181.カイリチーム
私達は東の森にやってきた。
ハーマンさんチームが南の森と言っていたので、被らない様にした。
「みなさん、周りの索敵お願いします」
「「おう」」「はい!」
チェスターさん・オリバーさん・コルカーさんは周りの索敵を始めた。
「カイリは私に離れず、周りを警戒して」
「うん」
カイリはナイフを持っていた。
「ニーナちゃん、ゴブリンがいた。たぶん大量発生だ」
「わかりました。すぐ向かいましょう」
私達はチェスターさんが見つけたゴブリンのもとへ向かった。
ゴブリンは20体いた。たぶん大量発生だ。
「ゴブリンに攻撃して、他のゴブリンを呼び寄せましょう」
「「「わかった」」」
「では、戦闘開始!」
チェスターさんとコルカーさんがゴブリンに突っ込んでいった。
チェスターさんが大声で吠える。
ワォーーーン!
ゴブリン達がチェスターさんに向かう。
「土纏!来い!ゴブリンども!」
コルカーさんが土で武装して、大声で叫ぶ。
ゴブリンが方向を変え、コルカーさんに向かって行く。
「うわ!」
チェスターさんが吠えると同時にゴブリンの後ろに回っていたオリバーさんが、方向転換したゴブリンと鉢合わせてしまう。
「やばい!帯電!」
オリバーさんは瞬時に双剣に電気を帯びさせて、ゴブリンを切っていった。
ギャー!
切られたゴブリンが叫ぶと、森の中から複数のゴブリンが出てきた。
「2人共!一緒にヘイトを買っちゃダメ!今はチェスターさんがヘイトを買って、コルカーさんは周りのゴブリンを倒して!」
「わかった」
「すまん!了解だ」
2人共、申し訳なさそうに戦闘を始めた。
ワオーーーン!
再びチェスターさんが吠え、ゴブリンが向かってくる。
オリバーさんとコルカーさんがどんどんゴブリンを倒していく。
「メディックツリー!メディックツリー!メディックツリー!」
チェスターさんにメディックツリーが巻き付き、オリバーさんとコルカーさんに葉が飛んでいく。
ゴブリンが少しだが、私の方へ流れ込んできた。
「チェスターさん!ヘイトを!」
「すまない!」
ワオーーーーン!
再度吠えるが、数体のゴブリンが目の前までくる。
「カイリ、私の後ろに」
「うん」
「アイアンソーン!アイアンソーン!ストーンボール!」
私は目の前に来たゴブリン達を倒した。
「カイリ、怪我はない?」
「大丈夫。ありがとう」
「そこで気絶してるゴブリンを今のうちに倒しちゃいな」
「うん。わかった!」
カイリは気絶してるゴブリン2体の胸にナイフを刺した。
「だめだ。今日なんかうまく指示が出せない」
▽ ▽ ▽
そのあとゴブリンメイジとゴブリンナイトが出てきたが、何とか倒すことができた。
「ニーナちゃんすまない。何人かそっちに逃してしまった」
「俺もチェスターと被ってしまって、連携を崩してしまった」
「いつもはこんなことないんだけど、すごいゴブリンを取り逃がしたな」
「私も、ゴブリン相手にこんなに回復が間に合わなかったのは初めてたたかった時以来です」
私達は原因不明の不調に悩んだ。
「この特訓の目的は大量発生を多くつぶすことですが、今の私達だと大怪我をする可能性があります。なので一度落着いて、いつもと何が違うのか話し合いませんか?」
私はチームメンバーに問いかけた。
「ニーナちゃんの言うとおりだ。しっかり原因を探ろう」
「「うん」」
私達は話し合うことに決めた。
「まずはコルカーさん。何か気になることありましたか?」
「うーん。これは俺が原因なんだが、チェスターがヘイトを買った時にどう動けばいいかあまりわかっていない。狙っている敵がオリバーと被ることが多々あった」
「そうだね。俺はいつも自分が動きやすいように動いているからあまり周りを見れていなかったのかもしれない。いつもゾーイとルーシーが合わせてくれてるんだと気付いた」
オリバーさんも申し訳なさそうに言った。
「俺もいつも周りが処理をするのに甘えて、ヘイトを買った後に自分で倒すことが少なかったのかもしれない」
「俺もチェスターもチームメンバーの優秀さに甘えてしまった感じかな」
「そうだな。初めてチームを組むコルカーの動きを全く見れてなかったしな」
「私もいつもと違う状況に戸惑ってしまい、回復が遅くなってしまいました。すみません」
私達は先ほどの戦闘について反省した。
「次の戦闘なんですが、コルカーさんがヘイトを買う役割をしてもらいましょう」
「そうだな。それがいい」
「チェスターさんが周りの敵を倒し、私とオリバーさんが遠距離で攻撃」
「俺の水魔法、全然強くないけど大丈夫?」
「チェスターさんの身体能力をフル活用してもらうためにあえてオリバーさんを後衛にしてます。もしこっちに流れてしまっても、オリバーさんがいればチェスターさんもコルカーさんも安心して戦えると思います」
「なるほど」
「オリバーがいれば安心だ」
「そうだな」
3人は納得したようだ。
「こっちに流れないようにヘイトを買うのではなく、ヘイトを買いつつ流して倒す作戦です!」
「よし!それでやってみよう」
私達は気合を入れ直し、大量発生を探しに向かった。
▽ ▽ ▽
「よし!これで終わりだ!」
チェスターさんがスパイキーシープに最後の一撃を入れた。
「お疲れ様でした。うまくいきましたね」
「ニーナちゃんの作戦成功だな」
「なんかいろいろ意識したおかげで、ゴブリンの時よりやりやすかったよ」
「よかったー」
私達は無事にニードルシープの大量発生をつぶし、上位種のスパイキーシープを倒すことができた。
「オリバーさんのおかげで、カイリも8頭にトドメをさせました」
「オリバーさんありがとー!」
「どういたしまして」
オリバーさんはストレートなお礼に嬉しそうにしていた。
「とりあえず課題の一つはクリアしました。あとはどれだけ潰すかですが、焦らず作戦を立てましょう」
オリバーさんは驚いた表情をした。
「あれ?このままでいかないの?」
「このままでもいいんですが、せっかくのライルくんの特訓です。みんなが成長しないとダメだと思うんです。なので、コルカーさんとチェスターさんの役割を入れ替えてやった方がいいと思うんです」
チェスターさんとコルカーさんは納得した表情をしていた。
「さすがニーナちゃん。ライル様ならそうさせる」
「俺も慣れていないことから逃げたくはない」
「そうだな。ライル様ならそうするだろうな」
オリバーさんも納得してくれたようだ。
「ありがとうございます。では、改めて気合を入れていきましょう!」
「「「おう!」」」
「僕もがんばる!」
カイリもやる気満々だった。
▽ ▽ ▽
森を進むと、ゴブリンが5体いた。
「いました。先ほどと同じように、攻撃して仲間をおびき寄せましょう」
「「「おう!」」」
チェスターさんが吠える。
ワオーーーン!
その瞬間、コルカーさんがゴブリンの後ろに回って切りつける。
「草纏!」
鋭い葉が剣に纏い、そのまま斬りつける。
ギャー!
叫ぶゴブリン。
「バタリーキューカンバー!」
私の後ろにバタリーキューカンバーが召喚され、ゴブリンに向かって種を3つ吐き出す。
ボン!ボン!ボン!
ゴブリンに種が当たると、顔がえぐれていた。
「くらえ!」
チェスターさんが残り1体に鉤爪を突き刺す。
最後の1体が倒れた。
「援軍が来ます。警戒して!」
「「「「はい!」」」」
しかし援軍は来なかった。
「あれ?」
「ニーナちゃん。さっき倒したゴブリンの死体がなくなってるんだけど」
「え?」
私は見たことない現象を目の当たりにして混乱していた。
「これは特訓が終わったらライルくんに報告しなくちゃ」
私達は謎の現象を一旦忘れて、足を進めた。




