119.盗賊を轢く
「みんな準備出来たか?」
「「「「はい!」」」」
「じゃあ出発!」
俺らは馬車に乗り込み、街に向かった。
昨日は1日中、ゴーレと一緒にマジックサンドバッグで稽古していた。
2人ともだいぶハマってしまった。
今回の街遠征は、フリードが本気を出したらどれだけ早く着くかを試したかったので、馬車に乗れないグーちゃんだけ村でお留守番だ。
ノコも流石にフリードの本気にはついてこられないので、今回は馬車の中にいる。
「相当スピード出してるはずなのに、全然揺れないな」
「この馬車本当すごーーい!」
クララさんもびっくりしている。
ポニョポニョ!
ライムは楽しそうに飛んでいる。
「チャールズ兄とルークとシャルは冒険者登録するんで良いんだよね?」
「「「する!」」」
「チャールズ兄はエクストラスキルが戦闘向けじゃないから、試験を受けることになるけど平気?」
「大丈夫だと思う」
ちょっと不安そうなチャールズ兄。
「え?僕も試験受けるよ」
「私も!カシム兄も受ける必要ないのに、受けたんでしょ?」
「ライル師匠とニーナが受けるってことになったからな!」
「じゃあ私達もチャールズ兄と一緒に受ける」
「そうする!」
「2人ともありがとう」
チャールズ兄の不安が少し消えたようだ。
「まあ戦闘には参加できないけど、アドバイスはするよ」
「「「ありがとう!」」」
ドン!ドン!ドン!
馬車が急に止まった。
俺は馬車から降り、ゴーレに聞いた。
「どうした?」
「盗賊が道を塞いでいたので、轢きました」
ヒヒーーン!
目の前には気絶している盗賊が10人ほどいた。
「また?盗賊そんなにいるのかよ。シモン、拘束して」
チチチチ!!
シモンは魔糸で気絶してる盗賊を縛り上げた。
「ゴーレ、一番偉そうなやつ起こしてアジトの居場所吐かせて」
「了解致しました」
ゴーレは手のひらから水を出し、一番装備が良さそうな盗賊に掛け続けた。
俺は馬車に戻り、みんなに言う。
「盗賊のアジトに行って殲滅するけど、ついてくる人いる?時間使いたくないから先着2名!」
「「はい」」
手を挙げるのが早かったのはルークとニーナだった。
「よし、2人以外は馬車待機」
「くそー反応が遅れた!」
「初めての街が楽しみすぎて、気が緩んでたよ」
カシムとシャルは悔しそうにしてた。
馬車からルークとニーナが降り、俺についてきた。
「吐いた?」
「吐きました。そう遠くありません」
「フリードとキリーとライムはこの盗賊見張ってて。ゴーレとノコとシモンとラーちゃんはついてきて」
俺らは盗賊のアジトに向かった。
▽ ▽ ▽
「あそこです」
森の中に小屋があった。見張りは2人。
「なんでこんなとこに小屋があるのに見つからないんだろうね?」
「そうですね、違和感でしかないですね」
「とりあえず、ルークとニーナは見張りを倒して、ノコとラーちゃんは逃げようとしてるやつを捕まえて。絶対殺しちゃダメだからね」
「「はい!」」
「ルーク。面白い作戦があるからやってみて。これ成功したら、試験で使えるかもだから」
そう言って俺はルークに耳打ちをした。
ニーナとルークは見張りに向かって走っていった。
「ストーンボール!ストーンボール!」
石の球が見張りに当たる。
「なんだこのガキ!」
「舐めたことしやがって」
見張りはニーナとルークに気を取られている。
「よし、気を取られてるうちに」
俺は急いで小屋に近づき、小屋に手のひらを当てる。
「エアショット!エアショット!エアショット!」
エアショットで小屋を吹き飛ばしていく。
小屋の中にいた盗賊3人は気絶している。
「シモン縛っといて」
俺は小屋の中を探ることにした。
▽ ▽ ▽
小屋が破壊された瞬間、見張りをしていた盗賊は驚いていた。
「は?アジトが壊れた?」
ニーナはそんなことでは動揺しなかった。
「盗賊さん、捕まってもらいます!」
「クソガキ!テメェをボコして奴隷商に売ってやるよ」
剣を持った盗賊は、ニーナに向かって走ってきた。
「アイアンソーン!」
ニーナの手のひらから太い荊が1本出てきた。
そのイバラは目の前の盗賊に巻きついた。
「なんだよこれ!いてぇよ!はずせ!痛ぇから!」
「降参しますか?」
「するか!クソガキ!痛ぇ!締め付けるな!痛ぇ!」
「降参しますか?」
「わかったよ!するよ!」
ニーナはアイアンソーンを解除した。
その瞬間、盗賊は剣を振りかぶってニーナに攻撃をしようとした。
「アクアボール」
ニーナはアクアボールで盗賊の鼻と口を塞いだ。
「うわ!あ!あ!」
盗賊はもがいて気絶した。
▽ ▽ ▽
「おい!クソガキ。よくも小屋を壊してくれたな!」
「壊したのは僕じゃないけど?」
「うるせぇクソガキ!テメェを殺した後、他の奴らも皆殺しにしてやる!」
ルークは剣を構えた。
「僕のスキルは刀身を50cmも伸ばせるんだ。リーチが圧倒的に勝ってる僕が負けるわけないよ!」
「言ってろ!クソガキ!」
盗賊は剣で攻撃してくる。
ルークはそれを捌く。
「まあまあ剣は使えるようだなクソガキ!」
ルークは剣を横振りしながら叫ぶ。
「伸剣!」
刀身は50cm伸びた。
しかし、盗賊にはギリギリ当たらない。
「お前のスキルでは届かなかったな!世界にはもっとすごいスキルを持ってるやつがいるんだよ雑魚!」
「くそ!もう一回だ!」
ルークは再度剣を横振りしながら叫ぶ。
「伸剣!」
刀身は50cm伸びた。
「届かねぇーんだよ!雑魚!」
ルークは剣の向きを変え、上に振り上げた。
「伸剣!」
刀身は1.5m伸び、盗賊の腕を斬り飛ばした。
「痛ぇー!お前、騙したな!」
盗賊は痛みで動けなくなっていた。
「ニーナ。この盗賊が気絶したらメディックツリーで腕をつけてあげて」
「わかったー!」
▽ ▽ ▽
小屋の中を探索していると、金貨数十枚と、印がついた地図があった。
「良さそうなものはないなー。でも一応回収しとくか」
俺はカバンに金貨と地図を入れた。
「師匠、終わったよー」
「全員捕まえたよー」
ニーナとルークは見張りをしっかり捕まえていた。
「小屋の中の3人と見張りの2人だけか」
ジジジジジジ!
キューキュー!
逃げた奴もいなかったようだ。
「こいつら連れて馬車に戻ろう」
「「はい!」」
俺らは盗賊を連れて馬車に戻った。




