100.模擬戦
子供達を集め、作戦会議を始めた。
子供チームは
俺・ニーナ・カシム・シャル・ルーク・チャールズ兄・ジョシュ・ララ
ベラは動くのが苦手で、魔法も覚えてないので今回は見学だ。
ベラをゾーイとルーシーに預けた。
さすがにセフィーナさんも参加させるわけにはいかないので見学してもらうことにした。
「みんな、ヒューズさんもガッツさんもとっても強いからたぶん負けるだろう。だけど、今まで鍛えてもらった成果をしっかり師匠達に見せよう!」
「「「「はい!」」」」
みんなに気合を入れさせた。
「ルークとシャルとチャールズ兄は小盾と武器を持ってがつがつ攻めてくれ」
「「「了解」」」
「ニーナは回復と魔法で遠距離から全体を見て。カシムは賭博師の弓をフルに使え」
「「はい!」」
「ジョシュとララはこの木の槌を使ってくれ。2人が勝負の要だ」
「「はい!」」
「じゃあ作戦を伝える。みんな集まって」
「「「「はい」」」」
正面からだとすぐに負けるのが目に見えていたので、小賢しい作戦をみんなに伝えた。
▽ ▽ ▽
「ヒューズさんガッツさんお待たせしました」
「よし。全力でいいんだな?」
「治る怪我なら大丈夫です。僕らの実力を把握したいので全力でお願いします」
「わかった」
「リリアンさん、開始の合図お願いします」
「わかったわ!準備はいい?」
「はい」「おう」
「では、始め!」
開始と同時にニーナが叫んだ。
「ファイアウォール!ファイアウォール!ファイアウォール!」
ヒューズとガッツの目の前に炎の壁が現れた。
ヒューズさんは叫んだ。
「そんなことしたら、お前らも近づけなくなるぞ!」
ニーナはそれを無視して、また魔法を飛ばした。
「アクアボール!アクアボール!アクアボール!アクアボール!」
アクアボールがファイアウォールを消し、水蒸気が大量に発生した。
「ライルの野郎、目眩しとか小癪なんだよ。お前らも見えないから意味ないだろ!」
ボゴッ!!
「「いってぇー!」」
水蒸気で視界が悪い中、ジョシュとララは獣人特有の嗅覚で2人のところに走っていき、槌で脛を思い切り殴った。
シャルとルークとチャールズ兄もジョシュとララを追いかけてヒューズとガッツに小盾でタックルをし、2人を倒した。
その瞬間ルークが叫ぶ。
「ライル!今!」
タックルした3人がヒューズとガッツから離れる。
水蒸気が晴れてく、ヒューズとガッツの姿がぼんやり見えてくる。
「エアショット!エアショット!エアショット!エアショット!」
2発ずつ風の塊が飛んでいく。
間髪入れずにカシムも攻撃を仕掛ける。
「インクリーシングアロー!インクリーシングアロー」
矢が増え2本ずつ飛んでいく。
体勢を立て直したヒューズとガッツは飛んできた風の塊を腕で弾く。
「ヒューズ、いってぇぞこれ!」
「あいつ、魔法の威力も異常なんだよ!」
2人とも腕から血が出ていた。
飛んでくるカシムの矢を2人とも掴んだ。
バァーン
ガッツが掴んだ矢が爆発した。
「痛過ぎるぞ。ほんとになんて奴らだ!」
「悪い、俺が育てた。矢は掴んだ方がいい。刺さると眠ったり毒食らったりすることもある」
「めんどくせーけど了解だ」
俺は攻撃の手を止めなかった。
「エアショット!エアショット!ニーナ、もう一回」
「はい。ファイアウォール!ファイアウォール!」
ヒューズとガッツはまたエアショットを弾く。
「おい!俺の腕が若干えぐれてるぞ!いってぇー!」
「腹に食らうなよ、流石にノックダウンするから」
「しかしまたファイアウォールか」
「じゃあジョシュとララがまた脚を狙いにくるな。ライル!!残念ながら同じ攻撃は効かないぞ」
「本当ですか?」
「アクアボール!アクアボール!アクアボール!」
水蒸気が発生し、ジョシュとララが走って行く。
2人はガッツの両サイドを通過して行った。
「あれ?来ないぞ?」
「流石に警戒してたら攻撃はしてこないか」
2人は後ろからガッツの両サイドを再度走り抜けた。
「ん?何がしたいんだ?」
「ライルのことだから陽動だよ」
「エアーアーム!いくぞ、せーの!」
ライルの掛け声をかけると、ガッツの足元で「ギュッ」と音が鳴り、ガッツは倒れて引き摺られていた。
ガッツの足にはシモンの糸が巻き付けられていた。
「よし。チャールズ兄達はガッツさんをそのまま倒して!ヒューズさんは俺とニーナとカシムでいくよ!」
「「「「「了解」」」」」
水蒸気が晴れるとニヤついてるヒューズさん。
「ライル。お前はほんとに面白い戦い方をするな!」
ヒューズがライルに突っ込んでくる。
「アイアンソーン!」
突っ込んでくるヒューズとライルの間にアイアンソーンが現れ、荊がヒューズに向かって行く。
「これは流石に直接受けられないな」
ヒューズは荊をギリギリで避けて突っ込んでくる。
「エアアーム!」「インクリーシングアロー」
エアアームがヒューズを掴む。
動けなくなったヒューズに矢が飛んで行く。
ヒューズは首を傾け、矢を避ける。
「カシム!なかなか上手くなったが、まだ俺には当てられないぞ」
ヒューズは力でエアアームをこじ開け破壊した。
「ライル!てめぇは筋力つけろ!」
そのままライルに向かい走っていき腹を殴る。
「くっ!いってぇ。まあこうなりますよね」
ライルはしゃがんでいるところを蹴られて飛ばされる。
ヒューズは蹴り飛ばすとすぐにカシムに向かって走って行く。
カシムが焦って矢を放つが、ヒューズには当たらず。腹を殴られて倒れた。
先ほどまで拘束していたガッツも、全員をすでに倒し終わっていた。
ヒューズはニーナに近づき、拳を向けた。
「リリアン!」
「勝負アリ!ヒューズガッツチームの勝利!」
▽ ▽ ▽
俺達は模擬戦に負け、ニーナに回復してもらっている。
「おい、ライル!えげつないぞ作戦が」
「ほんとだよ。お前ら戦いにくいぞ」
ヒューズさんとガッツさんがあきれた表情で近づいてきた。
「いや2人には真っ正面からじゃ絶対勝てないんで、小賢しい真似をしました」
「いやでも、ゴーレさんとかフリードいたらやばかったわ。フルメンバーじゃ装備ないと無理だな」
「あーギルドで見た奴らか。あれは素手では無理だな」
「まあ、これで今日の失態は許してあげますよ。さあさあ、みんなにアドバイスあげてください」
「ライル、威厳を保てるように機会を作ってくれてありがとな。ちょっと気を引き締めるわ」
「そうしてください。早くアドバイスしてあげてくださいよ。みんなウズウズしてますから。ガッツさんもですよ」
「俺も?」
「接近戦メンバーは優位な状況だったのにも拘らず、ガッツさんにやられたんですから」
「わかったよ」
ヒューズさんとガッツさんは子供チームのところに行った。
「リリアンさん、クララさんどうでした?」
「いや、なんかすごいの見てしまったわ。あの2人が子供に一瞬でも本気出すなんて」
「やばかったよーすごかった!」
「2人にそう言ってもらえると頑張った甲斐がありましたよ。2人も弟子達にアドバイスあげに行ってください」
「そうするわ。ありがとねライル君」
「いってくるー!」
僕はゾーイ達のもとへ行った。
「すみません。負けちゃいましたー」
するとゾーイとルーシーが
「ライル様!私感動しました」
「私もです!」
「ありがとうございます。2人にも護身用に稽古受けてもらいますからね」
「「はい!」」
セフィーナさんがなぜかおびえてるような表情でこっちを見ていた。
「セフィーナさんもすみません。待たせてしまいましたね」
「あ、あの、ライル様」
「はい?どうしました?」
「お、お、お兄様と、も、も、模擬戦だけはやめてあげてください。グリモスの代わりで仕事が増えて、村に来るまでほとんど休みがなかったのです。まだ起きてこないお兄様をお許しください」
「ははは!大丈夫ですから。お疲れなのは昨日食事の時になんとなく感じましたし。視察という名の旅行としてお誘いしたので」
「ありがとうございます」
「もしかしたら、今日は起きてこないかもですね。ぐっすり寝てもらいましょう」
「はい!ありがとうございます」
アイザックさん以外のメンバーは学び舎で夕飯を食べ、お酒もほどほどにして家へ帰った。




