真心の贈り合い
パールが食べたいなんて下品なことを言うハズもなく。彼女の手料理をお願いした僕。お決まりのように手を繋いだままリビングに降りると、手を放して席に着く。
パールに頼めば当然すぐに食べられる状態の料理が出てくるが、調理を楽しむ人も少なくはない。時間のあるときに父さんがパイを焼くように、趣味や趣向として腕を振るうのだ。
料理中の彼女に熱視線を送る。特に意味がある訳ではなく、ただただ見惚れて。母さんに見られたらまた茶化されるだろうな。
なんて考えていると僕の視線にパールが気付いたらしい。視線が合ったのに赤くなってすぐに目を逸らすパール。なんだか新婚さん気分。久し振りに思春期の妄想に花が咲く。
夜中まで警察の仕事で町中を巡回していた僕。不良に襲われる善良な市民を助けたり、道に迷っていたお婆さんを送り届けたり。とにかく疲れ果てて家路に就く。夜中なのに玄関から漏れる光。僕が扉を開くと、パールが出迎えてくれる。まさに僕だけの光だ。オレンジのエプロンをした彼女は、疲れた僕を癒そうと腕に縒りを掛けた料理を振る舞う。
なんて妄想していると彼女の手料理が到着した。完璧な彼女なのに料理ができない。などということはなく。食材から作り出した彼女の手料理は味も気持ちも珠玉の逸品。
「美味しそうに食べてもらえると、作り甲斐もあるよ」
空腹に染み渡る幸せに、上品さを忘れて喰らい付いていた僕。彼女の品のある食べ方を思い出してちょっぴり反省。
「他の人がいるときにはどうかと思うけど、二人きりのときには良いんじゃないか」
向かいの席に座り、頬杖を突いて微笑む僕の女神。投げ掛ける言葉まで慈愛に満ちている。なんだか背中に天使の羽さえ見えるような。彼女のためなら明日も頑張れる。いや、一生頑張ろう。
「夜中なのにありがとう。こんなに美味しい物を食べさせてもらえるなんて幸せだよ」
料理と幸せを噛み締める僕。今ならさっきの風使いにも一人で勝てる気さえする。
「レンは優しいな」
なんのことかはっきりとは分からないけれど、彼女が喜んでくれるなら僕も嬉しい。
パールの笑顔が僕の安定化装置。起動すればたちどころに僕は落ち着く。僕たちの未来にはまだ戦いが待ち受けているだろう。だけど、もしも瀕死の重傷を負おうと、彼女が微笑み掛けてくれるなら、僕は必ず勝ってみせる。
「また何か想像してるのかな。レンの想像力は生き残るための術。もしも私がそれに協力できているのなら嬉しいな」
やっぱり彼女には僕の心を読む能力もあるんだろうか。優しく微笑む彼女の顔を、僕は照れて直視できずにいた。
遅めの晩ごはんを食べた僕は、彼女と共にベッドへ戻る。降りてきた時よりも固く、二人の手と心を繋いで。




