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原初の星  作者: 煌煌
第九話 歓喜の刻
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大きな成功

 午前八時。普段ならチャイムが鳴るハズの時間。けど今日は鳴らなかった。昨日のことを心配した二人が、早めに来てくれたから。


「体力付けるために歩くのも考えものだな。テレフープを使っておけば道の途中では襲われないだろうし、今日からは瞬間移動で学校に行こうぜ」


 キハの言う通りだろう。しかも今日からは彼も訓練を受けられるかもしれない。帰り道を疲れた状態で歩いていれば、敵には恰好の的。一瞬で移動もできるんだから、対策しておかなければ。


「ゴランさんにも特訓してもらえるかもしれないし、そうなると余計に体力も時間も足りなくなるだろうしね」


 誰にも反対する理由はない。今日からの移動はテレフープを使うことに決まった。




「でもちゃんとレンくんが目覚めて良かったわ。昨日のパールちゃん見てられないくらい取り乱してたし」


 父さん母さんだけじゃなく。セイラちゃんにまでバラされて、暗いテレフープの道中でも分かるくらいにパールの顔は赤く染まる。


「ありがとうね。パール」


 素直に感謝を述べた僕。喜んでくれるかと期待していたのに更に俯く彼女。

 まだまだパールのことを研究しないと。




 家を出て一分も掛からずに学校へ到着。当然誰一人として怪我をしなくて済んだ。

 前回は人気のない場所でテレフープから出たが、今回の到着地点は校門前。突然現れた僕たちに驚く生徒たち。中にはパールの顔を見て幸せそうな顔で倒れる女の子までいる。心配したパール本人に起こされた女の子からは、噴水のように鼻血が舞う。

 もしかしたら毎朝の恒例行事になるのだろうか。




 昼休み。いつもの四人で昼食を楽しんでいた。屋上の心地よい風の中。僕とキハはお互いに彼女の手作り弁当に舌鼓を打つ。幸せに打ち震える僕の目に映るのは、爽やかな風に靡くパールの髪。晴れ渡る空の眩しさも、彼女の黄金の輝きの前では霞んで見える。僕の心はまるで、ミードを一気飲みでもしたかの如く、彼女の美しさに酔いしれているのだ。

 まだお酒の味なんて知らないけれども。

 気が置けない友達と最愛の彼女と過ごす平和な時間。僕の人生における、最大の成功。

 などと恥ずかしくて言えはしない台詞を頭の中で並べていた時。




 屋上の扉が開き、今朝パールに助けられた女の子が現れた。


「パールお姉様。先ほどは助けていただいたのに、固まったままでまともにお礼も言えなかったので。なので。お邪魔かとは思ったのですが、どうしてもお礼を言いたくて」


 桃色の髪を三つ編みにしてサイドに流している女の子。丸い眼鏡を掛けている彼女の顔は、眼鏡のせいだけではなく俯いていることもあり、僕からは全く見えはしない。




 パールが僕に目で合図を出す。明らかに対応に困っている様子。


「えっと。校内で何度か見掛けたり、パールを遠くから見てたりしたのは知ってるんだけど、君の名前も僕たちは知らなくて。良ければ自己紹介とかお願いできるかな?」


 僕の言葉を聞きながらも、眼鏡の彼女は視線をパールから外そうとはしない。


「そうですよね。名乗りもしないで失礼しました。私はルシ・アグル。この学校。アダマス学園の三年生です。お姉様」


 お姉様って。僕たちは二年生なんですが。


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