139.引き寄せられるもの
俺達は人間のオスを縛り、ウルヴィが起きるまで小屋を漁っていた。
俺には何か引き寄せられるものがあったからだ。
(あーこれ私のマジックバッグ。知らないものも入ってるけど、私の荷物全部ちゃんと入ったままだ。大切なものがあったからよかった)
ユイはバッグから剣と人形のような物を取り出して、嬉しそうに眺めていた。
(大切なものなのか、見つかってよかったな)
(昔、大事な人からもらったものなの)
(バッグには他に何が?)
(えっと、なんだろこれ。卵?)
俺はその卵に何故か引き寄せられる感覚になった。
(ユイ。なにが理由か分からないがその卵は俺にとってとても大事なものだと思う。預かっていてもらえないか?)
(わかった。何かオクスについてわかるかもしれないわね)
(ありがとう。この小屋に引き寄せられたのも、その卵が原因だと思う)
(引き寄せられるか、じゃあ私たちの旅は引き寄せられるところに手当たり次第行ってみよう)
(いいのか?)
(私はソロの冒険者だから、生き方は自由なの。オクス達の力にもなりたいしね)
今後の方針をユイと話しているとウルヴィが起きた。
グルルルルルルル
俺たちを見て威嚇をしているようだ。
(ユイ、落ち着くように言ってくれ)
(大丈夫よ。私が近くにいたら、オクスとウルヴィも会話ができるわ)
(わかった)
俺はウルヴィに話しかけた。
(俺の名前はオクスだ。落ち着いてくれ、俺は怪我をしたお前をここに連れてきた。ここにいる人間のユイはお前の怪我を治してくれたんだ)
(なんでお前は俺と話しているんだ?待ってくれ、俺は人間の子供と戦っていて、その子供の攻撃を食らったとき。今までの感覚と違うものを感じて…)
(お前もか、俺もお前と同じだ)
(同じ?)
俺はウルヴィに自分の今までの事を伝えた。
(俺も全く同じだ。子供の攻撃を受けた時、俺はワーウルフだがワーウルフではないと感じた)
(そうだな、俺もオークだがオークではない。むしろ人間への方が感情が動くように感じる)
(オクス。助けてくれてありがとう。あのまま戦っていたら俺が死ぬかあの子供に大怪我を負わすところだった)
(構わない。俺もウルヴィに引き寄せられ、助けなきゃいけないと感じたから行動したまでだ)
(ありがとう。そのウルヴィというのは?)
(ユイが俺たちにくれた名前だ。気に入らなかったら言ってくれ。ユイにまた考えてもらおう)
(いや、気に入った。ユイ、名前を授けてくれてありがとう)
(よかったー気に入ってくれて!これからよろしくねウルヴィ)
俺はウルヴィに卵と今後のことを話した。
(この卵に何か感じるか?)
(感じる。引き寄せられらような感覚だ)
(やはりな。俺とユイは俺が何者かを調べる旅にでるつもりだ。その旅にウルヴィもついてきて欲しいのだが、どうだ?)
(命の恩人と名付けてくれた人間のメスがいるんだ。俺も旅に同行させてもらう)
(ちょっと、ウルヴィ!女の子をメスって言っちゃだめよ。人間には女性とか女の子って言うの。私、まだ15歳だから女の子だからね。女の子には優しくしなきゃだめだから。あと女の子は可愛いって言ってくれると強くなれるんだからちゃんと覚えておいて)
(わ、わかった)
(オクスもよ!)
(お、おう)
俺達はユイにたじたじになっていた。
▽ ▽ ▽
俺達は今後の行き先を決めた。
(ウルヴィも感じてると思うが、俺はこの森を越えた所に引き寄せられている。その原因を探りたい)
(だいぶ距離はあるとは思うが、俺も何かを感じている)
(よし!じゃあその方向に行こう!細かいことは行ってから決めよう!)
俺達は小屋にあった使えそうなものを奪い、森の奥へ向かっていった。




