平和な戦い
パールは僕に微笑み掛けると、先生の横に向かった。彼女の美しさにどよめく教室内。セイラちゃんとキハは大人しく。いや、何故パールが学校に来て、しかも僕たちと同級生になれるのかと驚いている模様。けれど、僕たち三人の驚きを他所に、喜ぶクラスメイトの中には踊り出す男子までいる。
「はじめまして。パールです。以前は。えーと。遠いトコロにいました」
言葉を選ぶようにゆっくり話す彼女。美貌と同じように綺麗な声に、のたうつ男たち。特に彼らの反応を楽しむ様子もなく、パールは僕へと微笑みを向け直す。
「彼氏のレンがいる、この学校に転校して来ました。皆さんよろしくお願いします」
一斉に僕を睨み付ける男ども。気持ちは分からなくもないけど、僕はキハを恨んだことなんてないぞ。だけどなんだか。ほんの少しだけ、優越感。
「普通空いてる席って後ろの方のはずなのですが、ドレイグくんのお父様からの要請で彼の隣の席を空けました」
僕に突き刺さる男子からの殺意。優越感に浸っている余裕はない。僕の動揺に関係なくパールは隣の席に着く。
「よろしくな。これでずっと一緒だ」
嬉しそうな彼女。視界の端で目から血を流すクラスメイト。不安な気持ちと天秤に掛けるまでもなく、僕の心を満たすのは喜び。彼女と一緒にいられる喜びだ。
「こちらこそよろしくね。パールが来てくれて嬉しいよ」
午前よりも特別に思える授業。まさか先生も機械自身に機械のことを教えているとは思うまい。
「レンなんて止めて俺にもチャンスを」
「どうしてレンなんだよ」
休み時間のパールを取り囲んだ男子たちの言葉。
「パールさん凄い肌綺麗できめ細かいぃん」
「美の秘訣を教えて」
男子だけでなく女子にも囲まれたパール。そして噂を聞き付けた隣のクラスの生徒まで押し寄せて、来る人来る人に遠ざけられた僕は、階段の前まで押しやられた。
「まるで暴動だよ。全く」
けれどパールが現れたことで、休み時間の廊下も虹色に輝いて見える。廊下の隅から刺さる視線も今までとは全く違う。
「戦争の英雄の息子で超絶無敵美少女の彼氏ですって。人生の勝ち組ですわね。勝ち組。やぁねぇ」
父の影響でパールが彼女になった訳じゃないのに。まだ僕の実績にはならない。いや、実績とかなんとかはパールに失礼だ。他の人に何と思われようが、彼女が僕を選んでくれたことだけが大事。
休み時間を終えるベルが鳴る。僕のクラスを取り囲んでいた人だかりも自分たちの教室へと消えて行く。休み時間なのに全然休めなかったな。
「おかえり。死ぬかと思った」
パールも一緒か。
次の授業中もパールに降り注ぐ視線。休み時間が近付くにつれ、鋭く強くなってゆく。
「ん。また休み時間か。憂鬱だな」
鳴り響くベル。僕はパールの手を握り締め教室を飛び出した。強く、速く。




