能力解放
「では今日のメニューを発表します。腕立て四十回と腹筋を四十回。そして訓練場の周りを二周走ること。以上です」
正直昨日よりもハードな内容を覚悟していた。本当に今のメニューだけなら日没前には終わりそう。
僕の予想通りに陽が落ちる前に全てをやり遂げた。すると微笑みを浮かべたフレアさんが近付く。
「学生の本分は勉強だと言いますし、学校がある日はこのメニューの回数だけを増やしていきましょう」
今の僕に合った特訓を考えてくれているのだろう。何となく寝不足気味なようにも見える。今日はフレアさんがゆっくり眠れたら良いのだけれど。
僕たちが帰らないとフレアさんも帰れないハズ。少しでも睡眠時間を取れるようにと、僕は今日の訓練にお礼を述べて、訓練場を後にした。
「フレアさんって何か暑苦しいけどさ。いい人だな。レンと一緒に俺も鍛えてもらえたらいいのになぁ」
初日の激闘を知らないからキハはお気楽なことを言う。けどいつ襲われるかも分からない状況。またキハに救われる日が来る可能性もある。なら二人で鍛えるのもアリか。
「決めるのはフレアさんだけど。聞くだけ聞いてみるよ」
僕の回答はキハを喜ばせて、飛び跳ねさせるのに充分だったらしい。もしも明日断られたら相当落ち込むのだろうな。
「喜ぶのは許可されてからにしようよ」
彼の悲しむ顔は見たくない。キハも一緒に修行を積めますように。
訓練場を出て結構な時間を歩いた。もうすぐ僕の家の付近だという時。お馴染みの雄叫びが響く。
「見付けたぞレン・ドレイグゥ」
そして鳴り響く警報。今回の戦闘が終わったら索敵範囲を広げてもらおう。けれど今は目の前の敵に集中。何度も倒しているが、何故か素手での登場だと油断したら僕がやられる側になる。だけど、今度こそ捕らえてしぶとい奴との因縁にケリをつけよう。
「今度こそ大人しく捕まれ。人数的にも僕らが有利だろう」
僕が言い終えると敵は笑い出した。そして僕を睨み付ける。
「いやぁ参ったな。今までのが俺の全力だと思われてるらしいな」
口を閉じると男はステップを踏み出す。一度目よりも二度目、二度目よりも三度目。繰り返すほどに速度を増すステップ。既に人間が出せる速さを超えている。
「相棒が能力を見せたんだってな。だから俺もやっとお披露目できる訳だ。俺のは加速」
公園で戦った時の敵よりフレアさんの方が速いと感じた。実際間違ってはいなかったと思う。しかし。
「武器を出せよウスノロ。不意打ちの必要なんざないんだからよぉ」
ただのステップが起こす衝撃波で奴の周りの壁は粉微塵になる。つまりは近寄られたら僕を待つのは壁と同じ運命。ならば近寄られないようにするしかない。
「精々足掻くこったな。まぁ、その暇も与えねぇけどよ」
奴が、消えた。




