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103.視察③

学び舎に入るとお昼休憩を取っていた。

「みんなお疲れさま。商人ギルドのアイザックさんと妹のセフィーナさんだよ、挨拶して」

「「「「「こんにちは!」」」」」

「こんにちは、午後の授業を見学しに来たアイザックです」

アイザックさんは子供の扱いもうまいようだ。

しっかり聞き取れるようにゆっくり話してあげている。


「「セフィーナちゃん!!」」

「「こっちで話そう!」」

昨日一緒に追いかけっこをしたせいか、セフィーナさんは人気者になっていた。


「あれ?なんでセフィーナが?」

「昨日、みんなと簡単な身体を動かすトレーニングをしたんです。その後もみんなといろいろ話してたみたいですよ」

「あーなるほど、ほんとに昨日の自分を恨みますね」

アイザックさんはとても悔やんでいた。


「アイザックさん以上に悔やんでる人がいるんで、昼休憩の間その人達の話でも聞いてみてください。おーい!お酒で悔やんだ3人組!」

「ライル、もうやめろ。許してくれたんだろ!」

「ははは!みなさんの悔やんだ顔が忘れられなくて」

「ほんとに性格悪いやつだな」

ヒューズさんは笑いながら言う。


「ちょっと軽食作ってくるので、学び舎でやってることをアイザックさんに話してください」

「わかったよ。俺は苦手だからリリアン頼む!」

「わかったわよ。てかアイザックさんって…」

「リリアンさん!!!初めまして!!!!アイザックと申します!ただのアイザックです!!」

「あれ?アイザックさんって…」

「クララ!黙って!」

「うーーーー」

クララさんはなぜか怒られふてくされていた。


「お願いしましたよ!」

俺はキッチンに向かった。

するとチャールズ兄が近づいてきた。

「手伝う?」

「じゃあジャガイモの皮を剥いてもらおうかな」

「はーい」


皮剥きをチャールズ兄に頼んでいる間に、鍋に油をいれて温める。

「あとは何すればいい?」

俺は実際にやりながら説明した。

「こういう風に細く長く切って」

「わかった」

そういうとテキパキ作業を進めていく。

チャールズ兄は『料理』を取得してから、作業がとても早くなった。

「できたよー!」

「そしたら、これを油に入れます。いい色になったら、油から出す。これだけ!」

「それだけ?」

「そう。じゃあやってみよう」


カットしたジャガイモを油に投入した。

「これで待つだけだよ」

「簡単」

「それに美味しいからね。期待しといて」

「師匠、そろそろ油から出したほうがいいかも」

チャールズ兄は何かに気づいたように言った。


「早くないかな?色もそんなに変わってないし」

「いや、今ジャガイモの声が聞こえた気がしたんだよね」

「ん?じゃあ出すか」

チャールズ兄のエクストラスキルがもしかしたら料理に使える可能性を感じられて驚いた。


「本当にちょうどいいな。このポテトに塩をかけて完成!」

「え?早いね。味見してもいい?」

「どうぞ」

チャールズ兄は一口食べた。

サクッといい音が鳴る。

「うまい!師匠、これうますぎ!」

「よかった。これチャールズ兄の分ね。みんなで分けて」

「ありがとう」

俺はポテトをアイザックさん達がいるところに持っていった。


「お待たせしました。フライドポテトです」

「また新作か?食べていいか?」

「まずはお客様のアイザックさんどうぞ。手でいっちゃってください」

アイザックさんはフライドポテトをつまみ、口に入れた。

「サクサクでホクホクですよ。これはジャガイモですか?」

「ジャガイモを揚げたものですよ」

「ほんとライルさんはすごい」


そんなアイザックの様子を見て、疾風の斧が口を開く。

「アイザックさん。こいつと付き合っていくとすごいことがたくさん起きる、最初は驚いたり感心したりするけど、その心を忘れるな。慣れすぎると呆れることしかできなくなるからな」

「そうね、驚きはするけど呆れが強いわね」

「ほんと!ほんと!」


俺は少しイラっとした。

「疾風の斧のみなさんはフライドポテトいらないですね。午後の授業は内容を変えて、うちのオールスターと疾風の斧の模擬戦にします?勝てるとは思ってないですけど、死ぬ覚悟で全ての装備を破壊する作戦にしますけど」


疾風の斧は焦り始めた。

「「「すみませんでした」」」

「本当に言い方考えてくださいよ。とりあえず模擬戦はなしで、フライドポテトもなしで手を打ちます」

「「「はい…」」」


アイザックさんは笑いながら言った。

「みなさん仲良くていいですね」

「仲良いといいますか、疾風の斧は僕が雇ってる形ですが、この村がここまで変われたのは疾風の斧がいてくれたからなんで、まあ家族みたいに思ってますよ」

「いい関係ですね」

それを聞いていた疾風の斧は少し照れているようだ。



「お兄様!食べましたか?フライドポテト!すごく美味しいんですよ」

セフィーナさんが興奮気味にやってきた。

「こらセフィーナ。はしたないぞ。せっかくライルさんと疾風の斧の素晴らしい話を聞いていたのに」

「え!お兄様。もしかして昨日の模擬戦の話を聞いたのですか?」

「模擬戦?」

「そんな大したことではないんで、お気になさらず」

「いえ、凄かったですわ。酔っ払ってここで寝てしまっていた疾風の斧と雷虎の拳を縛り吊るし、罰として素手で子供チームとヒューズ様とガッツ様が模擬戦をすることになり、結果は負けてしまいましたが、良策奇策さまざまな作戦でヒューズ様とガッツ様を追い詰めていくライル様はとてもかっこよかったですわ。ライル様への憧れと同時にとても恐怖でしたの、なぜならお酒を飲んで寝坊しているお兄様も同じ罰を受けるんじゃないかととてもハラハラしたんですよ」

「セフィーナ?ライルさん達がヒューズさんとガッツさんを追い詰めたの?」

「はい。前半はヒューズ様とガッツ様は防戦一方でした」

「ら、ライルさん?も、もしかしてここにきた理由って、も、模擬戦を私とするつもりで来ましたか?」

「やりませんよ!疾風の斧に厳しくしたのは、うちの村の子供達がみんなこの3人に憧れてるからです。憧れの対象が、昼過ぎまで寝坊するなんてありえないでしょ。だから死ぬ気覚悟で罰を与えました。負けちゃいましたけどね」

「「「本当に面目ないです」」」

疾風の斧が頭を下げた。

「なんか色々私にも刺さってしまいました。私も気を引き締めないと」

アイザックはライルを失望させないと心に決めた。



「さあ、そろそろ午後の授業ですよ」



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