表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

ファーストコンタクト

訪問ありがとうございます。

 昼前、デスクワーク中また課長が余分な書類を寄越(よこ)した。直接パワハラができない時代だから、間接攻撃だ。あーっ、ムシャクシャする。


◇◇◇


 昼休憩。職場の洋式トイレに潜み、SNSで愚痴(ぐち)ろうと立ち上げたら炎上している。犯人は同僚だ、捨てアカ使わずに堂々と!


 どうしようもない絶望にさいなまれ、

『ネット 炎上 仕返し』 で検索をかけた。


 『火気子さん』という単語が妙に気になったので、サイトをタップ。


 そこに書かれていたのは、都市伝説の類い。


 『火気子さんは念縛霊(ねんばくれい)。彼女を召喚する方法はーー。


 燃やしたい相手へ強い憎悪を込めながら、「火気子さんお願いします」と念じる。』


 本当だろうか、完全に都市伝説の類いだ。


 しかし、冗談だとしても面白そうだ。早速課長へ憎悪を込める。


 余分な書類を寄越しやがって!


 聞こえるように悪口言うなよ!


 部下を利用して嫌がらせするな!


 ありったけの恨みを込めたら、早速(火気子さんお願いします)と念じてみる。


 嘘だとしても少しスッキリした。洋式トイレから出て、わざと遅い足取りでオフィスへ戻る。


 するとーー。男の叫喚(きょうかん)・女の絶叫、怯え震える同僚たち。課長が人体発火を起こしていたのだ。猛り狂う炎は、まるで課長を憎いとばかりにまとわりついて紅蓮に燃え盛る。


 ついに課長は炭と化した。OLが呼んでも返事がない、ただの消し炭のようだ。


 ほんとに、ほんとの都市伝説なんて実在したのか! ふっ、ふふふふふっ…。火気子さんさえいれば、俺は無敵だっ!


 次は、炎上させた同僚どもを燃やしてやれっ!


 炎上させやがって! 自分らは課長に気に入られたかったのか!?


 心に溜め込んだ憎悪の炎をたぎらせてから、念じた。


 (火気子さんお願いします!)


 目論見(もくろむ)通り、同僚たちは地獄の業火(ごうか)と形容できるほどの灼熱に覆われた。


 OLが必死に消火器をぶちまけるが一切効果がなく、猛る炎。


 やがて、同僚たちは消し炭となりその場に崩れ去った。


 やった…。


 まてよ、このまま邪魔な人間を駆逐(くちく)していけば昇進も間違いないのではないだろうか?


 俺が会社、いや世界に煉獄(れんごく)の制裁を加える者として君臨してやるよ! なんなら、『煉獄さん』と呼んでくれても構わないけどな!


 この日を皮切りに、俺は気に入らない人間を次から次へと火葬してやった。


 時には社宅から出火、アパート全焼などあらゆるところで猛火が暴れまわった。


◇◇◇


 俺が火気子さんを知ってから、1ヶ月が経った。


 街中は出火が当たり前になり、退廃(たいはい)している。すべて火気子さんの仕業だけど。常に焦げ臭さが鼻孔を突く。

 ついに、ここもゴーストタウンになったな。俺をディスる者はおろか、人影すらないし。


 噴煙で(かす)む街を、俺は一人歩く。敵がいなくなって喜んでいる反面、悲しくもある。俺には敵が多かったんだと。昇進以前に、みんなから嫌われていたんだと。


 会社も灰塵(かいじん)と化し、暇になった俺は孤独にも家路に着く。


 俺の足取りは重いのに、背後から妙に軽快な足音がする。誰かいるのか?


 振り替えるも、噴煙でよく見えない。確かに、街の嫌いな住民は燃やしたはずだ。それ以外も恐れて逃げた。だから誰かいるはずがない。


 少し寂しさに囚われていたせいだと、たいして気にせず歩き出す。


 まてよ、これは気のせいじゃない。歩き出してすぐに、ヒタヒタと何者かが着いてきている。恐る恐る振り返っても、噴煙で見えない。逃げ遅れた者か?


 いや、何十人も焼殺しているんだ。今さら情などわかない。


 家路を急ぐと、また足音がする。明らかに誰かが俺を着けているな。


 いつの間にか、前と左右からも。噴煙で見えないのに、何者かたちの足音は容赦(ようしゃ)なく近づいている。


 俺が燃やした奴らか? 何か言いたそうに、うめきながら歩み寄ってくる。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ