君と僕のために
頬を膨らませたパールの顔が近付く。色々な表情を見せる彼女。今回もまた新しいモノが僕の心の美術館に飾られた。
「勝手に決めてごめんね。けど、僕の予感が正しければ、僕自身が強くなるのは無駄なことにはならないと思う」
喋っている途中でついつい衝動に負けた僕は、彼女の頬を指で押す。すると空気が抜けて顔の横幅は元に戻ったが、口はへの字を描いている。
「最初の敵にはパールの武器はイメージ通りの威力を発揮してくれたんだ。なのに、次の戦闘からは毎回パワーアップしないと倒せていない。もしかしたら相手には対策する方法があるのかも」
への字口のまま僕を見つめていた彼女。けれど話を聞き終えると普段の表情を見せた。
「強すぎる武器を持てば他国を滅ぼす可能性もある。だから許可制にしていたんだ。敵側に私たちの武器に対抗する技術があるなんてことは、考えたくはなかった。だけどレンの言う通り、その可能性は無視する訳にはいかないよな」
彼女は眉を下げて瞳は僕の胸の辺りを見ている様子。先ほどと同じように顔のパーツは下がっているが、明らかに悲しんでいるのが分かる。
「うん。だから。もしも武器に頼れなくてもパールを守れるようになりたいんだ。フレアさんに修行をつけてもらってもいいかな?」
パールはゆっくりと顔を縦に動かす。そしてもう一度僕の目を見た彼女の表情は微笑みに満ちていた。
「私だけじゃなくて、レン自身の身も傷付いて欲しくない。だからこそ備えられることは何でもやろう。私にできることがあれば協力するからな」
必ず強くなろう。パールの微笑みと想いを守るために。
とはいえ修行開始は明日。今日は敵襲で中断しているデートを楽しみたいところ。
「パールさえ良ければデートの続きに行かない?」
頷いてくれたパール。気分ではないと言われるかもと思っていた僕は、半ば諦めていた分、嬉しさも倍増していた。
「レンはどこに行きたい?」
僕がパールに言おうとしていた台詞。優しい笑顔を浮かべる彼女に先に言われた。
「本当なら二人で遊べる所が良かったんだけど、今は落ち着ける場所の方が良いよね」
二人でゲームで遊ぶのも良いかな。なんて考えていた先ほどまでとは真逆の場所。静かで落ち着けるといえば。
「図書館か砂浜。パールはどっちが良い?」
最終的な決定権は彼女に委ねよう。パールが喜んでくれるのが僕にとっては一番。
「どっちも!」
目を輝かせて僕の右手を掴んだ彼女。警察署から家に帰った時と同じように、走り出した。目の輝きといい走り出したことといい、僕の願い通りに彼女を喜ばせられたらしい。もしかしたら、僕の女神が声に出していない願い事を叶えてくれたのかも。




