182.ネネチーム
「ルーク、ルーシー!核以外攻撃してもダメ!」
「はい!」
「わかった!」
私達は大量発生したスライムと戦っていた。
「チャールズ!ちゃんとヘイトを稼いで!」
「ごめん。どんだけ叫んでも、こっちへ来ないんだよ」
スライムは聴覚がないのかしら?叫んでいるチャールズよりも、近くにいるルークとルーシーばかり狙ってい居る。
「わかったわ。ヘイト稼ぎは上位種が来るまでやらなくていいわ。チャールズもルーク達と一緒にスライムを倒して」
「わかった」
チャールズはメイスを振りかぶりながらスライムへ向かって行った。
「わざわざハーマンさんチームがいない北の森に来たのに。時間がかかり過ぎてる」
打撃で戦っているため、スライムの減りは悪い。
シュッ!シュッ!
アルナも弓で攻撃をしているが、核に届く前に矢が止まってしまう。
「ごめんアメリア。矢が核まで届かない」
「大丈夫よ。何か策を考えるわ」
このままだとだいぶ時間がかかっちゃう。なんか良い策はないの?
使える魔法はアルナの風魔法。他のメンバーは全員火魔法しか使えない。森の中で火魔法は絶対にダメ。
とりあえず時間かかってもいいから、地道にスライムを倒すしかない。
「ルークとルーシーはエクストラスキルをどんどん使って。アルナは風魔法。チャールズ、ヘイトはいいからどんどん攻撃して!俊速な群衆!」
私はみんなのスピードを上げた。
▽ ▽ ▽
「やっと終わった」
「さすがにちょっと疲れたわ」
「「うん」」
私達はスライムの大量発生とビックスライムの討伐を終えた。
みんないつも以上に時間がかかったせいか、ぐったりしている。
「ちょっといろいろ指示が悪かったわ。ごめん。ネネも何もさせてあげられなくてごめんね」
「気にしないでお姉ちゃん。この失敗が今後に生かせるって、ライルなら言うよ」
「そうだね。師匠ならそう言いそう」
「私も大丈夫だよ!」
「ありがとう」
私はルークとチャールズの言葉とネネの笑顔に救われた。
「あ、あのー」
ルーシーが申し訳なさそうに口を開いた。
「どうしたの?」
「あの、アメリアが何を考えていたのかが知りたいです」
「え?何を考えてたか?」
ルーシーの発言に私は驚いた。
「せっかくのライル様の特訓なので、同じパーティメンバーとしてリーダーの考えを知って、理解を高めて今後に生かしたいと思って」
「なるほど」
「そうだね。僕も聞いてみたいかも!」
「私も聞きたいです」
「僕も」
私はライルの学び舎に通う前は全部1人でやってきた。そのせいで何もうまくいかなかった。
学び舎に通うようになってから、人に頼ることが出来るようになったと思っていたけど、まだできていなかったのかもしれない。
私はみんなに自分の考えを伝えた。
「まず私はこの特訓で1番になりたかった。みんなのステータスを確認していたから、大量発生に遭遇しても問題ないと思っていたわ」
「「「うんうん」」」
「だけどそれが間違いだった。森の中での戦闘で魔法攻撃ができるのは風魔法が使えるアルナ1人だけ。他は火魔法しか使えない。私達のチームはルーク・ルーシー・チャールズの近距離の物理攻撃をメインにしているパーティだからこそ物理攻撃が効きにくいスライムと戦うという判断が私のミスだった」
「なるほど」
「そういえばみんな火魔法だね」
「水魔法使える人がいれば、注意して使えるんだけどね」
「相性が悪い相手への対策が全く私の中で考えられてなかったわ」
私は考えていたことを話した。
「じゃあ次スライムの大量発生と遭遇したらどうするの?」
「逃げはしないわ。大量発生を放置して、もし状況が悪化したら責任をとれないわ。私達の今の実力ではね」
「そうだね。師匠レベルならしっかり処理が出来るけど、僕達じゃ無理だね」
「なので申し訳ないけど、今回の特訓で1位を獲るのは諦めてほしいの」
「「「「え?」」」」
「次スライムに遭遇したら、私達ができる最善の方法をちゃんと指示するわ。でも他のパーティと比べるとだいぶ時間がかかってしまう。だけど苦手な物から逃げて1位を取るより、苦手なものに挑み続ける方が私はいいと思う」
私は過去の私が聞いたら胸が痛くなるような言葉をみんなに言った。
「そうだね。お姉ちゃんの考えで僕はいいと思う」
「僕も賛成」
「私も」
「アメリア、話してくれてありがとう。私も賛成」
「アメリアおねーちゃん。私も頑張るから!」
「ありがとうみんな。それじゃあ私達がやれる最善方法を伝えるわ」
私はみんなに私達ができる最善の戦い方を伝えた。
自分の中で考え込んでいたことを仲間に話しただけで、こんなに気持ちが楽になるなんて知らなかった。
家で独りでいたら気付けなかった。本当にあの時、勇気を出してライルに声をかけて良かった。
▽ ▽ ▽
「ルーク!伸剣を使ってチャールズのほうに敵をまとめて!」
「わかった!伸剣!」
ルークは伸剣を使い敵をチャールズがいる中央に押しやった。
「アルナ!弓と魔法で攻撃の手を緩めないで!」
「はい!」
シュッ!シュッ!
「ルーシー!ルークの伸剣から漏れた敵をお願い!」
「わかった!」
「チャールズヘイトを稼いで!背中は他の人を信じて!」
「わかった!」
私達は話合いを終えるとすぐに大量発生に遭遇した。
あんなにスライム対策をしていたのに、遭遇したのはゴブリンの大量発生だった。
スライムじゃないのは残念だったけど、チームの本領を発揮できる敵だ。
私は指示を出し続け、ゴブリンの大量発生とゴブリンエリートの討伐を終えた。
「よし!物理攻撃が効く相手なら結構速く終わるね」
「そうだね」
「スライム対策の作戦も応用できた感じがしました」
「私もやっと力になれてる気がして少し安心した」
みんな、やっと自分が得意な戦闘ができて満足そうだった。
「お疲れさま。すごい息が合ってたわ」
「お姉ちゃんの指示もやりやすかったよ」
「そうだね。事前にちゃんと打ち合わせできてたからやりやすかったね」
「完ぺきでした」
「あ、ありがとう」
お互いを称えあっていると、私の服を誰かが引っ張った。
振り向くと目に涙を浮かべたネネが私の服を引っ張っていた。
「アメリアおねーちゃん。私まだ1体も倒せてないよ」
「「「「「あっ!」」」」」
私達は自分達のことでいっぱいいっぱいになっていて、もう一つの課題を忘れてしまっていた。
「だ、大丈夫!すぐに次の大量発生をみつけるから。そ、そうよね?」
「すぐに見つけるから!ネネ、泣かないで!」
私達は休憩もせずに、次の大量発生を探しに走り出した。




