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原初の星  作者: 煌煌
第六話 エレバーの二人
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初デート

 鉄でできた建物が並ぶいつもと変わらない町。何も変わらないハズなのに僕の目には七色に輝いて映る。全ては繋いだ手を楽しそうに振る彼女のおかげ。


「で? どこに連れていってくれるんだ?」


 満面の笑みに溶かされそうだ。彼女ができたら一緒に行きたいと思っていた場所ならあるけれど、最初に行く所は決まっている。


「昨日行けなかったし公園に行こう」


 僕の提案にパールは頷く。デートスポットなんて知らないし、公園にいる間に通信機でキハにでも聞いてみよう。僕が想像していた場所で女の子が喜ぶのか分からないし。




「ここが公園か。実際に来てみると風が心地良いものだな。知らなかったよ」


 公園も彼女が作り上げた施設。昨日帰り道に寄ったカフェだってパールが作った物。だけど昨日も今日も心から楽しんでいる様子。喜んでもらえるなら一緒に来た甲斐もあるというもの。


「僕は久し振りに来たけれど、ゆっくりできて良いもんだよね」


 空を飛ぶスケートボードや五感で楽しめるゲームなんかもある世界。若者の遊び場は公園以外にもごまんとある。だから幼い子向けの遊具しかない公園を選ぶことは少ない。


「いや。公園自体が楽しい訳ではないかな」


 パールがウインク。流石の僕にも彼女の言葉の意味が分かる。


「それって僕と一緒だからってこと?」


 思わず考えたことが口から漏れた。僕の言葉が彼女の顔を赤くする。


「だから、わざわざ解説しないでくれ」


 照れてる表情もまた可愛い。けどわざとやると嫌がられるかも。なるべくしないように覚えておこう。


「ごめんごめん。お詫びにジュース取ってくるよ。ん。けどこういうときもパールに出してもらう方がいいのかな?」


 僕の質問にパールは首を横に振る。


「本当は私が出す方がいいんだろうけど。絶対という訳ではないし、レンの気持ちを受け取りたいかな?」


 話しながら向けられた無邪気な笑顔。よく変わる表情も彼女の魅力の一つ。


「じゃあ取ってくるよ。少し待ってて」




 自動製造機でジュースを選ぶ。そして何が欲しいか聞いてなかったことを思い出す。


「僕ってなんでこう。気が利かないなぁ」


 今から聞きに戻るよりも彼女の喜びそうな物を選んだ方が良いような気がする。軽くへこみながらも、僕の想像力は働きだす。

 昨日イチゴのパフェを喜んで食べていたよな。甘いものが好きなのか、イチゴが好きなのか。とにかくイチゴオレなら間違いないハズ。




「お待たせ」


 やってみたかったことリストの一つ。待っている彼女のほっぺたに持ってきたジュースを当てて、お待たせ。完了。


「わっ! 冷たいなぁ。けど、ありがとう」


 頬を膨らませた後に微笑むパール。理想通りのリアクション。一つ一つの言動が僕の理想。本当に自慢の彼女。もし願いを叶える能力がなかったとしても。




 冷たいジュースを飲みながらゆったりとした時間が流れる。けれど僕の、僕たちの平穏は長くは続かない。


「見付けたぞレン・ドレイグゥ」


 聞き覚えのある大声と同時に鳴り出すゴーグル。僕は武器を取り出す。理想の彼女を守るために。


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