123.諸悪の根源
訓練場に着くと、マリーナさんが冒険者を探し始める。
「マリーナさん。ちゃんとした武器でやらせたいので、お願いしますね」
「わかってるわ、問題児を探してるから」
マリーナさんとは気が合いそうだ。
数分待つと、マリーナさんが男3人の冒険者を連れてきた。
「ライルくん。Eランク冒険者パーティ[大鬼の牙]のみなさんが相手をしてくれます。最近この街に来たんですが、ダメな冒険者をお手本にしちゃってるみたいで困ってるのよ」
「早めに矯正しないとですね。じゃあちょっと装備ありでやれるようにしてきますね」
俺は大鬼の牙のところ向かった。
「マリーナさん!僕の仲間の対戦相手はどこですか?強くて優秀な冒険者がいるって聞いたんですけど!!まだ到着してないんですか?」
「そんな失礼なこと言っちゃダメですよ!目の前にいる大鬼の牙のみなさんが対戦相手です」
マリーナさんはノリノリだった。
「えー!この人達ですか?弱そー」
その発言を聞き、大鬼の牙の1人がキレながら言ってきた。
「おい!ガキ!舐めたこと言ったんじゃねーぞ!」
「マリーナさん。こんなやつらと木の武器で戦ったら、ただのお遊びになっちゃいますって!」
「あ?お前らが怪我しないように木の武器でやれって言われたんだよ。テメェらが望むなら本装備でやってやるぞ?」
「本装備が木の装備じゃないんですか?ちゃんとした装備持ってるんですか?持ってるなら本装備でも良いですけど」
「舐めたこと言ってんじゃねーぞ!おい、マリーナ!本装備でやって良いよな?」
「両者が同意なら大丈夫ですけど、、、」
マリーナさんを呼び捨てってことは、副ギルドマスターって知らないのか。
「俺らは平気ですよ、てか本当にこの人達先輩冒険者なんですか?本当に弱そうですよ」
「お前ら!二度と冒険者になりたいって思わなくさせてやるからな」
「では、装備ありで模擬戦を行います!両者準備を!」
大鬼の牙は剣士が2人の弓使いが1人だ。
俺はルーク達の元へ向かった。
「がんばってねみんな!」
「師匠、性格悪すぎ」
「ははは!なんか悪い冒険者の人達らしくて、懲らしめてほしいみたいよ」
「じゃあ僕達もがんばんないと」
「じゃあちょっとだけアドバイスをしておこうか」
俺はルークとシャルとチャールズ兄にアドバイスをした。
みんなの準備ができた。
「マリーナさん、こっちはいつでも!」
「待たせるなガキ!てかテメェは出ないのか?」
「僕はもう冒険者なんで、模擬戦ならいつでも受けますよ」
「こいつら倒して次はお前だ!」
「わかりました、やりましょう」
その様子を見ていたマリーナさんが叫ぶ。
「では模擬戦を開始します!始め!」
「ダークネス!そーれ!」
シャルは相手の視界を奪うと同時に、天獣の槍を弓使いに投げた。
「え?おい!見えねーぞ何も!」
「うぁ、いてぇー」
弓使いの肩に槍が刺さり、痛みで転がっている。
「おい!どうした!」
「わかんねぇけど、肩が、肩が!」
「おい!気を引き締めろ!」
大鬼の牙の視界が戻ってくる。
2人の目の前にはルークとチャールズ兄がいた。
ダークネスの効果中に詰めていたのだ。
1対1の形になった。
シャルはその様子を見ながら、弓使いの弓に槍を投げ続けている。
「うーん。なかなか壊れないなー」
弓使いは肩の痛みと無限に飛んでくる槍にビビり気絶している。
▽ ▽ ▽
「おい、そんなでっかい盾もってびびってんのか?」
「そ、そ、そんなことないです」
「びびってんじゃねーか!そんな盾俺が壊してやるよ!」
相手は剣で攻撃を仕掛けた。
反撃の大楯はその攻撃を弾き、相手は火だるまになった。
「うわ!熱!なんだ!熱い!」
チャールズ兄は火だるまになってる相手を、盾の側面で殴り飛ばした。
ドン!
大楯は相手の身体にめり込み吹き飛ばした。
「すみません。びびったふりをしろって言われたので」
▽ ▽ ▽
ルークは大鬼の牙のリーダーと対面している。
「おまえをさっさと倒して、あの生意気なガキをボコしてやらないとな!」
「僕を倒すの?僕のスキルすごいんだけど勝てる?刀身が50cmも伸びるんだよ?」
「そんな雑魚スキルでいきるな!それくらいのスキル誰でも持ってんだよ!」
リーダーはルークに向かっていく。
それにあわせてルークは剣を振るう。
「伸剣!鞭剣!」
刀身は1.5mの鞭のようになった。
「え?」
向かってくるリーダーに向かって刀身がしなり、身体を何度も斬る。
「くっ!なんだよこれ!」
リーダーは倒れ、気絶した。
「この作戦、本当に効くなー」
その様子を見て、マリーナさんが叫ぶ。
「勝負あり!大鬼の牙が全員戦闘不能。圧倒的大敗のため、ルークとシャルとチャールズを合格とします!」
「おおおおおお!」
野次馬冒険者も盛り上がっていた。
俺はルーク達の元へ行き、
「おつかれ。余裕だったね」
「そうだねー」
「私もっとやりたかったー」
「コボルトナイトの方が強かった」
「あいつらは俺らが子供だから舐めてかかっただけだからね。相手が油断しなかったらもっと大変になったはずだから、調子に乗らずに訓練を続けていこうね」
「「「はい!」」」
俺はみんなに声をかけたあと、マリーナさんのところへ行った。
「じゃあ、次の審判もお願いします」
「次?」
「ニーナ!大鬼の牙を回復させて!」
「はーい!」
ニーナは倒れてる大鬼の牙の元へ向かった。
「ライルくん何を?」
「え?この模擬戦の後に俺と模擬戦するってあのリーダーみたいな人が言ってたでしょ?」
「そんなこと言ってたような」
「だから審判お願いしますね。すぐ終わらせるんで」
「もうわかったわ。大鬼の牙にやる意思があれば認めます」
大鬼の牙は回復し、悔しがっていた。
「くそ!何であんなガキどもに負けんだよ」
俺は大鬼の牙の元へ行く。
「ねー次やるんだろ?」
「え?」
リーダーは驚いた様子で俺を見る。
「あんたが言ったんだぞ?模擬戦の後に俺とも模擬戦やるって!逃げんの?」
「はぁ?やってやるよ!」
「マリーナさん、やるって!」
マリーナさんは呆れた表情で俺を見てくる。
「はぁー。では、大鬼の牙とGランク冒険者ライルの模擬戦を始めます!始め!」
「ライム!」
ライムが巨大化し、大鬼の牙を飲み込んだ。
「身体は溶かしちゃダメだよ!装備と服だけね」
ポニョ!ポニョ!
ライムの中で息ができなくなり、装備も溶けて丸裸になる大鬼の牙。
「まだやる?ダメだ、聞こえてないみたい」
「ライム、顔だけ出して!」
ポニョポニョ!
ライムの体から顔だけ出るシュールな状態になった。
「まだやる?あんた達弱すぎるよ。それに素行がよくないって聞いたぞ?優秀な冒険者紹介するから、その人達見習いなよ」
「うるせぇーよ!クソガキ!」
「誰が見習うかよ!俺らは光剣の輝きに憧れてこの街に来たんだよ!」
「この街に来てみたら光剣の輝きも丸くなってて、俺らが冒険者が舐められないようにしてんだよ!」
「あっ、そういうこと。ライム!また沈めて。気絶する前にまた顔だけ出させて」
ポニョ!
「おい!やめろ!おい!」
ライムの体の中でもがく大鬼の牙。
ポニョ!
また顔だけ出てきた。
「態度改める気ない?」
「う、うるせークソガキ!」
「てか憧れてた光剣の輝きが何で丸くなったか知ってる?」
「は?知ってるよ!」
「鬼みたいな子供の冒険者にボコされたんだったよな」
「ん?その鬼ってもしかして」
「ライム!お願い!」
ポニョ!
俺を鬼と言うなんて、まだ反省してないようだ。
「ライム!俺休んでくるから、何回か続けておいて」
ポニョ!ポニョ!
俺はマリーナさんのところへ行った。
「マリーナさん。あいつらが荒れてる原因って光剣の輝きなんですね」
「まあそうね。今はCランクに降格してから真面目にやってるけど、昔は悪い冒険者のカリスマみたいなところあったからね」
「うーん。とりあえず反省するまで続けておきますね。素行が治るかわかりませんが」
「やりすぎないようにね。それにしても本当にエンペラースライムなのね」
「まあ一応そうですね」
「おーい!ガキ!反省するから助けてくれ!」
遠くから声が聞こえるが無視して、みんなのところに行った。
クララさんがみんなに話している。
「性格悪い戦い方はいいけど、あそこまでになるとただの鬼だからね!真似しないように!」
「「「「はい!」」」」
また俺を鬼扱いしてる。
「クララさんは50日ビール禁止です」
「そんなー!!」
みんなと話していると、野次馬冒険者の中から出てきた人に話しかけられた。
「ライル!」
「あっ!諸悪の根源!」
話しかけてきたのは光剣の輝きのジェイクだった。
「否定はできない。だが今はライルとの約束通り真面目にやっているつもりだ」
「らしいですね。それで何のようですか?」
「いまスライムに飲まれてるあいつらを預からせて欲しい」
「責任は感じてるんですね」
「そうだな。最近、俺らに足りないものがすごくあることに気づいた。光剣の力に溺れ、ランクが上がって調子に乗っていたせいで気付かなかった。あいつらにも俺らが悪い影響を与えてしまっていた。それを正したい。正させてくれ!」
「わかりました」
俺はライムのもとにいった。
「すまない!助けてくれ!反省してる!」
「もう調子に乗らないから、もう沈めないでくれ!」
「本当にすまなかった!」
大鬼の牙は反省しているようだ。
「ライム、吐きだして」
ポニョ!
ベチョ!!
丸裸の大鬼の牙はびちょびちょの状態で地面に吐き出された。
「はぁーはぁーはぁー助かった」
「本当に反省してますから許してください」
「スライムは嫌だ。スライム嫌だ」
「大鬼の牙のみなさん。反省してると口で言っていますが俺は信用してません」
「本当に反省している!!」
「俺もだ!だからこれ以上はやめてくれ」
「スライムは嫌だ。スライムは嫌だ」
「信用してないのですが、ある人があなた達を預かると言ってきました。そのある人のことも信用してないんで、少しでも悪評が聞こえてきたら、ボコしに行きますけど。
その人に預かられて、真面目に冒険者をやると言うなら今回は許しますがどうします?」
「たのむ!それでいい!」
大鬼の牙は懇願してきた。
「じゃあ、ジェイク。あとは任せた。なんか悪評聞いたらお前ごとボコしにいくからな」
「わかってる」
ジェイクは大鬼の牙に話しかけに行った。
俺はみんなの元へ戻った。




