柔らかい日常
今日はフレアさんとの訓練はない。学校が終わった僕たちは、いつもの四人で家路に就く。テレフープを使うことで一瞬で到着した我が家。そして僕たちに手を振って帰って行くキハたち。二人が見えなくなるまで見送ると、パールと二人で家へと入った。
「流石にまだ二人とも帰ってないな。なぁレン。今日学校でレコに言われたことだけど」
不安気なパールの声。二人分の荷物を置いて、僕が振り向くと。
「レンは私の彼氏。だよな?」
両手を僕の胸に着けて、顔をくっ付くかと思うほどに近付けた彼女。眉を下げた表情からも、声と同じ感情が読み取れる。
何を心配する必要があるんだろう。パール以外の女の子に目移りするハズもないのに。
「僕はパールの彼氏。君が良いと言うまで、側で守り続けるって誓ったでしょ」
彼女の眉は下がったまま。けれど僕の返事を聞いてからは、表情に浮かんでいるのは不安ではない。
凄く良い雰囲気。静かな家の中で静かな時間が流れる。
「あの」
僕が口を開いた時。玄関のドアも開いた。そして顔を見せた父さん。
「ただいま。えーと。もう一度出掛けて来ようか?」
密着状態で固まる僕たちの目に、父さんの後ろから現れた母さんが映る。
「疲れて帰ってきたのに何でまた出掛けないといけないの。って、あらまぁ」
呆れ顔からにやけ顔へ。急速に変わった母さんの表情。二人の様子を見て、くっ付いていたパールが離れる。
「おかえり二人とも。疲れただろう。今すぐご飯にしよう。な」
顔を赤らめたパールが場を取り繕う。彼女の慌てぶりに、父さんも母さんもにやけ顔を加速させるのだった。
夕食を終えて、片付けも済ませ、ベッドに入った僕とパール。さっきと同じ雰囲気になるかと想像していた僕。しかし彼女から発される空気感は、安心と信頼。落ち着いた様子で彼女は話す。
「さっきの言葉嬉しかったぞ。それに、今日の戦いも格好良かったと思う。じゃあ。おやすみ」
目を瞑って寝息を立てるパール。期待通りの展開ではないけれど、彼女が喜んでくれることだけが、僕にとっては一番大切。
翌朝。新しい生活のいつもと変わらない朝の風景。両親に見送られて愛しい彼女と親友たちと登校する。テレフープを使うから学校にも一瞬で着く。すると、パールに人だかりができて身動きが取れなくなる僕たち。
困っていると人混みを掻き分けてアグルさんが現れる。彼女に手を引かれて群衆の中を教室へと向かう。
アグルさんにお礼を述べて教室に入ると、今度は僕の制服の袖が引かれる。
昨日のパールの心配の種。イオンさんが現れた。
「おはようレンさん。今日も素敵ですわね」
パール以外の女の子に、好意を向けられたのは初めて。何も感じない訳はない。
「おはようレコ。朝から宣戦布告かな。私も絶対に負けないからな」
僕の返事より先に、パールが返事をした。多分。毎朝の恒例になるであろう。新しい僕と彼女の風景。




