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原初の星  作者: 煌煌
第三十六話 始まりの終わり
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バッドエンド

 右手を蹴られたモミジは、僕たちと距離を置いた。反撃の暇を与える訳にはいかない。すかさず接近してパールニウムの刃で斬る。

 右上への一撃が彼女を捉えたハズだった。

 なのに繰り返される攻撃動作。接近して、斬り上げる。二つの動きがループ。


「中々に良い動きであった。故に永遠に繰り返すがいい。さすれば先の無礼は忘れよう」


 止めようとしても無駄。精神しか先に進むことは許されず。肉体は時の牢獄の中。

 するとモミジは、あえて焦らすような速度で進む。神覚の中には動けない様子のパールが映り、僕は冷静さを失くす一方。


「仲間をやられて黙っちゃいられねェ!」


 フレアの部下である二人。アイとスエロが踏み込んだ。だが結果はヴァンさんと一緒。瞳の色を失うと、力なく座り込む。




「やはり、エラーは取り除く必要があるようだな。毎回不快な音を立てられては堪らん」


 仲間を想った彼らの言葉。なのに、不快な音だと切り捨てた。悲しみに涙さえ流せない僕に代わり、トリーさんが動く。


「さっきからエラーエラーって、人の気持ちを考えなさいよ! 何様のつもりだ!」


 分身体で取り囲み一斉攻撃。先ほどの三人とは違い、途中で動きも止まらない。視界の端には、激しい緑の光。尽きることなく輝き続け、モミジに向かって軍隊を送り出す。


「パールの武器を持つ者か。面倒だな」


 分身体に覆い尽くされ、モミジの姿は見えない。けど脳内に流れ込む声が、不服な様子を教えた。彼女の圧倒的な力も。

 攻撃に動作はなく、ただ見るだけ。意思も生命も持たない分身体さえも、彼女の摂理に逆らえはしなかった。全滅したかと思うと、直後にトリーさんが背後から斬り掛かる。


「もらった」


 速度も威力も十分。人の限界とも思える、煌めきを超える一撃。なのに。


「ふむ。時の中で過ごす身としては、頂とも言えるのだろうな」


 捕らえられたのは、トリーさん。何もない空間に浮かび、苦しそうに踠く。




 モミジは僕の背後を見つめたままで前進。パールとトリーさん。二人に危険が迫る中、三人の魂が散ったというのに、僕は見ていることしかできないのか。


「お姉様はやらせません!」


 パールの前に立つアグルさん。同時にキハとセイラちゃんはモミジを挟撃。


「流石に鬱陶しいぞ?」


 奴の一言で二人はトリーさん同様、空中に囚われた。みんな死ぬ。僕の目の前で、僕の手の届く場所で。大切なみんなが。

 焦っても、強く求めても、届かない。でもだからといって、何もせずに終わるなんて。怒りと諦め。反抗と従順。心の中で繰り返す戦い。すると、パールと僕の鎧が熱を放つ。


「私の親友をこれ以上悲しませないで」


 目の前の彼女とは違う。人の心を感じる、優しさと強さが溢れる声。パールの想いが、人々の歴史が紡いだ確かな力。

 時間が動くよりも速く僕の身体は流れる。




 牢獄から脱出。横を通り過ぎようとする女に目掛けて、トパーズの時と同様。消滅するイメージを叩き付ける。真上から振り下ろす一撃は、ナニモノよりも速く駆け抜けた。


「バカな。この私が」


 モミジ。いや、神は僕を見つめて悔しげな声を漏らすと消滅。視界に映る三人は無事に解放され、今度こそ訪れる平和。




「ふむ。確かに悪くはないようだ」


 モミジ・ドレイグを模した彼女が、何事もなかったように眼前にいる。笑顔を湛えて。


「私には死も生もない。この世界も、他の娘たちの世界も、私が存在せねば消えるのみ」


 光を放つ彼女。思考の遅れが反応に響く。


「危ないっ!」


 既の所でイオンさんに押され、傾く身体。今、動くのが遅れれば消えるのは僕だけではない。即座に想像剣で斬り上げた。すると奴は目の前から消え去り、映るのはパールの島の自然。神覚の探知範囲にも、イオンさんとアグルさん。そしてパールの姿しかない。






「パールちゃんを守り抜けよ、親友」


 キハからの通信。次の瞬間、おそらく彼のペンダントから流れてきた、敵の声。


「十分やる。その後でパールの最も大切な物を除いて全てを壊す。話し合うが良い」


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