。
▽ ▽ ▽
夕方になり客足も落ち着いた。
「フィーゴさん。今日は店を閉めましょう」
「わ、わかった」
店にいる残りの客をさばき、やっと休憩が出来た。
「お疲れ!」
俺が声をかけるとアルゴットとフィアナが頭を下げてきた。
「「ライル様すみません」」
「ん?想定外の出来事なんだから気にしないで」
「いえ、自分達の力を過信していました」
「どういうこと?」
俺は2人の話を聞くことにした。
「マジックボックス内にあまり料理を入れてませんでした」
「自分達の力で回せるとうぬぼれてしまってました」
「なるほど。そこは厳重注意だね。これからはちゃんと準備するように」
「「はい」」
「それよりこれからどうしようか…」
俺は頭を抱えた。
「そうですね。昼の営業時間が短くなることはお客様に伝えましたので、時間外に来ることはないと思いますが時間内に物凄く来ますよね」
フィーゴさんも不安そうにしていた。
俺は対応策を決めた。
「昼はメニューを2つに絞ろう」
「2つに?」
「メインとサイドメニューと飲み物のセットを毎日2つ考えて提供するんだ。そうすれば、準備時間も大変にならないし、注文がぐちゃぐちゃになることもないし、料金もわかりやすい」
俺がそういうと2人は頷いた。
「わかりました。それでやらせてください!」
「慢心せずにやりますので、お願いします!」
「大丈夫2人にお願いするつもりだよ」
2人は安心したようだ。
「夜は普通に営業をしたいから、今から料理を作り始めよう。ビールも売れるだろうから、おつまみ系を多めに作ること」
「「はい」」
「ワー・ヨー・チュー・イーも手伝ってあげて」
ワー達は頷いて調理を始めた。
俺はとりあえず他の店の様子を見に行くことにした。
▽ ▽ ▽
俺は唖然とした。
どの店も鬼将軍の調理場のおかげなのか、結構な数の客が来たらしい。
服屋なんて大繁盛で、手伝いに来ていた母さんがヘロヘロになっていた。
でも俺が唖然とした理由はそこではなかった。
店の正面に行くと、どの店も看板が出来上がっていた。
シモンキリーの衣服店
鬼将軍の武器庫
鬼将軍の宝物庫
鬼将軍の部屋
昨日のアリソンの言葉を思い出して膝から崩れ落ちた。
「他の店舗も合わせて作って問題ないですか?って店名の話だったのか」
もう俺は吹っ切れることにした。この店名でもお客が来たんだから問題ないのだろう。
でもなんで雑貨屋が鬼将軍の部屋なのかは謎だった。
そのあとも各店舗で話を聞いたが、鬼将軍の宝物庫は売り上げはあまりなく冷やかしが多かったようだ。
シモンキリーの衣服店は、商品をたたみ直すのがしんどかったらしい。ガルスタンにハンガーを教えて作ってもらおう。
俺は鬼将軍の調理場に戻った。
「夜の営業は大丈夫そう?」
「「はい!」」
「じゃあ1時間後オープンするからよろしくね」
▽ ▽ ▽
夜の営業は安定していた。
客の人数はものすごく多かったが、作り置き作戦が効いたようだ。
ビールの提供のせいで回転率は悪く、帰ってしまう客も多かったが問題ないだろう。
「2人共おつかれ」
「「お疲れ様です」」
「大変だったね。明日からも頑張れそう?」
「「やれます!」」
2人のやる気はすごかった。
「じゃあお願いしようかな。でも休みもないとダメだから、5日営業したら1日休みは絶対だからね」
「わかりました」
「じゃあ片付けをして今日は帰ろう」
俺達はみんなで協力して片付けをして、村へ帰った。




