特別メニュー
「今日はまだ余裕があると思いますが、明日には副署長との訓練も開始します。なので、いつものトレーニングだけをして解散としましょう」
模擬戦が意外と早く終わり、僕たちは体力も時間も余らせていた。しかし優しい笑顔を見せたフレアさんの指示通りにトレーニングをこなすと、お礼を告げて訓練場から出る。
アグルさんを家へと送り。イオンさんが帰る様子を見届け。キハたちの後ろ姿が消えたのを確認すると家に入る。
昨日と変わらない行動。だけど退屈さは感じない。話している内容が違うだけで、充分に楽しめているのだ。
「今日のグレンとの修行が楽しみなんだな」
パールは何でもお見通しらしい。食後の父さんとの特訓は昨日からの特別メニュー。今までの父さんの特別メニューというとパイが出てきたが、今では超人的な戦闘能力を見せ付けてくれる。胸が踊らないハズはない。
「昨日までは父さんを英雄扱いしている人の話は流石に盛りすぎてるって思ってたんだ。だけど、昨日の父さんの力を見て、あんな風になりたいって思った」
右手を握り締めてパールに話す。自分の父が格好良く見えるのは嬉しい。僕も父さんのようになれたら、パールだって守り通せる。
するとパールの両手が僕の右手を包む。
「きっとレンはグレンだって超えられるさ」
優しく微笑む彼女。僕を見つめる瞳を見ると、本当に父さんも超えられる気がする。
帰って来た両親と四人で食卓を囲む。今日の出来事、パールの新装備の効果について二人に話す。母さんの瞳は輝き、父さんは何か考えている様子。もしも、警察全てに新しい装備を作るように言われたら。
「新しい装備か」
顎に手を当てて父さんが口を開く。本当に全ての警察官に配備しろなんて言うのだろうか。だとしたら、僕は止めよう。
「フレアくんもゴランさんも良い人だ。けどあんまりパールちゃんの装備については他人に話さない方が良いだろうね」
何故父さんが二人の名前を出したのかは分からない。二人だけではなく、全ての人に対して用心するようにってことだろうけど。
僕にとっては、父さんがパールを思い遣る言葉を掛けてくれることが嬉しかった。
「うん。改めて気を付けるようにする」
僕の答えの後。父さんの顔はずっとにこやか。いつもと変わらずパールの手料理を美味しそうに頬張り。母さんを見ながら嬉しそうな表情を浮かばせる。
「よし。じゃあ今日もやろうか」
食後に降りた地下室で鉄の塊を握り話す父さん。家族以外は知らない。修行の第二ラウンドが始まる。




