変わるモノと変わらないモノ
父さんの稽古が終わり、風呂場で今日一日の疲れと汗を流す。そしてパールの待つ自室の扉を開く。今日も彼女はカーペットに体育座りをして、僕が戻るのを待っていた。
「今日もお疲れ様。その。何度も言っているけれど、私にできることはないか?」
パールへの願い事。もしも僕一人を超人に変えてくれと頼んだら。今の彼女なら叶えてくれるのだろうか。だけど。だとしても。
「ありがとう。今の僕の願いは少しでも長くパールが笑顔でいてくれることかな」
そもそもが不老不死や肉体改造の願いなどルール違反。一時のパールの感情を汲み取ることは、彼女の心を踏みにじること。二つの禁忌に反する行為。そして何より、今伝えた願いこそが。今の僕の本当の願い。
「本っ当に。レンが私の彼氏で良かった」
満面の笑顔のパール。僕の唯一の願いは、彼女の能力を使わずに叶えられた。
次の日。昼下がりの学校の屋上。いつもの六人。いつもの時間。僕の右横にはパールが座り、左側にはイオンさんが座る。パールの横はすっかりアグルさんの定位置。
昨日の訓練の話題で盛り上がるみんな。すると、僕の前に座るキハが口を開く。
「やっぱりレンだけ体つきが大きく変わって見えるんだよな」
パールとは家でも常に一緒にいるから肉体の変化に気付かないかもしれない。おそらくキハは、役所の事件前の僕と、今の姿を見比べて感じたのだろう。
「随分と頼もしく見えるわよね」
セイラちゃんの同意する言葉に、一瞬顔をしかめるキハ。自分の意見を肯定した彼女にヤキモチを焼く必要はないと思うのだが。
「昔から良く見てたキハが言うんなら間違いないんだろうね。自分ではまだそこまで変化してないと思ってた。なんかありがとう」
別に二人の顔色を窺った訳ではない。けどキハとセイラちゃんの反応を見るに、僕の答えは良い物だった模様。
話し終えた僕にパールが耳打ち。
「私だって気付いてたぞ」
何だろう。とても可愛い。世界最強なのは前から分かっていたが、今のは更に別格。
彼女に返す言葉が出てこない。
耳打ちの後、顔を赤くして視線を落としたパール。幸せな時間は早く過ぎ、午後の授業の始まりを告げるチャイムが鳴り響く。
「ありがとう」
漸く喉から抜け出せた一言を、階段の途中で彼女へと告げた。鳴り響くのは幸せの鐘。
午後の授業を乗り切り。辿り着いた二人の師匠の待つ場所。今日も最初は筋肉トレーニングから。
腕立て、腹筋、スクワット。マラソンまで終わらせて一時間ほど。みんなは自分の決められた回数を終えて、先に休んでいる。僕が戻って来たのを確認すると起き上がり、全員戦闘体勢。
「予定通りの時間に終われたな。では予定外のことを始めよう」
ゴランさんの合図にも、フレアさんは武器も持たずに腕を組んでいる。そしてみんなの手に握られた模擬戦用の装備。僕に向けられる切っ先から分かる簡単な答え。五対一の練習試合。




