消失
正確には同一人物かは分からない。生気のない顔と以前戦闘した時と同じような不気味な雰囲気から判断しただけ。しかし前回とは違いアダマントの防具を着けている敵。先頭の一人を皮切りに続々と姿を現す。
「廊下を歩いてたら急に」
トリーさんの指が震える。僕だってパールとの出会いがなければ、敵と遭遇した場合はただ怯えるしかなかっただろう。今日何度も怖い思いをしたトリーさん。今回は僕ら六人で守ってみせる。
「パールはバリアを展開して彼女を守って」
想像剣を作りながら僕は叫ぶ。そして一番前の敵に切っ先を向けた。
「お前たちは警察署を襲ったのと同じ部隊だろう。何故学校の中にいた」
前回同様返事はない。相談すらしないのも一緒。まるで僕の声が聞こえていないかのような。けれど奴らの反応は、僕の質問へ肯定の意味を表している。
「今回も返事はなしか」
話し終えた僕。すると後ろからイオンさんに肩を叩かれた。怪訝な。いや、トリーさんと同じような青白い顔をしている。
「おかしなことに気付きませんか?」
おかしなことはと聞かれると、全てが非常事態。敵の不気味な雰囲気も、イオンさんのいつもと違う表情も。鎧なしだと普段の戦闘よりも世界がクリアに見える。鎧なしだと?
「警報すら鳴ってない」
僕の返答にイオンさんが頷く。視界の端に映る後ろのキハたちの顔も今では青白い。
故障。教室で同級生たちに睨まれた時には問題なく鳴っていた。だからおそらく違う。
敵の能力。相手は十人。全員が同じ能力を持っているとは考え難い。違うとは言い切れないけれど、決め手に欠ける。
色々な理由が頭に浮かぶ。だけど全て推測の域を出ない。
「今は敵を倒すのが先だ」
パールの声に僕は冷静さを取り戻す。敵の情報はもちろん大事。しかし、考えている間にも僕たちと相手との距離は縮まる一方。今のうちに先手を取って、少しでも有利な戦況を作ろう。
「まずは俺が数を減らす」
距離があればあるだけキハに有利。今回も敵の装備は近接武器のみ。更に今のスピードなら外す心配もない。
学校の屋上に響く銃声。キハの撃ち出す黒い弾丸は、見事に敵を撃ち抜いた。
「このまま殲滅できそうだな」
余裕を見せるキハ。だけど仲間が銃で撃たれたというのに、今回も敵に乱れはない。
横一列で徐々に間を詰める敵。見れば見るほど生気のない顔。異様な雰囲気。
キハは何度も狙い撃つ。弾は全て標的の脚を捉え、撃ち抜かれた敵は力なく崩れ去る。攻撃は敵を倒し続け、残るは一人。
狙い澄まされた一撃が、綺麗な直線を描き敵の脚へ向かう。最後の一人も抵抗すら見せずに倒れ込む。予想以上に呆気ない幕切れ。
「安全に勝てるのは良いんだけど。あいつら避ける動作すらなく倒れ」
大活躍のキハの言葉が途切れる。行動不能なハズの敵が、僕らが見ている前で忽然と姿を消したのだ。




