君の願い
機械が好みや適性から人の役目を決めるようになってから五百年。僕の住む世界の神。誰もが羨む存在は、今は僕の目の前に。
「皆が機械と呼ぶのは言わば私の城だ。あの中にいれば際限なく物を出せる。だからこうして外に出てしまえば作れる量に限りがあるんだ」
今まで聞いたこともない話。恐らく世界中で知ってるのは僕だけだろう。
まだ煙が立ち込める役所の中。物陰に隠れ話す彼女の表情は険しい。しかし近くで見る機械の顔は、機械という呼び名とは真逆。きめ細かな肌は柔らかそう。いや、柔らかかった。
「ちゃんと聞いてるか? 大事な話なんだ」
険しい表情が心配そうなモノに変わる。僕としては真剣な表情で聞いているフリをしていたハズ。流石は何百年と人々を見守ってきた存在ということか。
「だから余計なことを考えずに聞いてくれ。私が機械の部分から抜け出してもしばらくは機能は維持される。蓄えているエネルギーを使い果たせば、大パニックが起きる可能性もあるが」
悲しそうな表情になる機械。いや、やはり機械と呼ぶにはあまりにも。
「この施設が狙われる理由は私以外にない。みすみす何もせず侵略者に奪われる訳にはいかなかったんだ」
全てを覚悟しているといった顔。僕の、僕たちの認識していた機械のイメージが崩れていく。
「私を狙って争いが起きても、警察が国の外で撃退していた。バリアやらさっきの男が透明化していたことやら、私の知り得ない事態が起きている」
前回の大規模な争いは三十年前。僕やキハたちの親がちょうど今の僕らの年頃のこと。国境付近での争いになったと習った。
「前代未聞の大事件なのは分かりました。機械を敵に渡すのも反対です。だけど、戦うのは僕じゃなくても良いですよね?」
偶然事件の現場に居合わせた少年。僕が選ばれた勇者という訳ではないんだ。
「確かにこの場に君がいるのは偶然だ。私が呼び出したり工作した訳ではないからな。他の選択肢があるなら君を危険な目に遭わせたりしない」
やはり僕は選ばれし者ではないらしい。嘘でも方便でも、僕じゃなければ駄目なんだと言われてみたかったな。
「けれど、その武器は君にしか扱えない。巻き込みたくなくても、部屋から出て一番に会えたのが君で嬉しかったよ」
僕が戻った時。彼女の手には既に武器が握られていた。僕を見付けて作り出したんじゃない。今まで話して感じるように、機械に心があるのなら。
「分かりました。あなたが良いと言うまでは守ってみせますよ」
偶然でも、運命でも、何だっていい。
キハのオマケじゃなくて、レン・ドレイグを彼女は望んでくれたのだから。
「ふっ。カッコいいじゃないか。流石は私の彼氏くんだな」
えっ? なんだって?




