ハンデマッチ
島への入り口に戻って来た。目の前には壁もないのに置かれている玄関扉。開けたら元の家へと飛ばされるのだろう。
「また二人で来たいな」
パールを見つめながら放った言葉に、彼女は頷く。二人きりの楽園。今度は家を建ててもらえたらいいな。
島への出入り口を通って無事にカラルへと到着した。テレフープで直接訓練場に移動してもよかったのだけど、僕は二人の秘密基地の入り口をもう一度見ておきたかったから。
「満足したか? じゃあフレアとの模擬戦が待つ訓練場に行こうか」
何度見ても小さな家の玄関を開けた先に大自然が広がっているとは思えない。パールの凄さを再確認して、僕たちはテレフープの中へと歩を進めた。
時刻は午後一時前。今日も他のメンバーは僕たちが到着した時には準備を終えていた。遅刻した訳ではないけれど、他の人たちを待たせた分は活躍してみせよう。パールに元気をもらって絶好調のハズだから。
「今日は六対一の戦いです。ルールは昨日と同じで、レンさんの攻撃をいかに上手く自分に当てるかが鍵を握るでしょう」
僕やキハと同じように、フレアさんも女子に攻撃するのは気が引けるのだろう。しかし彼の攻撃力なら当たり方次第ではスポンジ剣でも少しは痛む。だから当たらないように、実戦と同じような緊張感を持って挑むことが大切。
「僕が気を引き付けるから、援護しつつ取り囲んで。人数の差を最大限に活かそう」
僕の作戦に反対する者はいない。身動きをしにくい状況に追い込むことが、今の僕たちがフレアさんに勝てる唯一の方法。
「用意はいいですね? では、行きます!」
掛け声と共に幕を開けたハンデマッチ。開始早々フレアさんはセイラちゃんに向けて踏み込む。しかし彼女は何の反応も見せない。
「えぇ。消えた」
おそらく全力に近い接近速度。父さんほどではないにしても、初回の模擬戦よりも数段速い。
だとしても標的はセイラちゃんのハズ。ならば彼女の真ん前に剣を振り下ろせば攻撃の邪魔をすることならできる。
「甘いですよ」
フレアさんが言い終えた時には、彼の剣に貫かれていた僕の体。もしも鎧が展開されていても、無傷で済んだとは限らない。
一瞬で僕の負けが決まった。しかし後五人残っている。簡単に終わりはしないだろう。
僕の期待は裏切られ。模擬戦は一分掛からずに終了した。ただただ実力の差を見せ付けられただけ。最初の模擬戦の時と変わらないじゃないか。
「以前にも言いましたが、レンさんはピンチに陥るまでは判断が鈍いです。他の人には自分の動きが見えていないのだから、最初にレンさんがやられては為す術なく終わります」
確かに彼の言う通り。しかしやられただけで終えたのではみんな納得いかない。もう一戦。今度はフレアさんに一矢報いてみせる。




