199.ライルダンジョン攻略③
地下6階。
ゴーレから聞いていた通り、草原だった。
空もあり、今までの階層より遥かに広かった。
「ニーナ、ここのコツは?」
「うーん。広すぎて全滅させることはできないから、階段を目指して進むかな?」
「なるほど。モンスターは?」
「中立モンスターみたいで、攻撃しない限り攻撃してこないよ」
「そうなのか。ここの階層って散策した?」
「一応みんなでしたよ。壁があるよ」
「え?」
俺は降りてきた階段の方を見た。
しっかり壁があった。
「ホントだ」
「うん。天井もあるよ」
「え?」
「壁は見て分かるんだけど、天井は雲とか太陽がある手前に透明の天井があったらしい」
「ダンジョンは不思議だな」
「そうだね」
「階段の位置はわかってるの?」
「うん」
「じゃあ案内宜しく」
俺はニーナ達について行った。
少し歩くと牛型のモンスターが数頭いた。
「鑑定!」
○ウォーリーバッファロー
牛型のモンスター。
毛むくじゃらで視界が悪いため、適当に突進してくる。
攻撃をしない限り、襲ってくることはない。
「ニーナの言うとおりだったね」
「最初は攻撃しちゃったから大変だったよ」
「ドロップアイテムはなんだったの?」
「確か魔石と毛皮と角かな」
「わかった、ありがとう」
歩いていると壁が見えてきた。
「壁だ」
「うん。なんか変でしょ?」
「そうだね」
メ―!メ―!
ニーナと話しているとモンスターの鳴き声が聞こえてきた。
鳴き声の方向を見てみると、飛び跳ねている毛玉が何個かあった。
「あれは?」
「もう1種類のモンスターだよ」
「鑑定!」
○バウンドシープ
羊型のモンスター。
反発性のある毛に覆われている。
毛のせいで手足が地面につかないので、毛を使って弾みながら移動する。
食べるとおいしい。
なかなかトリッキーなモンスターがいる階層だな。
「あれはどうやって倒したの?」
「物理攻撃が効かないから魔法でどうにか」
「厄介だな」
「大変だったよ」
ニーナはその時のことを思い出しているのか顔が引きつっていた。
「ドロップアイテムは?」
「魔石と毛皮とお肉だったかな」
「ほー」
「ライルくん、階段についたよ」
話して歩いていたらいつの間にか到着していた。
「なんか拍子抜けしちゃったけど、次の階層は気合入れよー」
「「「「「「おー」」」」」」
▽ ▽ ▽
俺達は地下7階層の草原を歩き続けていた。
地下6階層よりも広く、狼型のモンスターが時々群れで襲ってくるのがめんどくさかった。
「なんか種類が混じって群れてるって珍しいな。鑑定!」
○フォレストウルフ
狼型のモンスター。
森に棲んでいて群れで行動をする。
普通の狼より2回り大きいのが特徴。
○ダブルホーンウルフ
狼型のモンスター。
2本の角で攻撃をする。
○ブラックフレイムウルフ
狼型のモンスター。
毛並みが黒く、火魔法を使う。
○ブラックスパークウルフ
狼型のモンスター。
毛並みが黒く、雷魔法を使う。
「うわー4種類も居た。みんな、各自で倒して」
「「「「「「はい!」」」」」」
狼型のモンスター達はそれほど強くなかった。
数が多いのと、魔法を使う個体が居るのがめんどうだった。
戦っては進む、戦っては進むを10回ほど繰り返すとやっと階段に到着した。
「次がボス階層か」
「ライルくん。私たちにやらせてほしいんだけど」
ニーナが言ってきた。
「そのつもりだから安心して、1体って聞いてるけどたぶん強いから気をつけて」
「うん!ありがと」
俺達は階段を下りた。
▽ ▽ ▽
地下8階層はいままでで一番狭い部屋だった。
部屋の奥にはダンジョンコアがあり、それを守るように鎧を着たモンスターがいる。
「鑑定!」
○リビングアーマージェネラル
アンデット型のモンスター。
魔力によって鎧に意思が芽生えたと言われている。
同じような魔物を率いて軍を作る。
「あっ!これダメかも」
「「「「「えっ?」」」」」
俺は1歩リビングアーマージェネラルに近づくと、俺とリビングアーマージェネラルの間に3体の鎧のモンスターと10個の宙を浮く武器が現れた。
「鑑定!」
○リビングアーマー
アンデット型のモンスター。
魔力によって鎧に意思が芽生えたと言われている。
○リビングソードアンティーク
アンデット型のモンスター。
魔力によって古い剣に意思が芽生えたと言われている。
○リビングアックスアンティーク
アンデット型のモンスター。
魔力によって古い斧に意思が芽生えたと言われている。
「これはニーナ達じゃきついかも」
「できます!」
ニーナが言ってきた。
「任せてください!」
俺はニーナの目を見て信じてみることにした。
「わかった、危なくなったら手を出すからね?」
「「「「「はい」」」」」
鬼将軍の剱はリビングアーマー達に向かって行った。
「グーちゃん、ラーちゃん、ライドン。奥の強そうなやつを押さえて!ダンジョンコアは壊しちゃだめだからね」
グォー――!
キュー――!
ギャウー!
3体のテイムモンスターがリビングアーマージェネラルに突っ込んでいった。
「ルークとチャールズ兄とシャルはリビングアーマーを!残りは私とカシムでやる」
「「「「わかった」」」」
ニーナとカシムはナイフを取り出し、リビングソードアンティーク達に向かっていく。
「え?近距離戦はだめだ!」
俺が叫ぶが2人には聞こえていないようだ。
リビングソードアンティークがニーナとカシムに攻撃を仕掛ける。
ニーナは持っているナイフで受ける。
するとリビングソードアンティークの刀身が切れて消滅した。
カシムも同じようにナイフで攻撃を受けて倒していた。
「え?うそ?」
他の戦闘を見ていると、みんなスキルを使わずに戦っている。
カシムはナイフ、ルークは剣、シャルは槍、チャールズ兄はメイス。
「まさか・・・」
ルークの剣がリビングアーマーを攻撃するがうまくいかない。
「くそ!集中!」
ルークが再度一太刀浴びせると、リビングアーマーの身体の半分まで鎧を切った。
「あー途中までうまくいったのに」
シャルもチャールズ兄も攻撃をしているがリビングアーマーの鎧がへこんでいるだけ。
と思ってみていると10回に1回、強烈な一撃が入りリビングアーマーの鎧をボロボロにしていく。
「くそーまじかよ」
俺は無性に悔しくなった。
なぜなら前に俺が教わり、みんなに教えた『魔装』を完全ではないが習得していた。
みんながモンスターを倒していき、残るはリビングアーマージェネラルだけだ。
と思っていたが、過剰戦力だったようだ。
既にグーちゃん達が倒してしまっていた。
俺は何とも言えない気持ちを飲み込み、事情聴取をすることに。
「鬼将軍の剱のみんなは集合してください」
「「「「「はーい」」」」」
みんなは褒められると思い、ニコニコしていた。
俺はその表情を見ると、悔しがっていたのが恥ずかしくなった。
「えーと、魔装だよね?」
「「「「「はい」」」」」
「いつのまに?」
「夜にヒューズ師匠に教えてもらってました。まだ不完全ですけど」
「なるほど」
俺は最近の忙しさに甘えて、戦闘訓練をしてなかったことを悔やんだ。
「すごかった。正直に言っていい?」
「「「「「はい!」」」」」
「みんなが強くなったってうれしいけど、ものすごく悔しい」
「「「「「やったー」」」」」
「え?」
みんなのリアクションに戸惑っていたら、ニーナが説明をしてくれた。
「ライルくんにはいつも頼ってばっかりだから、何か一つでもライルくんより上になろうってみんなと話してたの」
俺は泣きそうになった。
悔しがってた自分が恥ずかしくてたまらない。
なんでこんなにいい子たちなんだ。
「そ、そうか。まあ俺が練習したらすぐ追い抜かすから、また頑張んないとだね」
「「「「「負けないから!」」」」」
「でもほんとに強くなってくれてうれしいよ」
「やったー!」
「師匠は忙しいから、魔装以外も上に行くからな」
「お兄ちゃん調子乗り過ぎ!」
「僕は料理で戦いたいなー」
「ライドンと一緒なら勝て・・・ないな」
鬼将軍の剱は本当に嬉しそうだ。
「みんな、ドロップアイテム回収して!俺はコアをいじるから」
「「「「「はーい」」」」」
俺はコアのもとへ向かった。
「あっ!ゴーレがまだ来てない」
俺は最下層とダンジョンの外に秘密の通路をつなげた。
ドアを開けて外に出るとゴーレとフリードが居た。
「攻略されたんですね」
「あれ?ずっと待ってたの?」
「はい。攻略が終わったら秘密の通路を使われると思っていたので」
「ゴーレもなかなか意地悪になったね」
「そんなことありませんよ。さあ、ダンジョンコアに行きましょう」
俺達は最下層の部屋に戻った。
▽ ▽ ▽
ダンジョンコアをいじり、ダンジョンマスターとして登録を済ませた。
「これって魔石代わりになるかな?」
俺は割れたダンジョンコアを取り出し、ダンジョンコアに近づけると吸収された。
そしてダンジョンの設定画面に[ダンジョンコアがレベル2になりました]と表示されていた。
ダンジョンポイントは全く増えていなかった。
「何が変わったのかな?ゴーレわかる?」
「モンスターに指示を出せるみたいです」
「指示?」
「細かい指示もできますし、大まかな行動内容を決めることもできるみたいです」
「ふーん。やってみないとわかんないな」
「あとダンジョンボスに意思を持たせることができるみたいです」
「あーなるほど。それは使えそうだ」
「それと秘密基地の範囲内なので、カスタマイズで細かく内装を変えれるようになりましたが、これは使わなそうですね」
「そんなことない!なんか楽しくなってきた」
「他にもコアがあればやれることが増えそうですね」
「そうなるとカラッカのダンジョンコアも欲しいね」
「ですね」
俺はゴーレの説明を聞き、ダンジョンの設定を始めた。
設定を始めると、楽しくなってきてしまい。
魔石をどんどん吸収させた。
ライルダンジョン(ダンジョンレベル2)
スタンピード自動阻止・ダンジョン外モンスター消滅
1階層(洞窟・狭い)
出現モンスター:なし
階段の出現方法:ボタン
地下1階層(草原・広い)
出現モンスター:オーク(Lv1・武器なし・行動自由)・オークナイト(Lv1・武器なし・行動自由)
リスポーン:常に50体
階段の出現方法:常に
地下2階層(草原・広い)
出現モンスター:ミノタウロス(Lv1・武器なし・行動自由)
リスポーン:常に50体
階段の出現方法:常に
地下3階層(草原・広い)
出現モンスター:フレイムコッコ(Lv1・行動自由)
リスポーン:常に50体
階段の出現方法:常に
地下4階層(草原・広い)
出現モンスター:バウンドシープ(Lv1・行動自由)
リスポーン:常に50体
階段の出現方法:常に
地下5階層(草原・広い)
出現モンスター:ウォーリーバッファロー(Lv1・行動自由)
リスポーン:常に50体
階段の出現方法:常に
地下6階層(草原・広い)
出現モンスター:なし
リスポーン:未設定
階段の出現方法:常に
地下7階層(洞窟・広大)
出現モンスター:アイアントータス(Lv1・行動自由)・ゴールドトータス(Lv1・行動自由)・ミスリルトータス(Lv1・行動自由)
リスポーン:常に200体
階段の出現方法:なし
地下8階層(草原・広い)
ボスモンスター:リビングアーマージェネラル(Lv20・指示あり・意思あり)
出現モンスター:リビングアーマー(Lv20・指示あり) リビングソードアンティーク(Lv20・指示あり) リビングアックスアンティーク(Lv20・指示あり)
リスポーン:ボス1体・その他10体ずつ
結構細かく設定できた。
これが計画していた、素材を集められるダンジョン。
地下8階層に『秘密基地』で小屋を2つ建てて、1つはダンジョンコアを守れるようにした。
ダンジョンコアがある小屋を秘密の通路で俺の部屋と繋いだ。
もう1つの小屋にはマジックボックスを数個設置、1階層以外の階層を秘密の通路で繋いだのでドアが7つある。
リビングアーマージェネラルは意志ありにして、ショーグンと名前を付けた。
俺の指示は理解できているようだが、しゃべれないみたいだ。
ダンジョンモンスターと普通のモンスターは根本から違うのかもしれない。
ショーグンにリビングアーマー達に指示を出して各階層のモンスターを狩らせ、ドロップアイテムをマジックボックスに入れるように指示を出した。
さすがに負けないとは思ったが、心配なので魔石を使いレベルを上げておいた。
地下7階層から地下8階層には階段がないので、俺の家からしか今のところは移動できない。
それなりにアイテムが確保できるようになったら、ダンジョンの外に小屋でも作って秘密の通路を繋ぐつもりだ。
「よーし!終わったー」
「お疲れ様でした」
ゴーレはずっと俺を待っていてくれた。
「みんなは?」
「学び舎に行かれました」
「じゃあ俺も行って、みんなのステータスを確認しようかな」
「お供いたします」
秘密の通路を使って自分の部屋に帰った。
するとゴーレが急に大声をあげた。
「マスター!」
「びっくりした、どうしたの?」
「ヒューズ殿が帰還いたしました」
「ほんと?」
「アオから連絡が来たので間違いないです。学び舎にいらっしゃるようです」
「わかった、急ごう!」
俺とゴーレは急いで学び舎へ向かった。




