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一人の猟師

カクヨムにて連載していたミステリーです。

『君はただ眼で見るだけで、観察ということをしない。見るのと観察するのでは大違いなんだ』


–––– シャーロック・ホームズ



――――――――――――――





「はあ……はあ」

 吹きすさぶ吹雪の中、荒い息遣いとともに猟銃を携えた猟師がふらつきながらも歩いていた。

 顔には絶え間なく雪が吹きつけ、体から体温を奪っていく。

 

 しかし、この肉体的にも精神的にも極限的かつ危機的な状況で猟師は笑みを浮かべていた。まるで、相対する危機に向かって面白いと挑戦するように。天気予報を見て大雪が降ることは百も承知。雨の中、ぬかるみに足を取られ崖から滑落したことさえある。この程度、今まで潜った修羅場に比べればどうということはない。


 そのまま白い雪を踏みしめながら歩を進めていると「ザッ……ザッ……」と前方から雪を踏みしめる音を猟師は聞いた。その音は徐々に近づいてくる。

「人がいるはずがない。熊か?」と猟師は思考を警戒体制に切り替えながらかじかんだ手で銃を握る。こういった場面に出くわすのは初めてではなかったが、雪の中だといささか分が悪い。猟銃をいつでも打てるように撃鉄を起こし、目を凝らす。そして吹雪の白いカーテンの向こう側で何かの影が蠢くのをはっきりと視認した。


 そこまではよかった。だが、最後までその猟銃が火を噴くことはなかったのだ。引き金にかけられた指は、かじかんで震えているが、その引き金は、目の前に迫っているはずの脅威を排除しようという意志を持って引かれることは永遠に無かった。


「……え?」

 

 それどころか猟師は自分の目を疑った。こんなはずがないと。



 そして、次の瞬間。猟師の鍛えられたはずの体躯はいとも簡単に折れ曲がるともにその意識は永遠の停滞へと沈んでいった。

 

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