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138.オクスと女冒険者

ここはどこだろうか。


俺は夜の森を歩いていた。

ここ数日、目標なく森を歩き続けていた。

森の中は静かで、俺の足音と俺が背負っているこいつの呼吸音しか聞こえない。


縁もゆかりない、こいつをなぜ俺は助けたのか。

こいつも早くどこかで回復しなければ死んでしまう。


俺は自分自身が何者かもわからないまま、怪我をしているこいつを背負い、森の中を歩き続けた。


少し歩くと小屋があった。

小屋の中に回復できるものがあるかもしれない。

俺は小屋に引き寄せられる感覚に陥った。

だけど小屋の中には人間がいる。

俺はできるだけ人間との接触はしたくない。

俺は諦めて小屋から離れようとした。



すると小屋に向かう人間が2人いた。

「どこに連れて行く気なの?何日も何日も!私を解放しなさい!」

「うるせぇ女だな。他の女どもは途中で死んじまったから、テメェだけでも貴族に売らなきゃ赤字なんだよ!

顔が良いCランク冒険者ならそれなりの値段がつくからな」

「私は二度と奴隷になんかならないわ!馬鹿なことを言ってないで解放しなさい!」



人間のメスがオスに無理矢理連れられている。

俺はなぜか人間のメスを助けなくてはならないと思った。

その瞬間、俺は担いでいるやつを地面に置き、人間のオスに高速で近づき、拳を腹部に入れた。

「グッ!テメェだれ…」

人間のオスは気絶した。


「え!あなた一体誰?」

人間のメスは俺の姿を見て言った。


一体誰、そんなこと俺が知りたい。


メスの声を聞いて小屋から人間のオスが5人出てきた。

「おい!なんの声だ!」

「カシラ!こいつ気絶してます」

「テメェら何者だ!」


武器を持っていることが確認できた。

俺は人間のメスの手錠を破壊した。

「え?どうして?」


手錠を壊し、高速で人間のオスに近づき、

拳を腹部にいれて、3人気絶させた。

すると背後にいたオスが剣を振り下ろしてきた。

「舐めてんじゃねーよクソモンスター!」

ボコッ

剣を振り下ろしたオスは俺に剣を当てる前に吹っ飛んでいった。

「あなた、気をつけなさいよ!死ぬところだったわよ!」

人間のメスが、攻撃したようだ。



なぜこのメスは俺を助けたのだろうか、俺は困惑し、メスを見つめていた。

「あと1人いるんだから、集中して!あっ!後ろ!」

俺は後ろにいたオスを殴り、気絶させた。


「あなた強いわね。ところであなたは?」

俺は喋ることができない。

正確に言うと人間が使う言葉を喋ることができない。



(あなたはオークなの?)

(俺は自分が何者かがわからない)

(名前はあるの?)

(名前?そんなものはない)

(じゃあ名前を考えないとね)

(会話ができない俺に名前など!ん?)


俺は人間のメスと会話ができていた。

(これは私のエクストラスキルなの。近くにいる人と頭の中で会話ができるの。ある程度知識があれば動物でもモンスターでも頭の中で会話ができるわ)

(人間のメスの力か)

(人間のメスっていうのやめてよ。私にはユイって名前があるの)

(ユイ…ユイは俺が怖くないのか?)

(最初は怖かったけど、私を助けてくれたじゃない)

(俺は自分がなぜユイを助けたのかわからない)

(でも助けてくれた。だから私はあなたを怖がらないことにしたの)


ユイの言葉に俺の心は感じたことのない感情を覚えた。


(ありがとう)

(どういたしまして。ところであなたのことを教えて、わかる範囲でいいから)

(俺はつい最近まで本能に操られて生きていたみたいだ。記憶はあるが、行動に俺の意思はなかった。

先日人間の子供と戦っていて頭に攻撃をくらった瞬間、本能から解放されて今のように自分の意思で行動を取ることができるようになった)

(なるほど。その戦闘はなんで起こったの?)

(俺が同族と思われるもの達を指揮し、人間の街を襲撃するため進行していたからだ)

(え!)

(言い訳になってしまうが、そこに俺の意思はなかった。子供達を気絶させ、俺は逃げた。逃げている途中で、あっ!)

(どうしたの?)

(逃げている途中で、他の人間の子供にやられている者がいた。なぜかわからないが、瀕死のそいつを助けて逃げてきたんだ。早くしないとそいつが死んでしまう)

(わかったわ、あなたはその人を連れてきて。私は小屋の中に回復出来るものがあるか調べるわ)

(助かる)



俺は地面に置いてきたそいつを担ぎ、小屋に戻った。

(あったわよ、ポーション)

(すまない、使い方がわからない)

(わかったわ、私がやる)

ユイはポーションをそいつにかけた。

体についた傷はみるみる治り、呼吸も落ち着いてきた。


(多分これで平気よ、でもなんでこのワーウルフを助けたの)

(わからない、でも助けなきゃいけないと思ったんだ)

(そう。あなたは人間に恨みがある?)

(わからない。ただ戦っていた子供達が無事かどうかは気になってはいる)

(そう、じゃあ決まりね。私、あなた達と一緒に行動するわ)

(いいのか?)

(あなたに助けられたし、あなたは私がいないと意思疎通できないでしょ?悪いモンスターと思われて人間と戦うことになるのは不本意でしょ?)

(その通りだ、出来るだけ人間を殺すようなことはしたくない)

(じゃあ決定!よろしくね。じゃあ名前を決めないとね)

(名前か、俺にはどんなものが名前になるかわからない、ユイが決めてくれないか?)

(いいの?)

(頼む)

(なんかこのやりとり、なんか懐かしいわ)

(どうした?)

(なんでもないわ。名前考えるね)


ユイは悩み始めた。

(せっかく名前つけるなら、かっこいいのがいいよね。うーん。じゃああなたはの名前はオクス!そしてこの寝てる人はウルヴィ!どう?)

(オクス。俺はオクス。ありがとユイ)

(どういたしまして!これからよろしくねオクス!)



俺とユイはウルヴィが起きるのを小屋で待つことにした。




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