120.アイザックの提案
盗賊を捕まえたせいで、馬車のスピードを落とさざるを得なくなった。
盗賊を轢いた場所は村寄りの場所だったので、
今日中に半分まで距離を進めるため、馬車の後ろに糸で盗賊15名を繋げて走らせた。
体力がやばそうになったら、メディックツリーでしっかり回復させてあげた。
「転んだら引きずったまま進むから、回復欲しい時は自己申告で言ってね」
って言ったのが効いたらしく、運動部のように真面目に走っていた。
カラッカの街まであと半分の距離まで到着したので、そこで野営をすることにした。
飯は作り置きのハンバーグとクリーミーカウの野菜炒めだ。
美味しい匂いがしたせいで、盗賊が騒ぎ出したが完全に無視をした。
みんなが寝たのを確認して盗賊を叩き起こし、ゆっくりだが少し距離を稼いだ。
馬車は全く揺れないので、移動しても中で寝ているみんなは気づかなかった。
▽ ▽ ▽
カラッカの街には昼過ぎに到着した。
フリードが本気で走れば、丸一日あれば到着するだろう。
街の門でステータスプレートを見せた。
門兵の対応と盗賊の受け渡しはクララさんがやってくれた。
クララさんから盗賊の捕縛のお金をもらった。
「はーい!また捕まえちゃったねー」
街に入り、商人ギルドを目指した。
▽ ▽ ▽
商人ギルドに入り、受付の人に話しかけた。
「どのようなご用件でしょうか?」
「アイザックさんいますか?」
「お約束はされていますでしょうか?」
「街に来たら、来て欲しいとは言われましたが」
「わかりました。アイザックは多忙なため、数時間お待ちいただく可能性があります」
「え?そんなにですか?」
「申し訳ありません」
なんか、厄介払いしようとしてる感じするなー。
「これ持ってるんですけど、何か変わりますか?」
以前襲撃を受けたときに商人ギルドマスターから渡された銀色の輪を見せた。
「た、大変申し訳ありません!A1の部屋でお待ちください!」
やっぱりな。客がいっぱいくるから、受付で選別してるんだろうな。
しょうがないんだろうけど、気に食わないよな。
一度馬車に戻り、ゴーレにA1の部屋に馬車を回すよう頼んだ。
俺はギルドの中からA1の部屋に向かった。
▽ ▽ ▽
数分待つと、アイザックさんが部屋に来た。
「お待たせしました」
「待ってないですよ、アイザック様」
「もーやめてくださいよー」
「ははは!すみません。ちょっとこのやりとりハマってます」
「ライルさん、怒りますよ!」
「すみません」
アイザックさんとは本当に仲良くなった気がする。
「宿を紹介して欲しいのですが」
「宿ですね。うーん。ライルさんにご相談というか提案があるんですが」
「なんでしょう?」
「ライルさんとライルさんと関わってる方々の中に『テイム』を取得している方が数名いらっしゃいますよね?」
「そうですね」
「今後、街に来るたびに厩舎がある宿を確実に使用できるとは限りません。なので、街のちょっと外れの土地を買いませんか?」
「は?」
「ライルさんのスキルを使えば、ライルさん達もテイムモンスターもストレスを感じない環境が作れると思うんです」
「なるほど、お値段と広さはどれくらいですか?」
「先日村で泊まらせていただいた区画の2倍くらいの広さで大金貨4枚ですね。街の中心ではないので、だいぶ安くなっています」
「わかりました。買います!」
「よかったです。いい選択をしたと思います。街の中心から少し離れていますが、治安も良い地区です。代金は次回の納品から差し引きます。契約もこの場でできます。資料を作ってきますのでちょっとだけお待ちください」
アイザックさんは部屋から出ていった。
「前回の売り上げが良すぎて、金銭感覚鈍ってるのかもしれない。まあアイザックさんの提案は間違ってないと思うから、乗れるときに乗っておかないとな」




