僕の戦い(後編)
とてつもなく速い踏み込み。いつも通りの僕なら反応もできずに貫かれているだろう。しかしアドレナリンのおかげか、僕の目には敵の切っ先がしっかりと見えている。
僕へと向けられた刃を、右へと弾いた。鉄と鉄のぶつかる少し間の抜けた鈍い音。音の後に手へ衝撃が伝う。
「っつぅ」
手が痺れているが、相手から目を離す訳にはいかない。一瞬の気の緩みが死に繋がる。
「マグレが二度も起こると思うなよ!」
今度は右から左への橫薙ぎ。僕は後ろに身を仰け反らせて躱す。次は斬り下ろし。剣で受け止めて左に逸らした。
勢いよく転ぶ男。だが受け身を取ると一回転して立ち上がった。片手で剣を放り、もう片方の手で受け止める。重みを感じないかのように何度も繰り返す敵。
「お前とは鍛え方が違うんだよ。俺はいつも勝ってきたんだよ。敵は斬り殺してよぉ」
彼の声からは今までとは比べ物にならないほどに力を感じる。次の一撃をいなせれば、僕の勝利。大きく力を込める分、隙も大きくなるハズ。
「俺の必殺技を受けてみろ! デストロイサウザントライトニ、んぐっ」
まさか必殺技の名前を叫ぶだなんて。聞くに堪えない状況に、つい雄叫びの途中で剣を飛ばした。文字通り刃の部分を男に目掛け。
「なん、だよ、その武器」
もしかしたら彼の雄叫びには意味があったのかもしれない。だが、戦いの最中にいきなり技名を叫ぶなんて。物凄くバカにされている気がした。痛みによって気絶しても許されることではないぞ。
「レン。やったな! いきなり使いこなせてるんじゃないか?」
機械に後ろから抱き付かれた。彼女の柔らかい感触に、一瞬にして怒りの感情が消え去る。今こそカッコよく決め台詞を言う時。
「正義は必ず勝ーつ。いや、違うな。相手を見て喧嘩を売るんだな。いや、これも違う」
ヒーローってのは戦ってる間に決め台詞を考えてるものなのか。だとしたら相当余裕がないと無理だろう。
「うん。決め台詞は置いとくとして。カッコ良かったよ」
今一つ決まらなかったものの、とりあえず彼女は守れた。僕自身も。
「もしも次があれば、決め台詞もバッチリ決めてみせるよ」
一件落着に見えたが、男の処遇を決めなければ。警察署なら、彼を牢屋に繋いでおいてくれるだろう。少し気は引けるが。
通信機から連絡を入れる。色々な機能が付いたスグレモノ。人の願いから機械が作った逸品。
「バリアが消えていなければ通信機器は使えないだろう。隔離されてるんだろうし」
彼女の予想は的中し、外部への通信は遮断されている様子。なら歩いて運ぶしかない。
「いや。機械ならお願いしたら瞬間移動とかさせてくれるんじゃないか?」
よくぞ気付いてくれた。と、言わんばかりのどや顔。やはり可愛い。可愛いが少しだけイラッとする。
「私のことで、伝えておくべきことがある」