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原初の星  作者: 煌煌
第五話 新しい一日
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新しい一日

 為す術なし。僕は振り上げられた大剣を見つめる。

 そして繰り出されるドロップキック。


「間に合った。大丈夫か?」


 蹴り飛ばされたのは敵。窮地を救ってくれた人物が僕に手を伸ばす。僕は手を掴み起き上がる。すると目の前にいるのは、キハ。


「俺も武器を作ってもらった。銃だから援護は任せてくれよ」


 見せてくれたのは僕の武器と同じような銀色。しかし拳銃のような形状をしている。敵に近接攻撃だけが効かないとしたら銃ならば倒せるかもしれない。


「僕の剣じゃダメージが通らないんだ。だけど銃なら倒せるかもしれない」


 ん? なら何故キハの蹴りで吹き飛んだんだろう。剣で斬りつけた時にも違和感を覚えた。まるで堅い壁を攻撃したかのような手応えを。


「銃でもダイヤの剣でも俺の鎧は貫けない。二人まとめて死ぬが良い」


 やはり鎧か。今の僕の剣では斬れないほどの。なら新しい刃を出せば済む話。イメージするのは。


「キハ。援護お願い。新しい武器を試す」


 刃を出すのは斬りつける瞬間。イメージの固まった僕は敵を目掛けて走り出す。堅い鎧に護られた敵は足を動かさずに迎撃する構えを取る。

 次の武器が効かなければ僕がやられるかもしれない。けれど、勝てる見込みはある。

 敵が武器を振り上げた。斬り下ろしが敵のブームなのか。いや、違う。武器のリーチを活かした一撃。右から襲う横薙ぎ。


「今だ!」


 敵の武器を斬り上げる。僕に襲い掛かる黒い刀身は二つに分かれ、体を掠めた。見事な切れ味を発揮した新兵器。水の刃。

 大振りの横薙ぎを切断した僕の目の前には隙だらけの敵。次は僕の番だ。身を屈めて接近すると、相手の胴体目掛けて右手一本で右から左へと剣を振り抜く。


「ぐぇ」


 鎧を裂いた瞬間に水流を止め、ただの鉄の塊をお見舞いした。水圧で切断する攻撃をイメージしていたので気絶させるだけで済む。


「やったな! ジェット水流って奴か?」


 駆け寄って来たキハ。彼に視線を移したいが、僕にはすべきことがある。転送装置の破壊だ。


「キハも手伝って。怪しい物を外すんだ」


 まずはマスクを外す。現れた顔は、二十代くらいの男。次に服を脱がす。すると手首に時計のような物を着けている。けれど見たことのない文字が並ぶ。


「これかな? とりあえず外そう」


 外して地面に投げると、腕時計が消えた。今回は敵に逃げられなくて済みそうだな。


「レーン! キハー! 警察が来たぞー」


 曲がり角から走り寄って来るパール。セイラちゃんと警察隊が後に続く。また長い聴取か。




「今日の顛末は伸びてる男に聞く」


 また日付が変わるまで警察署に缶詰にされるのかと諦めていた僕。しかし現場の指示を出すゴランさんに帰された。

 今は僕の家の前。興奮冷めやらぬ様子のキハ。テレフープの中でも外でも僕の活躍を二人に話す。


「明日が休みなのが惜しいくらいだよ。まだまだ話し足りないのに」


 悔しげなキハの背中をセイラちゃんが押して帰る。


「また来週にでも話聞いてあげてね」




 暗くなった道を歩く二人を見えなくなるまで見送ると、僕は家の鍵を開けた。

 誰もおらず暗い家の中。けれど今日からは僕一人ではない。後ろで電気をつけてくれた彼女がいるから。


「今日はお疲れ様。ゆっくり休もうな」


 昨日とは違う。僕の長くて新しい一日が、彼女の微笑みでようやく終わりを告げる。


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