パールと空へ
一足先に飛んでいた気持ちに体も追い付いた。パールと密室に二人きり。朝の日差しに照らされて増す、彼女の輝き。追い付いたと思っていた気持ちは、僕らの遥か上空へ。
エアカーは自動運転。目的地を決めると勝手に運んでくれる。人が運転して空で事故を起こせば、死に繋がりかねない。というパールの人に対する思い遣りが分かるようなマシン。
「レンが戦闘中に飛ぶときもこれくらい飛んでるよな。改めてゆっくり眺めると、違って見えるんじゃないか?」
鉄で作られている建物が多い灰の町並み。光に溢れる夜景とは違って、お世辞にも綺麗だとは言えない。けれど、僕にとっても彼女にとっても、かけがえのない町。
「数えるほどだけど、戦って守ったと考えると、やっぱり感慨深いものがあるよね」
パールの装置の力か、壊されていた建物や公園の木は直されている。もしも彼女を奪われていれば、今も壊れたままか、さらに崩壊していたかもしれない。
「パールの力って本当に凄いよね。あんなに壊れていた建物をもう元通りにして」
横の彼女を見ると複雑な表情をしている。何か気掛かりなことがあるのだろうか。
「だけど、私がいなければ壊れることもなく済んだかもしれない。レンに危ない思いをさせることもなかっただろうし」
もし彼女がいなければ。エレバーは総攻撃を仕掛けて来るのだろう。今は機械の秘密を探ろうとして僕を付け狙っているハズ。フレアさんや父さんも言っていたことだ。いや。他の理由は関係なくて、何よりも僕が耐えられない。
「パールは僕にも、世界にも必要だよ。だからそんな悲しいことは考えちゃいけない」
僕の言葉に彼女は頷く。けれど表情は複雑なまま。簡単に割り切れるものではないだろう。なら僕が支えれば良いだけ。
目的地のカフェに着いた。気分転換に良さそうな空の旅で浮かない顔になったパール。なら彼女の好きなイチゴパフェで、甘い笑顔に戻ってもらおう。
運ばれてきたパフェを見ても表情は曇ったまま。けれど、何かを思い出したかのような顔をすると、いきなりご機嫌に戻った。
「え? どうしたのいきなり?」
甘い物の魔法にしてはまだ食べていない。なら何が彼女のご機嫌を取り戻したのか。
「いや。やっぱりレンは優しいなって」
僕にとっては謎のまま。だけど大切なのはパールが喜んでくれること。
「パールは嬉しそうにしてる方が可愛いよ」
僕の言葉に彼女の顔は口に運んだイチゴのように赤くなった。喜んでもらえる程度で褒め言葉を止めるのは難しい。パールが相手だと少しの褒め言葉では止まらなくなるから。
「まだ時間はあるし、公園にでも行こうか」
すっかり機嫌が直ったパール。僕の提案に頷くと、僕の手を取り走り出す。
「ここからなら近いし、走っていこう」
走ってきた疲れを公園の自然とパールとの会話で癒した。前回は襲撃された公園。今回も襲われる可能性を考えたが、余計な心配であった模様。何事もなく時計は正午を示す。
「久々のデートも終わりか。今日は連れてきてくれてありがとう。楽しかったよ。もしもレンが良かったら。その」
来週もデートしようと言うのかな。だとしたら、むしろ僕の望むところ。
「明日もどこかに連れて行ってくれないか」
確かに明日も休日。修行の開始も昼食後。なら時間だってあるだろう。
「もちろん。どこへでも」
今日の修行はなんだか頑張れる気がする。




