115.ライルの修行①
朝になった。
ゴーレもフリードもノコ虫軍もいないのは、少し寂しさを感じた。
「俺も特訓しないとな、どうやってするか。ステータスが上がらなくなっているからな。やることは、新しいスキルの獲得とスキルレベルを上げることだな。無属性魔法も使い方が全然わからないからな」
俺は学び舎に行き、ヒューズさんに頼んだ。
「ヒューズさん。夕飯後に短剣の稽古してくれませんか?」
「構わないがどうした?」
「ゴーレ達が修行に出てしまって、俺もレベルが30になったら上がらなくなっちゃって」
「お前30レベルなのか?5歳で30レベルって聞いたことないぞ。その歳でその壁に来るとはな」
「え?原因わかるんですか?」
「人によって変わるが、レベルを上げていると何回か壁が現れるんだ。例えば、今までならゴブリン20匹でレベルアップしてたのに、壁を越えるには2,000匹倒さないといけない!みたいな壁があるんだ」
「え!そんなのが?」
「俺は既に4回あった。25・50・60・100レベルに上がる時だ。なかなかその壁が越えられないで一生を過ごす奴もいる。年齢が上がればステータスも少し上がるから、壁を乗り越えなくても生きてはいけるからな」
「なるほど。そうしたら俺はとにかくモンスターを倒せってことですね」
「そうだな。レベルが上がる可能性がわかったから、短剣を学ぶのはやめるか?」
「いや、やります。出来れば暗殺術とかに近い技術がいいです」
「それならクララだな」
「では夕飯後、ヒューズさんに短剣の扱い方、クララさんに暗殺術を教わる方向でお願いします」
「おう!クララに伝えとく」
「よろしくお願いします!」
俺は学び舎を後にし、厩舎に向かった。
▽ ▽ ▽
厩舎にいる、グーちゃんとラーちゃんに模擬戦をお願いした。
目標は、無属性魔法を覚えることだ。
レアな属性のせいで、おとぎ話のような情報しかない。
リリアンさんから聞いたのは、太古の魔術師が無属性魔法で時を止めたという話。
ガッツさんから聞いたのは、無属性魔法にはどんなものでも欲しい物が出せる魔法があるっていう話。
アイザックさんから聞いたのは、100年以上前、英雄と呼ばれていた人が無属性魔法の使い手で、その英雄は空を飛んだという御伽話。
パリスさんから聞いたのは、魔王が無属性魔法の使い手で、部下のモンスターを身体に宿し、そのモンスターの力を使ったという子供に人気のお伽話。
ヒューズさんから聞いたのは、伝説の鍛冶師は想像で剣を作り、それを手から出したという話。
セフィーナさんから聞いたのは、一瞬にして場所を移動する魔法使いがいたって話。
「どれも怪しいもんだよな。とりあえずグーちゃんとラーちゃんと無属性魔法を使うイメージで模擬戦をしてみよう」
グォーーー!!
キューキュー!
「じゃあよろしくね。よーい始め!」
▽ ▽ ▽
俺は気付くと、身体にメディックツリーの葉を巻かれてニーナの膝枕で横になっていた。
「あれ?なんで学び舎にいるんだ?」
「グーちゃんとラーちゃんが運んできてくれたんだよ。頭から血を流しててびっくりしたんだから!」
「あっ!そうか、グーちゃんとラーちゃんと模擬戦をしてて、グーちゃんの石拳を避け切れなくてモロに食らったんだった」
俺は起き上がると、学び舎の庭から心配そうに見ているグーちゃんとラーちゃんを見つけた。
「ごめん。グーちゃん、ラーちゃん。心配させちゃったね。でもほら、全然大丈夫だから」
グォーー!
キューキュー!
2人とも少し安心した表情になった気がした。
「よし、もう一回お願いできる?」
「ダメ!!!」
「え?」
「ライルくん!また怪我するよ!」
「大丈夫だって」
「ダメ!ラーちゃん、スロウ!」
俺の動きが遅くなった。
「ニーナ何するんだ!」
「ヒューズさんから聞きました。夜に稽古をすることは。それはやっていいです。だけどそれまで安静にしてください。ラーちゃん、ずっとスロウかけ続けて。私は授業に戻るから」
キュー!
「おい、待ってくれニーナ!!」
ニーナは授業に戻っていった。
「クッソ!こんなに身体を動かすの遅くなるのかよ。コボルトナイトだってもうちょっとまともに動けてたぞ」
俺は必死に身体を動かそうとしているがやはり遅い。
「ラーちゃん!スロウ解いてくれない?」
キューキュ!
ラーちゃんは首を横に振った。
「ですよねー」
俺は諦めて横になることにした。
▽ ▽ ▽
午後の授業が終わるまでスロウをしっかりかけられていた。
「ニーナ?そろそろ解くように言ってもらえる?」
「ちゃんと体調良くなった?」
「なったなった。だから頼む」
「わかった。ラーちゃん、スロウはもうしなくていいからね」
俺はやっとスロウから解放された。
「今度から怪我するようなことしないでね。ライルくんが怪我したらみんな心配するんだから」
「ごめん!わかったよ」
俺はヒューズさんのところに向かった。
「ヒューズさん。夕飯食い終わったら、学び舎の庭集合でお願いします」
「わかった。食ったらすぐ行くわ」
「お願いします」
「よし。短剣と暗殺術の訓練がんばるかー」
俺は食事を済ませて、ヒューズさんとクララさんを待った。




