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原初の星  作者: 煌煌
第三十六話 始まりの終わり
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始まりの終わり

 意識が飛ぶ直前。左側面からの衝撃。神覚でも確認できないほどに突然現れた人物に、蹴り飛ばされたことで一命を取り留めた。


「成る程。騎士を選ぶ目だけは確かか」


 命の恩人の姿を捉えようと、視線を移す。けれど目でも感覚でも気配は掴めない。だが何故か心の赤い火は再び燃え上がっている。甦る闘志。あと一度、彼女を救いに行く。


「しかし無駄なことよ」


 熱を感じない言葉が僕を刺す。またしても光が届き、終末が訪れる。けれど、渦の中に僕はいない。瞬間移動。テレフープとは違い心の命じた地点へ即座に転位。攻撃にも応用することで、回避不能な速度で腕を振れる。


「既に娘達でも辿り着けぬ境地に至ったか。私の力の一部を使ったとはいえ、トパーズを倒せたのも当然だな」


 褒める言葉とは裏腹に、僕の攻撃は一度も奴の体を捉えられない。空気を斬ろうとするかのように、接触部分が無の空間となる。


「私がいなければ最強の存在はお前だった。しかし、私がいなければお前も存在せぬが」


 声からも一切の焦りは感じられず。最強の座は揺るがぬまま。攻撃のイメージを変えたところで無意味。何一つ通りはしない。

 何度も思考を繰り返した後、ついには時間が動く。眼前の神は顔色も変えず、威圧感の増加だけで場面の転換を告げる。




 振り上げた腕を叩き付けた。硬いナニかにぶつかり、痺れが襲う。同時に目に映る景色の変化に気付く。見覚えのある場所。パールとして無限とも思える時を過ごした城の中。

 すぐに体へ転位の指令を出した。けれども僕は狭い空間に囚われたまま。世界の隔たりが意思の通行を許してはくれない。


「お前はソコで見ていろ」


 脳内に響く声。体の自由だけでなく神覚の展開まで奴に遮られている模様。遠くで話す三人と一体。しばらく後。イオンさんだけが歩み寄ってくる。


「レンさん。いつかこの星のことを誰かに話すときが来たら。私たちのこと、思い出してくださいね」


 まるで別れの挨拶。台詞も、止まることのない涙で溢れた表情も。きっと僕も同じ。


「まだ僕は死んでない! まだ戦えるんだ。みんなで力を合わせれば」


 必死の叫びは彼女に届いたのだろうか? 僕の心と仲間たちのいる世界を隔てる壁が、最後の願いも阻んでいるのかもしれない。


「貴方とパールさんがいれば、きっと大丈夫です。私の、この世の英雄と神様ですから」


 イオンさんの隣にアグルさんが立つ。二人は無理している素振りもなく、ただ笑う。


「またいつか」




 城の壁を叩き続ける僕。いつの間にか後ろにいたパールが触れた。


「今は、これしかないんだ」


 背中から優しく柔らかい熱が伝わる。僕の打撃にも傷一つ付かない二人きりの世界で。パールの気持ちだけが流れ込む。




 巨大な光が外の二人に近付く。


「私たちの最後は、二人に託します」


 背中を見せた彼女たちの表情を、今はもう知る術がない。しかし、パールの城は上空へ舞い上がり。原初の星と月と太陽だけの空間まで飛翔。実際に見た僕達の始まり。

 八十億人の生命と一人の女神が織り成す。白銀の球体。城の窓一杯に映し出される光。




 神覚を巡らせる自由を許され、星の全てを確認できた。人々の時間は止められ、神だけ動くことの許された世界。そして始まりは、終わる。全てを産む大爆発によって。


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