201.見学会
今日は珍しく昼からの稼働だ。
昨日のうちに、弟子達が集めてくれた防寒具の素材を各部署に渡した。
母さんに確認すると2日ほどあれば3着はすぐできるそうだ。
そのあとにマデリンに作業してもらうので、5日後完成めどで動いてもらうことにした。
俺は今日もライルダンジョンに来ている。
メンバーは俺・ゴーレ・ヒューズさん・アイザックさん・セフィーナさん・マリーナさん
父さん・母さん・ブライズさん・ハーマン・ガルスタン・マデリン・木工職人のエルフのケルバンだ。
「今日はみんな忙しいのにわざわざありがとうございます。マリーナさんは休みを取ってくれてありがとうございます」
「見とかないとね、今後この秘密を背負わないといけないから」
「ありがとうございます」
マリーナさんもだいぶ腹を括ったみたいだ。
俺は皆をダンジョン横の小屋に案内した。
「このドアはライルダンジョンの最下層の地下8階層に繋がっています。みなさん俺について来てください」
俺が秘密の通路を通るとみんなもついてきた。
「「「うわあああ!」」」
地下8階層で待機していたショーグン達をみて、数人の男性が声を上げた。
この世界はやっぱり女性が強いのかもしれない。
「大丈夫です。ダンジョンボスのショーグンと配下のモンスター達です」
俺がそういうとヒューズさんが口をはさむ。
「ライル。その説明を聞いても誰も安心できないぞ」
「そうでした。えーっと俺がここのダンジョンマスターなので、俺の部下だと思ってください」
過半数の人がぽかーんとしていた。
俺は気にせず説明を続けた。
「このダンジョンは1階層から地下8階層まであります。1階層は特に何もなく、地下8階層は今いる場所です」
まだ過半数がぽかーんとしている。
「地下1階層から地下7階層にはそれぞれ違うモンスターが居て、ショーグン達にはそのモンスターを倒してドロップアイテムを回収してもらってます。ではついて来てください」
俺は秘密の通路を通って地下7階層に来た。
「ここのモンスターはインゴットや鉄や金やミスリルでできた甲羅と魔石をドロップします」
俺がそういうとリビングアーマー達が1体倒した。
「これは鉄の甲羅ですね。ガルスタン見てみて」
「は、はい」
ガルスタンは手に取って確認した。
「これはだいぶ上質な鉄ですね」
「そう?よかった。今後鍛冶の材料はここから出たものを使ってもらうから」
「はい!わかりました」
ガルスタンはミスリルトータスを見て、目がきらきらしている。
「お願い」
リビングアーマーはミスリルトータスを倒した。
「これも渡しとくね」
俺はガルスタンにミスリルの甲羅を渡した。
「あ、ありがとうございます」
ガルスタンは頭を下げた。
「アイザックさん。武器や日用品などの製造はガルスタンと鍛冶ができるエルフが1人しかいないので、あまり量は出来ないですが販売可能です。あとで何を作るかと値段などは直接相談してください」
「わ、わかりました」
「また移動しますので、ついて来てください」
俺は地下8階層に戻り、地下4階層に向かった。
「ここはバウンドシープが居ます。ドロップアイテムは毛皮と肉と魔石です。毛皮は服や小物に使えると思います。肉は調理で使えると思うので、母さんとブライズさんは覚えておいてください。うちのゴーレムやテイムモンスターに頼めば持ってきてもらえると思うので」
「わかったわ」
「どんな味がするのか楽しみだよ」
母さんとブライズさんはニヤニヤしていた。
「他の階にいるオーク・ミノタウロス・フレイムコッコは肉が食べれるし、ウォーリーバッファローの毛皮も何かに使えると思うので、今まで通り俺が案を出したりはするけど、各部署のみんなで試行錯誤して新商品をお願いします」
「まかせて」
「頑張るよ!」
母さんもブライズさんもやる気が出ているようだ。
「アイザックさん。料理に関してはまだ販売できませんが、服や小物は母さんに直接相談してもらっていいですので」
「わかりました。ありがとうございます」
「こんな感じですかね。マデリンさんを呼んだのは少量だけど魔石が取れることとモンスターの素材も取れるということを知ってもらいたくて。何か必要な物が合ったら相談して」
「はい。わかりました」
「父さんとハーマンとケルバンは直接関係するものがなかったとは思うけど、こういう施設があるって知っていればいろんなことに挑戦しやすくなると思って呼びました」
「おう。ありがとな」
「わかりました。何かできることがないか調べてみます」
「じゃあ各部署の責任者のみんなは解散で大丈夫。帰るときに既に取れてるドロップアイテム持って行ってね」
各部署の責任者達は秘密の通路を通って帰って行った。
「それでどうです?」
俺はアイザックさんとセフィーナさんとマリーナさんに問いかけた。
マリーナさんが口火を切った。
「ライルくんのおかしな行動は一旦置いておいて」
「まあおかしいよな」
ヒューズさんが笑いながら言う。
「危険性がないかどうか確認したいわ」
「危険性はダンジョンに入らない限りありません。ここのモンスターはダンジョン外に出たら消滅しますし、モンスターの数もこちらで指定しているのでスタンピードが起こる事はありません」
「それを聞いて安心したわ」
マリーナさんは胸を撫でおろした。
「ヤルクダンジョンもヒューズさん達が攻略したら、同じように管理するつもりなので安心してください」
「わかったわ。ダンジョンの内容や難易度に口出ししたいのだけどいい?」
「問題ないです。一緒に考えましょう」
マリーナさんは満足そうだった。
次にアイザックさんが話し始めた。
「正直、言うことがありません。ここまでの素材の安定供給を見たことがありません」
「ははは。俺もできるとは思ってなかったですよ。安定供給は事故が起きない限り続くので、アイザックさんにはどんなものが欲しいのか要望を今後貰って行きたいですね」
「わかりました」
「のちのち、違う街にも店を出せればと思っていますので、今後もご協力いただきたいです」
「お手伝いさせてください」
アイザックさんが握手を求めて手を伸ばしたのでしっかり握った。
「セフィーナさんは何かありますか?」
セフィーナさんはぽかーんとしたままだった。
「すみません。たぶん当分元には戻らないかと」
アイザックさんが頭を下げた。
「ははは。ダンジョンの件は話してたんですけどね」
「まあここまですごいものを見たらこうなるだろ」
「そういうもんですか」
「そういうもんだよ。てかこうなってくると、俺達のダンジョン攻略も早くした方がいいよな」
「そうですね。5日後には防寒具ができるのででき次第出発をお願いします」
「おう。わかった」
ヒューズさんのやる気がすごかった。
「そういえば、2人はギルドの内装の確認しました?」
マリーナさんが頭を抱えて話し出した。
「見たわよ。あのすばらしい建物をほんとにギルドとして使っていいの?」
「そのために作ったんで」
「わかったわ。ありがたく使わせていただきます」
「商人ギルドもありがたく使わせていただきます」
2人は頭を下げた。
「このあと時間あるんで、細かい内装を変更するならやっちゃいましょう」
「わかったわ」
「はい」
「あとマリーナさんの家なんですけど、アイザックさん達と同じエリアでいいですよね」
「え?いいの?私みたいな平民が同じエリアで平気?」
マリーナさんは領主の息子と同じエリアということに驚いていた。
「まあ冒険者ギルドマスターですし。アイザックさん以外は雷虎の拳しか住んでませんし」
「あーそうなの」
「問題ないと思います。マリーナさんがこっちに来れるタイミングで引っ越しを済ませて、カラッカの家の改造もしたいので。アイザックさんは周りの土地の購入をお願いしますね」
「わかりました」
「じゃあそろそろ内装のカスタマイズに行きましょうか。先に商人ギルドから」
「はい」
俺達はライルダンジョンをあとにした。




