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原初の星  作者: 煌煌
第十九話 見えた背中と霞む背中
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もう一歩

 久し振りの完全な一対一。しかも今回は本気のフレアさんが相手。真剣な眼差しから迸る闘気。彼自身を表すような熱の中で、僕らの戦いの幕が開ける。


「では。行きます」


 フレアさんが踏み込んだ衝撃で土が舞う。一歩毎に増す勢い。火の玉が飛んでくるかのように感じる。僕の前まで迫ると、風を裂きつつ繰り出される水平斬り。舞い上がる土の量も、迫り来る剣圧も、今までとは段違い。

 なのに見える。体の速度はまだ追い付かないが、目で追える限り何らかの対処は可能。

 フレアさんの勢いだと風刃剣では止められそうにない。硬い素材が必要。


「ちゃんと反応されるとは。やはり昨日とは別人のように進化していますね」


 フレアさんが剣を引く。正面からぶつかれば、鉄剣ではアダマントに敵わないと踏んだのだろう。しかし、僕だってタダでは逃がさない。追撃を仕掛けようと突きを繰り出す。

 空中のフレアさんが剣で防御。当然崩れる鉄の塊。けれど彼は体に触れる直前で着地、右へ跳んで回避。壁際まで走り、代えの剣に持ち替えた。スポーツであれば剣を砕いた僕の勝利かもしれない。けれど戦闘能力の向上を目的にしているのだから、相手が行動不能になったと仮定できるまでは続く。


「気持ち的には自分の負けですが」


 二本目の鉄剣を片手にフレアさんが汗を拭う。有利な武器で相手の剣を壊せたから勝ちというのでは、僕としても納得いかない。


「気持ち的には僕の勝ちじゃありません」


 パールの身も心も守るためには、今のままで満足していては駄目だ。判定勝ちなんて曖昧なものは敵との間にはないのだから。

 アダマントの剣はなし。次は互角の鉄の剣同士で挑む。けれど重みのない想像剣の分、僕が有利。身体能力の差を少しでも埋められれば、いかに相手のリズムを崩すかの勝負。




 フレアさんが勢い良く素振り。恐らく再開の合図。

 今回は僕から攻める。リズムを崩すよりも得意な流れに持ち込もうと考えたのだ。迎撃の体勢を取るフレアさんに突撃。右下から左上への斬り上げ。彼は防御の構え。そして剣同士がぶつかると同時に僕へタックル。巨大化したのかと錯覚させるほどの突進を、防御された反動を利用して左に跳んで躱す。

 渾身のカウンターを回避され姿勢を崩したフレアさんに、左から右への斬り払いを見舞う。しかし屈んで避けると、身を翻して右上への斬り上げ。今度は僕が防御と共に突進。すると勢い良く地面を蹴ってフレアさんは離脱。追撃も間に合わない。


「まさかこれほどまでとは」


 息を切らす僕へのフレアさんの言葉。彼は更に距離を空けると左脇に剣を構える。




 急接近から右への水平斬り。奇しくも夜の手合わせと同じ攻撃。何らかの二撃目があるとしても、初段を崩せれば勝ちも見える。

 フレアさんの踏み込み。恐らくは全速力。思い返せば最初の模擬戦では殺されるのかと覚悟したけれど、最初から昨日までは手加減されていたらしい。

 勝負を決めるための一撃。父さんとの訓練がなければ決して対応できなかっただろう。

 逆手に持った剣でフレアさんの勢いを受け止める。そして、上へ流す。すると彼の左足が僕を襲う。アグルさんとの模擬戦で一度受けてなければ腹にめり込んでいた。しかし、今の僕には届かない。


「参りました」


 地面に仰向けに倒れるフレアさん。燃え盛る炎は消え、今は草原の風のように爽やかな笑顔が浮かぶ。

 偶然に助けられたとはいえ、フレアさんとの一対一での記念すべき初勝利。


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