団欒
午後八時。父さんも母さんも帰って来た。そして四人で食べる晩ごはん。昨日よりも格段に楽しい日常の一コマ。けれども一つ気になったことがある。
「今回は装置に頼ったけど、パールか装置、食品とか日用品はどっちに頼めば良いの?」
不思議そうな表情を浮かべる彼女。ふとした疑問ではあるけれど、大切なことなハズ。
「そんなにすぐにエネルギーが枯れるとも思えないけれど。少しでも節約すれば長く保つしな。私に任せてくれて良いよ」
パール本人にも難しい判断なのか。歯切れ悪く答えた彼女。悩む様子もまた可愛い。
食べ終えた食器を洗うパールと手伝う僕。洗い終えてリビングに戻るとニュースが流れていた。今日捕らえた男の写真と名前が映し出される。テレビからの情報によると、男はカラルの東の国、エレバーから来たと言う。エレバーは何度も機械を求めて侵略を繰り返してきた国。今回の目的も同じ。
「機械が作るような武器を持っていて、役所にいたレンはこれからも狙われるかもな」
テレビを見ていた父さんが僕に視線を移して言う。冗談ではないと思うけれど、パールと初めて会った時、僕は誓った。彼女を守ると。
「この家も危ないのかな。いや、住所を知ってるならわざわざ街中で暴れたりしないか」
まだ覚悟とまでは言えないような気持ち。冷静を装う僕だけど、膝は震えていて考えは纏まらない。
「警察の見回りを通学路に集中させよう。それとパールちゃん。透明化した敵を発見できる装置か装備を十個ほどくれないか」
父さんの言葉で不安を感じていたけれど、ちゃんと拭ってくれた。やはり僕の父は頼りになる。最高で最強の父さん。
「ほら。レンの分もあるぞ。この前の敵意を持つ人物が周りにいるかを調べる装置の改良型。周りに敵がいればサイレンが鳴るから。更にゴーグルを着ければ透明化まで無効」
お役立ち装備を出す度に見られるどや顔。彼女の満足気な顔を見たいがために新装備を頼みそうな僕がいる。
探知機能付きゴーグルとはなんとも格好良い物を。僕は早速頭に着けた。今は近くに敵がいないらしく、うんともすんともしない。
とにかく今から肌身離さず持っていよう。愛しの彼女がせっかくサービスで僕の分まで出してくれたのだから。
「レンのだけ赤と銀なんだ。髪色に合うかと思って」
パールに言われて鏡に向かう。なんだか久しぶりにゆっくり鏡を見るな。
深緋の髪に銀を基調としたゴーグルは良く似合う。丸いアーモンド型の目に髪と同じ色の瞳。小さい鼻。薄めの唇。パーツは上手くまとまって見える。けれどやはりパールには全然釣り合わないなぁ。
少しへこんでいると件のパールが顔を覗かせた。洗面所の外から顔だけを中に入れて。
「ふむふむ。やはり似合うじゃないか。格好良いな」
ゴーグルを着けた僕を見て何やら得意気。自分としては見慣れた顔なので良くは分からないが、僕も少し自信が出た。
「そうかな。パールなら何着けても誰よりも似合いそうだけど」
言った瞬間に相当惚気た台詞だと気付く。ゴーグル越しでも分かるほどに彼女の顔は赤く、いや紅く色付いている。
「もういいから寝よう。先にベッドに行ってるからな」
パールの顔が引っ込み、聞こえた階段を上る足音。
「え? 一緒に寝るの?」




