178.強弓の特訓
「おい!やる気あるのか?」
「「「あります!」」」
鬼将軍の強弓は声を荒げながら答えた。
今日は予定通り、大量発生の討伐に来ていた。
メンバーは俺・ニーナ・ゴーレ・フリード・ノコ・ミッツと鬼将軍の大弓の3人だ。
ノコが前日に見つけてきた大量発生は、ハンマーヘッドスネークだった。
鑑定で見る限り、毒などはないようなので本気で特訓をすることにした。
序盤はコルカーが土纏をしながら敵を引き付けて、アルナとナーリアが遠距離攻撃をして倒していった。
時間が経つにつれ、土纏の維持が出来なくなりコルカーがダメージを受けはじめた。
それに対処しようとナーリアが動くが、敵の多さに対処できずにいた。
「ニーナ。全員に回復を」
「はい!メディックツリー!」
ニーナが3人を回復している間に喝をいれる。
「3人共、もう終わる?」
「「「やります!!」」」
「せっかくのチームワークも崩れてきてるけど?」
「大丈夫です。体制を整えます」
そういうとコルカーは土纏をし、敵を引き付け始める。
「まだ上位種が出てきてないから、気合入れ直せ!」
「「「はい!」」」
3人は再び、ハンマーヘッドスネークの群れに向かって行った。
しかし時間が経つと、コルカーが敵を引き付けられなくなってしまう。
遠距離攻撃をしている2人も攻撃されるようになってしまった。
「おい!また土纏が崩れてきたぞ。そんなんでどうやって守るんだ?」
「はい!土纏!」
「アルナ!命中率が落ちてるけど、コルカーを見殺しにするのか?」
「しないです!」
「ナーリア!アイビースネイクを上手く使え!魔法だけでどうにかできると思ってんのか?」
「わかりました!」
鬼将軍の強弓は俺に指摘されたことを意識しながら敵を倒していく。
「ニーナ。こまめに回復してあげて」
「わかった」
3人がハンマーヘッドスネークを200匹強倒す。残りは50匹ほどになっていた。
「ゴーレそろそろ上位種をお願い」
「承知致しました」
裏でゴーレ達に足止めをさせていた上位種をこっちに向かわせるように指示をしていた。
少しするとゴーレとミッツが戻ってきた。
「マスター、申し訳ありません」
「どうしたの?」
「ミッツが初の戦闘で気合が入ってしまっていたようで、上位種が瀕死になってしまいました」
「なるほど。ミッツも頑張ってくれたから責めれないね」
ブンブンブン
ミッツが申し訳なさそうにしている。
「大丈夫。ニーナを上位種のところに連れて行って、全快にしてもらって」
「承知致しました。ニーナちゃん、申し訳ありませんがついて来てください」
ゴーレとミッツはニーナを連れて上位種のもとへ向かった。
「そろそろ上位種がくるぞ!」
「「「はい!」」」
3人に再度喝を入れると、残りのハンマーヘッドスネークを殲滅した。
ジジジジジジ!
ノコが森の奥から出てきた。
ノコを追いかけるように、ハンマーヘッドスネークより2回りほど大きく、頭が2つある蛇が出てきた。
「鑑定!ダブルハンマーヘッドスネークか。まあ大丈夫でしょう」
ダブルハンマーヘッドスネークはちゃんと回復したようで。
ノコを追いかけていたが、コルカー達を見つけ標的を変更した。
「土纏!」
ダブルハンマーヘッドスネークの1個目の頭がコルカーにかみつく。
しかし、土纏のおかげで牙は身体に到達していない。
かみついた状態で、もう1個の頭が頭突きをしようとする。
「アクアボール!」
アルナの魔法が当たってひるんだ。
「リーフピジョン!アイビースネイク!」
蔦でできた蛇と葉でできた鳥がダブルハンマーヘッドスネイクの2つの頭に向かってく。
リーフビジョンに攻撃され、かみついていた頭はコルカーを離した。
「くらえ!」
コルカーは振りかぶり、首の付け根に剣をたたきこんだ。
ダブルヘッドハンマーシャークは綺麗に裂けた。
「「「よっしゃ!」」」
3人は無事に大量発生を殲滅することができた。
「おつかれさま」
「ライル様、ご指導ありがとうございます」
「なんか集団相手と単体相手で強さが全然違うね」
「元々猟でしか戦闘をしていなかったので、集団相手だとどうすればいいかまだ分かっていないんです」
「私もこんなに集団相手と戦えないとは思っていなかった」
「うんうん。あと戦闘時間が長いせいで、戦況の変化について行けなくてくやしい」
3人共、思ったように動けなかったみたいだ。
「なんとなく問題点はわかったから、今後対策していこう」
「「「はい」」」
「じゃあ解体するまでが特訓だから!」
「「「はい」」」
3人は解体をしに向かった。
強弓の課題は、集団戦に慣れることと回復をどうするかだな。
工夫さえすれば、火力は問題ないはずだ。
俺は3人の解体が終わるのを待った。
▽ ▽ ▽
解体が終わり、討伐証明部位の歯と素材として使える皮をマジック馬車に突っ込んだ。
素材として使えることはコルカーに教わった。
ちなみに肉は食えるらしいが、骨が多くて食いづらいらしいので処分した。
「よし、帰るか」
「「「はい」」」
馬車に乗りこんで村へ向かった。
村に向かう途中、5体のオークが道をふさいだ。
ゴーレがすぐさま対応をし、オークは切り刻まれた。
肉を回収しようと馬車から降りるが、オークの死体がなくなっていた。
「あれ?跡形もなく切り刻んだ?」
「いえそんなはずはないのですが」
「うーん。こんなこともあるのか」
疑問に思いながらも馬車に乗りこみ、村に向かった。
▽ ▽ ▽
その日の夜、俺は疾風の斧の家に来ていた。
村に帰ってガルスタン夫妻に素材と上位種の魔石を渡して、いろいろ発注をしていたらこんな時間になってしまった。
「鬼将軍の強弓の課題はこんなところですかね」
「なるほど。ギルドでの模擬戦では圧倒していたから心配してなかったが、そんな弱点があるなんてな」
「今後はニーナとアメリアに引率を交互にやってもらおうと思います。俺も出来るだけ参加はしますが」
「2人の成長にもつながるだろうから良いと思うぞ」
「ジョシュ達はどうでした?」
「詰めがだいぶ甘いところがある。テイムモンスター達はだいぶめんどくさい」
「俺の指導向きですね」
「そうだな。お前はめんどくさい代表だからな」
俺はヒューズさんの足を踏んだ。
だがヒューズさんはまったく微動だにしない。
「3人のカラッカ行きはいつにします?」
「お前の特訓はいついけそうなんだ?それ次第のつもりなんだが」
「ノコが大量発生をもう一か所見つけたみたいなんで、ゴーレとシモンに捕獲してきてもらってます。なので明日にでも行けますよ」
「じゃあ明日はライルの特訓。クララ達がいまカラッカから馬車をもってきてるから、明後日カラッカに向かうことにするか」
「問題ないです」
ジョシュ達の遠征のスケジュールがざっくりだが決まった。
「メンバーはどうする?」
「疾風の斧の皆さんだけでいいですか?」
「かまわんがなんでだ?」
「面白い特訓を考えたんで、それを試そうかと」
「お前のその発言はこわいな」
「そんなことないですよ」
「一応内容を聞いていいか?」
俺は特訓の内容をヒューズさんに教えた。
「意外と面白そうだな」
「でしょ?賞品なんてつけたら良さそうかなって」
「安心できたから、あとは任せる」
「ジョシュ達の事はお願いしますね」
「おう」
俺は自宅に戻り、ベッドに入った。




