176.鬼将軍の強弓
俺は疲れ切っていた。
4日間の貸切特訓を無事終わらせ、最近お気に入りの庭でフリード達と中立モンスターとだらだらしていた。
今日は獣人の子供達も学び舎が休みのため、遊びに来ていた。
「みんな、ちゃんと勉強はしてる?」
「「「「「「してます!」」」」」」
「みんな偉いね」
「早く僕もお父さんみたいに冒険者になりたい」
ジョシュはチェスターに憧れているようだ。
だらだらしていると、コルカー達がやってきた。
「ライル様!」
「おっ、登録と試験どうだった?」
「無事にEランク冒険者になりました。そして学び舎の試験も合格しました。一緒に受けた剛角の皆さんも合格しました」
「よかったね。これでカラッカの街で活動できるね」
「はい。ありがとうございます。ライル様のお名前をお借りしているので、恥じのない様に頑張ります」
「「頑張ります」」
「名前?借りてる?」
「パーティ名を鬼将軍の強弓にさせていただきました」
「え?それは・・・3人の意志?」
「「「はい!」」」
俺は頭を抱えた。
「まあ3人がいいならいいか。これからがんばってね」
「はい。あとライル様に1つお願いがありまして」
「ん?何?」
「ライル様の特訓というものを受けてみたいのですが」
「え?必要?3人共もう強いでしょ?」
「ヒューズさんが絶対に受けた方がいいとおっしゃっていたのと、鬼将軍の剱と剛角のあの若さでの強さを見て、我々にも必要と感じました」
「あーそう。じゃあやる?」
「はい。お願いします」
「宜しくお願いします」
「やりたいです」
3人はやる気に満ち溢れていた。
「じゃあ数日以内にはやるから、準備だけはしておいて」
「「「はい」」」
コルカー達は学び舎に戻っていった。
「ノコ。悪いんだけど、大量発生探しに行ってもらえる?」
ジジジジジジ
ノコは頷いて、飛んでいった。
▽ ▽ ▽
だらだらしていると中立モンスターが増えていた。
「あれ?見たことないモンスターだ」
いつもいるキノコ型のベビーマッシュ・カインドマッシュ・マイコニドと植物型のドライアドとアルラウネ、それ以外にトカゲみたいなモンスターが数匹いた。
「鑑定!」
○チャーコルニュート
ヤモリ型のモンスター。中立モンスター。
炭のように黒いのが特徴。
炭と燃えカスを食べる。
○フレイムニュート
ヤモリ型のモンスター。
火を少量だが吐き出すことができる。
火を食べると、身体能力と吐き出す量が増える。
「小っちゃくてかわいいな」
俺は1匹しかいないフレイムニュートを撫でると、ライターレベルの火を吐き出した。
「いつから来たんだろ?」
「ライル様!この子達はこの前から来てるよ!」
「そうなの?」
「2日前くらいから、みんなと一緒に来るようになりました」
「そうなんだ。みんな、他の中立モンスター達と同じように仲良くしてあげてね」
「うん。みんなテイムしてるから、家族だよね?」
「そうだよ。テイムしたら家族・・・テイムした?」
「うん。一昨日、ララがしたよ」
「僕も!」
「私も!」
「えっ!」
▽ ▽ ▽
俺はヒューズさんとチェスターと家の居間にいた。
「ということです」
俺は先ほど判明した事実を2人に伝えた。
2人は頭を抱えていた。
「テイムしたってことは、エクストラスキルも取得したってことだよな?」
「そうです。学び舎パワーで通常スキルも何個か持ってます」
「すみません。息子達がご迷惑をかけて」
「全然迷惑じゃないんだけどね、いきなりすぎてびっくりしただけだよ」
チェスターもさすがに驚いているようだ。
「ライル、これからどうする?」
「うーん。学び舎でのみんなの様子は?」
「みんな真面目だ。成績も優秀だ。だが冒険者を3人にさせるのはまだ早い」
「なるほど。チェスターは3人が冒険者になるのは反対?」
「反対ではないです。ですがもう少しヒューズさんのところで学ばしてからかなと思ってます。村の子供達とそんなに歳は変わらないですが、まだ中身が幼いと感じることがありますので、すぐに冒険者にさせるのは不安です」
「わかった」
俺は決断した。
「なるべく早く魔力適性検査を受けに行きましょう。冒険者登録は今回はなし。他の獣人の子供達と訓練をして、6人で冒険者登録を目指す方向にしましょう。エクストラスキルを取得した3人には俺の訓練も受けさせます」
「わかった、そうしよう」
俺とヒューズさんが話しているとチェスターが申し訳なさそうに口を開いた。
「ライル様。獣人には魔力適性がありません」
「え?」
「そんなことないはずだ、俺は魔法を使う獣人をみたことがあるぞ」
「それは通常スキルを得たのだと思います。ベラの母も魔法は得意でしたが、魔力適性はありませんでした。獣人は魔力適性は基本なく、種族によって魔法系のスキルを覚えるんです」
「なるほど、じゃあ奴隷解放した時にステータスプレートも貰っているからカラッカに行く必要はないのかな?」
「いえ、経験のために行かせていただけないでしょうか」
「わかった。遠征みたいなのも経験させたいもんな。ヒューズさんは大丈夫そうですか?」
「問題ない」
今後の方針を決めた俺達は解散した。
俺はみんなのところに戻って、話し合いの内容を伝えた。
「うん。それでいいです!」
「それがいい!」
「ありがとうございます!」
ジョシュ達は喜んでいた。
「冒険者になるのが、だいぶ先になっちゃうけどいいの?」
「はい!俺達はカイリ達のお兄ちゃんなんで」
「お姉ちゃんなんで」
「みんなで一緒に冒険者になろうって約束したんだよ!」
ジュシュ達はカイリ達の一緒に冒険者になると約束したみたいで、すぐに冒険者にならないのは問題がないようだ。
「そうなんだ。じゃあこれからもみんなで授業頑張れる?」
「「「はい!」」」
「カイリ達も頑張れる?」
「「「はい!」」」
「じゃあ、この話はおしまい!みんな遊びに戻っていいよ」
「「「「「「はーい!!」」」」」」
ジョシュ達の成長をちょっとだけ感じた。
「いや、学び舎うまく行きすぎ!」




