彼女の選択
翌朝。昨日と同じくまだ暗い部屋の中。目を開けた僕の前には今日も輝くパールの瞳。
「おはよう。今日はまだ寝てていいぞ。私は今から出掛けるための用意をしてくる」
繋いだ手を放し彼女は起き上がる。意識がはっきりしないまま見ていると、パールは扉を開けて出て行く。昨日寝たのは同じ時間のハズなのに、僕よりも元気な様子。
僕はパールの言葉に従い、もう一度寝ておこうと目を瞑る。彼女のイチゴの残り香。甘い香りが僕を眠りへと誘う。もう少しで眠れそうだと思った時。鼻を満たす匂いが変わった。ベーコンを焼いているような匂い。
朝ごはんの用意かな。けど、デートの用意をすると言っていたハズ。だとすればパールのしていることは一つ。
「手作り弁当!」
僕は勢いを付けて飛び起きた。
部屋から出ると、肉を焼く音も耳に届く。料理する姿を思い浮かべつつ、彼女の元に向かう。リビングに下りた僕の目に、想像通りの光景が映る。
「寝ててって言ったのに。まぁ匂いがするし秘密にして驚かすというのも無理があるか」
頬を膨らませてパールが話す。サプライズを計画してくれたらしい。だけど。お弁当の用意をする彼女を眺めるのも良いものだ。
パールの手作り弁当を鞄に入れ。いざ出発の時。彼女のデートプランが楽しみ。
「朝食はこの前のカフェにでも行こう。その後も行き先は任せてくれ」
テレフープを取り出し中に入る。そして、馴染みのカフェへ到着。甘い物以外の食べ物のメニューも豊富。だけど僕たちは二人ともハムトーストを頼んだ。
愛する彼女と過ごす何気ない時間。平和なだけの時間が一番大切で、何よりも難しい。
塩気の強いハムも味を主張できないほどに甘い一時を終えて。テレフープに次の行き先を告げるパール。目を輝かせる彼女の鼻息は荒い。次はお楽しみのお弁当を食べるのに良さそうな公園とかだろうか。
「登録されてある私の家へ」
瞬間移動を完了した僕たち。今いるのは、カラルの中心から外れた人気のない道。鉄製なのに白い小さな家が目の前にある。
「ここがパールの?」
彼女はゆっくりと、そして深く頷く。
「最初に言ったけれど、ここには何もない。だからこそレンのトレーニングルームには良いんじゃないかと思ったんだ」
目を輝かせ昨日から考えていたのは、僕のこと。お弁当も二人きりで家の中で食べるつもりで作ってきたのかな。
パールが玄関扉を開く。外にいる僕にも明かりのついていない家の中が見える。
パールの後ろに付いて家の中へ。さて、何と言って入ろう。お邪魔しますは違うような気がする。だとしたらただいまか。
「ただいま」
暗い家の中でパールが振り向く。彼女の表情を見るに、僕の選択は完璧なものだったらしい。家具どころか照明さえない家の中で、今度は彼女からの僕への質問。
「さぁ、レンは一体どんな家を望む?」




