200.疾風の斧の帰還
俺とゴーレが学び舎につくと、疾風の斧がダイニングでくつろいでいた。
「おかえりなさい」
「おう。帰ったぞ」
「ただいま」
「ただいまー!」
疾風の斧はいつもと変わらず元気で安心した。
「ヤルクダンジョンはどうでした?」
「約4日潜ってたから、なかなか大変だったわ。まあライムのおかげでだいぶ楽ができたけどな」
「攻略は?」
「まだできてない」
「そうですか」
攻略できなかったのに、なぜか3人は落ち込んでいない。
「地下48階層までは行けたんだが、地下49階層から雪原エリアになって吹雪が吹き荒れていた」
「え?」
「さすがにこの装備じゃきつかったから戻ってきた」
「そうなんですね」
「でも俺の予想だと地下50階層が最下層だと思うから、装備を整えてまた行こうと思う」
「わかりました」
俺はライルダンジョンの話をしようと思ったら、変なことを試したくなってしまった。
「秘密基地!」
俺はマップを開き、ヤルクダンジョンを選択した。
すると詳細情報が出てきた。
カラッカの家に秘密の通路を通せたので、ダンジョンにももしかしたらと思った。
「ヒューズさん」
「ん?どうした?」
「ヤルクダンジョンは地下55階層が最下層みたいです」
「なんでわかる。まさかお前!」
ヒューズさんは驚いていた。
「秘密基地で詳細が見れちゃいました」
「はあーお前ってやつは」
「本当にすみません。あとコアがあるところに秘密の通路を繋げられます」
「は?」
「秘密基地の範囲内なんで」
疾風の斧は呆れていた。
「ライル―それはないよー」
「でも次の挑戦で終わらせるためには、少しでも情報を知っていた方がいいと思うのだけど」
リリアンさんがそういうとヒューズさんが悩み始めた。
「わかった。ライル、情報をくれ」
「わかりました」
俺はわかる範囲の情報を話す。
「ボスはブリザードドラゴンです。レベルはわかりません。地下49階層から地下55階層まではずっと雪原エリアになります」
「なるほど、これは本格的に防寒具を用意しないとだめかもな。どこで用意するか」
ヒューズさんは悩み始める。
「ライル商会で作れないか聞いてみませんか?」
「一応聞いてみるか」
「ゴーレ。母さんとアリソン、ガルスタンとマデリン、シモンとキリ―を集めてもらえる?」
「承知致しました」
「ご飯食べながらで良いですよね?」
「おう。ありがたい」
「じゃあレストランに集めて」
「承知致しました」
俺達はレストランへ向かった。
▽ ▽ ▽
みんなが集まり、状況の説明をした。
「なるほど、防寒具ってなるとオラじゃなくマデリンの出番かな?」
ガルスタンは話の内容を聞いてマデリンを勧めた。
「そうですね、火系統の魔物の魔石と魔力浸透率が高い素材があれば行けるとは思います」
「なるほど」
「ただ服を作ることはできないので、作ってもらった物に付与する形になります」
お母さんが口を開いた。
「服は私たちで作るわ。デザインはどうする?」
「そうだなー。防具の上から着るからサイズは大きめ。俺が落書きで描いたパーカーをベースにしよう。丈をひざ下まで覆う長さにして、前の部分をボタンにして腰辺りまでつけましょう」
アリソンが俺の話を聞きながら、デザインを描いている。
「服の内側にこの2つのどちらかを使えるといいんだけど」
俺はバッグから、ウォーリーバッファローの毛皮とバウンドシープの毛皮を出した。
「クリーン!これ使えそう?」
マデリンは毛革を手にした。
「バウンドシープの毛革の方が保温と防御力が高くできると思います」
「母さんたちはこれで作業できそう?」
母さんは毛革を手に取ると、シモンとキリーに渡した。
「どう?シモンちゃん、キリーちゃん。できそう?」
チチチチ!
シャシャ!
「大丈夫そう」
「ライル様、このようなデザインでどうでしょう?」
アリソンは描き終ったデザインを俺に見せてきた。
アリソンのデザインは、完全にベンチコートだった。
「これこれ!ベンチコート!」
「「「ベンチコート?」」」
やはりこの世界にはないようだ。
みんなにデザインを見せて共有をした。
「ベースの素材はシモン布で内側はバウンドシープの毛革、ボタンは頑丈にしたいからミスリルで作ってくれる?」
「わかりました!オラに任せてください」
ガルスタンもやることが出来て喜んでいた。
「付与についてなんだけど外側は冷気や水気を弾くようにして、内側は温度上昇と保温と除湿みたいな効果をつけたいんだけど」
俺の無茶振りにマデリンは少し悩んでいた。
「シモン布を使えば水分を弾く事は可能です。ただ除湿効果をつけるのであれば風系統の魔物の魔石が必要になります」
「そうか、火系統の魔物の魔石はこれで平気?」
俺はフレイムコッコの魔石を出した。
「これが50~100個ほど必要になると思います」
「了解。準備する」
俺はヒューズさん達を見て話す。
「ヒューズさん、風系統の魔物の魔石持ってたりします?」
「あー確か、エアキャットの魔石をヤルクダンジョンで手に入れたはず」
「それください」
「わかった」
「エアキャットの魔石はどれくらい必要ですか?」
俺はマデリンに聞いた。
「30~50個は必要だと思います」
「わかった用意する」
「ライル、バウンドシープの毛革ももう少し必要になるわ」
「わかったよ母さん」
これで防寒具を作るめどが経った。
明日から始動とみんなに伝え、俺はライルダンジョンに向かった。
▽ ▽ ▽
今日はライルダンジョンで素材集めをすることにした。
メンバーはゴーレ・フリード・ノコ・ライム・ミッツ・弟子全員だ。
昨日のうちに地下6階層にエアキャットを配置した。
これで素材が今日のうちに全部集まるはずだ。
「よし、今日はいつもお世話になっている疾風の斧のために頑張るぞ!」
「「「「「「「おー!」」」」」」」
弟子達もやる気満々だった。
俺は昨日のうちにダンジョンの横に小屋を作っていた。
中にあるのはダンジョンコアがあるフロアへの秘密の通路のみだ。
弟子のみんなには普通に入口から向ってもらい、俺とゴーレは小屋に入り地下8階層に行った。
地下8階層に付くとショーグンが居たので、今日やることを伝えて弟子達に攻撃しないように頼んだ。
弟子達には、リビングアーマー達の事を伝えているからうまく共闘してほしいところだ。
フレイムコッコはジョシュ達とライム。フレイムコッコ相手なら問題ないと思い、カイリ達も同行させている。
バウンドシープは剛角と強弓、エアキャットは剱に任せた。
フリード達には弟子達がいない階層を好きなように回ってもらっている。
▽ ▽ ▽
数時間が経過した。
各階層の状況が見えるわけではないので、ものすごく暇をしていた。
やることはダンジョンの設定画面を見て、レベルが上げれるモンスターのレベルをタップして上げるだけだった。
レベルが高いと魔石やいいドロップアイテムが出てくるみたいなので、必要な作業なのだが如何せん暇だった。
「ゴーレ暇すぎるよ」
「我慢してください。この作業はマスターにしかできないのですから」
「だよねー。ゴーレをダンジョンマスターにすること出来ないの?」
「ダンジョンレベルが上がれば可能かもしれませんが現状ではできないですね」
「そっかー」
「同期をしているので、いろいろと感覚でシステムを理解することはできますが、設定画面を見たりいじったりは出来ないです」
「レベル上げるためにダンジョンコア集めないとね」
「そうですね。ヤルクダンジョンのコアを使うわけにはいかないですもんね」
「やっぱ狙うのはカラッカのダンジョンか」
俺はゴーレと話して時間をつぶしたが、限界が来た。
明日アイザックさん達にライルダンジョンを紹介しようと思い。ダンジョンの設定画面とカスタマイズで中に安全な階層を作って時間をつぶした。
目当てのドロップアイテムは魔石以外はほとんど集まったので、あと1~2時間やれば終わるだろう。
各階層のモンスター達はLv10になり、リビングアーマー達もLv25まで上がった。
ショーグンは倒しに行っていないので、Lv20のままだから今度魔石を使ってあげよう。




