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原初の星  作者: 煌煌
第十二話 罠
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風の残像

 風圧を武器にする方法で思い付くのは、地面に押し付けての圧迫。逆に高く放り投げて地面に叩き付けるなど。しかし今の僕を襲っている物の凶悪性は、考えていた物では比較にすらならない。

 風の刃による斬り付け。相手は遠く離れた位置で、左右の手から風を撃ち出す。近寄らなければ僕の攻撃も届かない。


「ほら。頑丈な鎧を着ているからといって、避けもしないで攻撃を受け続けていれば死ぬしかないだろう」


 奴の言うことは尤も。けれど、何もせずにやられる訳がないだろう。

 僕は剣を敵に向けた。そして伸ばす。最早お決まりの攻撃かもしれないが、最も効果的な戦法のハズ。特に今のように近寄れない相手なら尚更。


「前回の副隊長殿を倒した時と同じ要領か。対策は考えてあるさ」


 相手が対策してきているのは予想済み。空も飛べる敵なら上に逃げようとするだろう。しかし僕の剣には重みはない。だから敵の動きに合わせて振り回せばいいだけ。

 僕の戦法が対策と言えるのかはさておき。効果的であるのは確か。案の定逃げ回る敵。いくら速くても、さっき奴が言っていた通りの末路が待つ。反撃もできなければ待つのは敗北だけだ。


「レン。追い込まれてるのは君だ。自分の鎧を良く見てみろ」


 頭の中に響くパールの声。遂に僕の愛情は危険な領域へと足を踏み入れたのだろうか。




「本当は次の訓練の時にレンたちを驚かせてやろうと思って秘密にしてたんだがな。ペンダントを通じて皆と通信ができるようにしておいたのさ」


 良かった。危ない領域に入った訳ではないらしい。落ち着いてきた僕の目に自分の腕が映る。傷だらけの鎧に守られた腕が。

 いつの間にダメージを受けたのだろう。僕が反撃を始めた時よりも傷付いている。


「多分あいつは体を動かさなくても風を操れるんだ。早く倒さないと先にレンの鎧が駄目になる」


 パールの言う通りだ。余裕を見せている暇はない。早く決着をつけなければ。

 相手は未だ遥か彼方。なら、前回と同じように長さ以外も大きくするのみ。

 剣にイメージを送る。高速で飛び回る相手を逃さないほどに巨大な剣。そして触れた瞬間に気絶するというイメージ。

 手応えあり。何かを確実に捉えた。今回は僕たちの勝ち。




「そうそう人生は上手くいかないもんだ」


 僕の腕の下から聞こえる敵の声。そして目に映る薄い緑色の髪。ドアノブを回すときのように開かれた指。僕に向けられた手のひらの中で風が渦を巻く。

 下から放たれた風の弾丸は、僕を空へと舞い上げた。さっきとは逆転した立場。今度は僕が剣の伸縮を頼りに逃げ回る。


「いいぞ。泣いて帰ってきたアイの苦しみを思い知らせてやるさ」


 またしても風に乗って届く敵の声。今回の風の便りは、さっきよりも暗い音を運んできた。僕に対する復讐の言の葉を。


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