130.鬼将軍の剱の初陣
私たちは森の中を走っていた。
ライルくんと別れて、指定の場所へ向かっていた。
「難しいかもしれないけど、出来るだけ体力を消耗しないように走って」
「「「「わかった」」」」
ライルくんに任された任務、絶対に失敗できない。
キューキュー!
偵察に行っていたラーちゃんが戻ってきた。モンスターが居たようだ。
「そろそろ接敵する!敵が見えたらラーちゃんが魔法攻撃を放つから、それと同時に攻め込んで!」
「「「「わかった!」」」」
走っていくと、豚の顔の二足歩行のモンスターが大量にいた。
「オークだ。ラーちゃんおねがい!」
キューキュー!
ラーちゃんは黒い稲妻をオークの集団の中心に飛ばした。
稲妻は広がり、どんどんオークを倒していく。
「攻撃開始!チャールズ兄はヘイトを、カシムはどんどん矢を射って!」
「おう」「わかった!」
チャールズ兄は前に出て叫んだ。
「おい!オークども!オレが倒してやるからかかってこいや!」
周りのオークがチャールズ兄に襲いかかる。
反撃の大盾で防ぐと弾かれて燃えていく。
「インクリーシングアロー!インクリーシングアロー!」
カシムが放った2本の矢は6本になり、オークに刺さる。刺さったオークが1体寝て、1本は爆発し、1本はオークの体を貫通した。
「カシム、攻撃の手を止めないで!」
「おう!」
ルークとシャルはチャールズ兄の周りのオークをどんどん倒していく。
「伸剣!鞭剣!」
伸びた黒剣を振り回し、オークを倒していく。
「ダークネス!ドレインランス!ドレインランス!」
視界を奪われたオークの顔面に槍を突き刺す。
シモンとキリーはオークが街に行かないように、
私たちから抜けていったオークを殲滅してくれている。
「ラーちゃん。私達が巻き込まれないように少し離れたオークにデススパークをお願い。上位種が出てきたらスロウをお願い!」
キューキュー!
ラーちゃんは遠くの集団にデススパークを放った。
順調に倒せているが、数が多すぎる。
「アイアンソーン!」
荊を召喚して、オークを攻撃させる。
ボン!
「うぁ!」
チャールズ兄に火の球と風の球が何個も飛んでくる。
「メディックツリー!ラーちゃん、スロウを敵全体にかけて」
キューキュー!
ラーちゃんは戦場の中心に飛んでいき、スロウをかけた。
「ルーク!スロウが効いてる間にオークメイジを探して倒して」
「わかった!」
ルークは走っていった。
チャールズ兄への魔法攻撃はスロウのおかげで間隔が広くなったがまだ飛んでくる。
「チャールズ兄、ちょっと耐えて。ルークがオークメイジを倒すから」
「わ、わかった!」
その瞬間、私の頭上に大量の矢が降り注いだ。
肩と腕に1本ずつ刺さった。
「くっ!あーー!!」
耐えきれない痛みだった。私は矢を無理矢理引き抜いた。
「め、メディックツリー!」
私は自分を回復した。
「大丈夫かニーナ」
「ごめん、カシム。オークアーチャーもいるみたい。倒しに行ける?」
「任せろ!すぐ仕留めてくるよ!」
カシムは森の奥に入っていった。
「シャルとチャールズ兄、一旦引いて!」
「「はい!」」
矢と魔法攻撃を防ぎながら引いてくる2人。
シャルとチャールズ兄が引いたのを確認し、
「ラーちゃん、デススパーク打ちまくって!」
キューキュー!
バリバリバリバリバリバリ
黒い稲妻がオーク達に当たり、どんどん倒れていく。立ってるオークは殆どいなくなった。
「ありがとうラーちゃん」
キューキュー!
ドン!
ラーちゃんが何かにぶつかり吹っ飛んでいった。
ラーちゃんが居た場所にいるのは、ストロングボアより2回りほど大きいモンスターに乗ったオークナイトだった。
「ラーちゃん!」
ラーちゃんは見えないところまで飛ばされたようだ。
私たちの目の前には、大きいストロングボアが20頭いた。
あれはストロングファングボアだと思う。
20頭全てに長槍を持ったオークナイトが乗っていた。
「2人とも、ばらけちゃダメ。まとまって倒さないと」
「「わかった」」
「チャールズ兄、できるだけ攻撃を防いで。全部は無理なのはわかってるから」
「ごめん。できるだけ多く防ぐから!」
チャールズ兄は大楯を構えた。
2頭のストロングファングボアが突っ込んできた。
シャルが槍を投げると、ストロングファングボアの脚が削れてバランスが崩れ倒れた。
残る1頭が突っ込んできたがチャールズ兄が大楯で防ぐ。
しかし止めることができても弾くことができない。
オークナイトが長槍でチャールズ兄を攻撃しようとする。
「アイアンソーン!」
私は手からアイアンソーンを出して、オークナイトの攻撃を防ぐ。
追加で8頭のストロングファングボアが突っ込んでくる。
シャルは槍を投げるが、1頭のバランスを崩すことしかできない。
これはダメだ。
私たちにストロングファングボアにぶつかり吹き飛んだが、思ったより痛みがない。
私たちがぶつかったストロングファングボアを見ると首だけだった。
チチチ!
シャシャシャシャ!
「シモン、キリー!」
シモンとキリーが私たちに突進してきたストロングファングボアの首を刎ねて助けてくれていた。
「まだ残ってるから体勢を立て直して!」
私は奥のストロングファングボアを見るが、動かない。
「ごめん、遅くなっちゃって!」
「俺も時間かかっちゃったわ!」
キューキュー!
残っていたストロングファングボアを倒したのは、至る所に火傷を負っているルークと
矢が肩に刺さってるカシムと吹き飛ばされたラーちゃんだった。
私は3人に思わず抱きついた。
「ちょっと!痛いから回復してほしいな」
「俺も手が全然上がんないんだよ」
「ごめん。メディックツリー!メディックツリー!メディックツリー!」
私は3人に葉を飛ばした。
オークたちとの戦闘が終わり、私達は小休憩をとっていた。
「あとは卵から生まれたモンスターがどこかにいるはず」
「よし、そいつを倒せば終わりだ」
「はぁー。モンスターがモンスターに乗ってるの反則じゃない?」
「武器も強いし」
「くそー!もっと盾を上手く使えたら」
「チャールズ兄、あれを止められるのすごいよ」
殺伐とした空気から少し落ち着いたせいか、和やかな雰囲気になっていた。
ギャァァォォォー!
一瞬で全員の身体が硬直した。
身体が恐怖を感じた。聞こえてきた鳴き声が原因だろう。
「なに?あの鳴き声?」
私はあたりを見渡すが、鳴き声の主が見つからない。
「ニーナ上!」
「え?」
上をみると、何かが飛んでいた。
「なにあれ?」
「あれってもしかしてドラゴン?」
私たちの頭上にはフリードより少し大きいドラゴンが飛んでいた。
ドォーン!
目の前に何かが落ちてきた。
砂煙が舞っている。
少しして砂煙が晴れると、その中にはオークが1体いた。
だけどそのオークはさっきまで戦っていたオークとは全く違っていた。
ギルドの本にも書いてなかった。
疾風の斧の授業でも聞いたことない。
オークには思えないほど筋肉質で、顔つきも太ってるとは言い難い。むしろ引き締まっている。
むしろオークの特徴を持った人間にも見える。
まとっている衣服はオークのものだが何かが違う。
さっき恐怖を感じたのは、ドラゴンの鳴き声でじゃなかった。
目の前のオークの存在に恐怖を感じたんだ。
シモンとキリーとラーちゃんも怯えているようだ。
とてつもなく強い。私たちじゃ相手にならない。
「みんな、これは戦っちゃダメ。ヒューズさんの最初の授業覚えてる?」
「覚えてる」
「シャルのダークネスをかけたらすぐ逃げるよ」
「わかった」
シャルがダークネスをかけようとした瞬間。
ギャァァォォォー!
飛んでいたドラゴンが口から雷を吐きながら私たちに突っ込んできた。
「シャル!ドラゴンごとお願い!」
「ダークネス!」
オークとドラゴンの視界を奪ったが、ドラゴンはそのまま突っ込んでくる。
「みんな危ない!」
ルークが前に出て、剣を盾にしてドラゴンに立ち向かう。
ドラゴンはルークにぶつかった瞬間、ルークを掴み飛んでいった。
「「「ルーク!!」」」
「みんな、逃げるよ!ルークはあとで助けだそう!今逃げないと全滅しちゃう!」
「でも、、、」
「私も心配だよ!だけど逃げないとだめ!私の命令は絶対だから!信じて!」
「わかった、ニーナについていく」
「ごめん、邪魔しちゃった。私もついていく」
「ルークはあとで俺が絶対助ける!」
「そろそろダークネスが切れるから、もう一回かけて」
「うん」
ダークネスをかけようとしたシャルが目の前から消えた。
シャルがいたところには、あのオークがいた。
「え?」
次の瞬間、チャールズ兄も目の前からいなくなっていた。
まずい。
「アイアンソーン!」
アイアンソーンは目の前のオークに向かっていき、頭に命中した。
「え?」
アイアンソーンは命中したが、少し傷を与えただけで全く効いていない様子だった。オークの表情が少し変わったように見えた。
オークは目の前から消えた。
その瞬間、私はお腹に痛みを感じた。
私の意識はそこでなくなった。




