今日は彼女の戦い(前編)
家に戻りごはんを食べて修行へと向かう。僕とパールが到着すると他のメンバーは既に揃っていた。六人揃ったことを確認すると、フレアさんが今日の模擬戦についての説明を始める。
「今日はチーム戦をしようと思います」
予想通りのフレアさん対キハと僕のハンデマッチかな。二対一なら僕たちにも勝ち目があるハズ。前回の模擬戦の反省を生かした戦い方を見せて、フレアさんを驚かせるぞ。
「女性陣対レンさんとキハさんの組み合わせで模擬戦を行いましょう」
逆にフレアさんに驚かされた。僕の目論見は早くも崩れ去る。けれど訓練とはいえ女の子に武器を向けてもいいものだろうか。
「知る限りでは三人とも男とはいえ、敵に女性がいないとは限りません。なので女性陣も二人のためにも本気で戦っていただきたい」
フレアさんが説明を一旦止めた時。僕の目に入ったのはアグルさんの顔。待ってましたと言わんばかりに悪い顔を浮かべて、眼鏡を光らす。そして僕と視線が合うと、僅かに曲げていた口角を最大限に引き上げる。
「キハさんはペイント弾を。他の方はスポンジの剣を使ってください。実戦と同じようにレンさんの攻撃は胴体に当たれば一撃で気絶するものとします。お互いを敵同士だと思い真剣に戦うようにお願いします」
僕たちに配られる柔らかい剣。しかし今の条件だと僕が圧倒的に有利。パールたちには悪いが、独擅場にさせてもらおう。
「では、始め!」
フレアさんが高く上げた手を振り下ろす。するとアグルさんが飛び込んで来た。彼女に向けてキハが銃を撃つ。しかし突進して来る彼女に一発も当たらない。キハもやりにくいのだろう。僕だって敵だと思えと言われてもアグルさんにしか見えないのだから。
「隙だらけなのよ」
突進の速度を活かして跳ねたアグルさん。体重を乗せた一撃が僕を襲う。振り下ろされるスポンジを手に持つスポンジで防ぐ。
「だから隙だらけだって」
彼女の右足が鎧も展開していない僕の左脇腹に命中。目の前一杯に地面が広がる。
「ぐぇっ。なんで、蹴って」
視界から彼女の左足が外れた。おそらく振り上げられているのだろう。冗談キツい。
僕は右手で地面を押して左へ転がる。目の前に落ちるアグルさんの踵。当たっていたら怪我していたかも。
「ちょっとアグルさん冗談にならないよ!」
一回転して反動をつけて起き上がった。不安定な状態の僕に彼女の横薙ぎが迫る。
スポンジで防いだが体勢を整える間もなく彼女は連擊を繰り出す。
「私は冗談のつもりはありません。お互いに敵同士ということは、今のアナタはお姉様の敵。ならば、私が守ってみせるのです」
確かにアグルさんの言う通り。パールを守るために戦うという彼女。なら冗談にもならないなんて言葉はアグルさんにも、他の女性陣にも失礼。だから、真剣に向き合おう。
「ごめん。アグルさんに失礼な態度だったよね。ならここからは僕も真面目にやるよ」
連擊を捌いて距離を取る。今からは僕の番だ。




