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原初の星  作者: 煌煌
第十九話 見えた背中と霞む背中
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見えた背中と霞む背中

 訓練を終えた僕たちはトリーさんを送ろうと家の場所を聞く。昼間の襲撃のこともあるのだから、敵に狙われるかもしれない。彼女一人で帰すのは危険だろう。


「あの。私の家はこの近くなんです。なので疲れているみなさんのお手を煩わせる必要もありませんよ」


 友達になっても気を遣うのか。けれど警察署の近くなら、目的もなしに攻めて来ることはないハズ。むしろ一人の方が安全かも。

 返事を考えている間にトリーさんは歩き出した。すると訓練場からフレアさんとゴランさんが顔を出す。


「おや、まだいたのかね。あのお友達は一緒に帰らないのかな」


 不思議そうな顔をするゴランさんに僕たちは事情を説明した。話を聞いた副署長が部下であるフレアさんに指示を出す。


「あのお嬢さんを送ってあげなさい」


 微笑みながらフレアさんは敬礼。カラルの住人を守る警察の務めを果たす二人。おかげで僕たちも安心して帰ることができる。




 ゴランさんとフレアさんに改めてお礼を述べると、六人で家路に就く。テレフープの中でもみんなの家の前でもトリーさんのことで持ちきり。全員を送り届け帰宅した後でも。

 父さんと母さんに今日の出来事を話す僕とパール。転校生の話には二人とも微笑み、昼の襲撃に対しては真剣な顔。模擬戦に関しては驚きと感心が浮かぶ。


「幽霊のような敵も気になるけれど、レンの成長速度には驚かされるわね」


 母さんの言葉に父さんも頷く。喜ぶ両親の前で、パールだけは当然だという表情。




 今日もやってきた食後の修行。僕の成長を直接父さんにも見せられるだろうか。

 鉄剣を構える父さん。そして、踏み込む。一歩目の着地。二歩目の踏み込み。二歩目の着地は昨日より鮮明に映る。僕は防御のために剣を右へ。と同時に体が宙を舞う。

 鉄剣ごと弾き飛ばされたらしい。父さんは既に僕の落下地点に立つ。だけど、無抵抗でやられては失望させるだけ。反動を利用して左から右への薙ぎ払いを繰り出す。

 意表を突いたハズの一撃は大きな空振り。いとも容易く父さんに躱された。

 着地前に背後を取られ、今回は左の脇腹に鉄剣の感触。


「いや。驚いたよ。あと数日の内に、フレアくんさえ超えられるかもしれないね」


 ありがたい父さんの言葉。しかしできれば今日中にもう一段階上に行きたい。


「今日もあと数回。手合わせお願いします」


 僕の頼みに父さんは微笑む。そして繰り返される超スピード。一度目より二度目、二度目より三度目と、完全に見切れはしないが、ほんの僅かずつ父さんの影が見え始めた。




「今日はここまでにしておこう。素振りするのも大切だからね」


 剣をデコに当てられながら終了の知らせを聞く。何度繰り返しても攻撃の瞬間の父さんの姿は見えないまま。けれど、明日こそは。




 昨日の教えを念頭に置き素振りを行う。始めてから数十分経過しただろうか。いきなり総毛立つ僕の身体。そして警報が鳴ると鎧も展開された。敵に家の場所がバレたのか?


「やはりパールちゃんの装備に不具合がある訳ではなさそうだね」


 父さんの優しい口調。しかし、手合わせですら感じなかった殺気。今までの速度や威力でも本気を出していなかったということなのだろうか。見え掛けていた影が霞む。


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