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原初の星  作者: 煌煌
第三十五話 ハッピーエンド
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ハッピーエンド

 倒したと思っても油断する訳にいかない。神であるトパーズに常識は通用せず、もしも探知から逃れる術があれば、実は生きていて星諸共破壊することだって考えられるから。

 だとしても。あり得ない存在が現れるまでは。警戒しつつ仲間たちと喜びを分かち合うことくらい、許されるんじゃないだろうか。


「レン! パールちゃん! 本当にアイツを倒したんだな。二人ともすげェよ!」


 興奮からか普段より口調が汚い親友の声。だけど背中に感じる暖かな気持ちは、平和の訪れを知らせる確かなモノ。振り返るとすぐ後ろにパール。ずっと遠くには仲間たちと、フレアの部下の姿。全員が穏やかな顔で手を振っている。敵だった三人のおかげで、僕は生き延びられた。だから手を振り返すくらい許されるよね。




 今日の夜は長く、カラルは月明かりを頼りに動いたまま。みんなを照らすのもまた、空に浮かぶ団々たる光。だからきっと、眩しさを感じているのは僕たちの方ではない。


「本当は全力で喜びたいんだけど。倒したと思ったのに、さっきは生きてたんだ。だからもしも何か見付けたら教えて欲しい」


 僕の言葉に全員が頷いた。本当は水を差すようなことを言いたくはなかったけれど。


「僕たちの処分がどうなるかは分からない。だが手伝えることならば、時間が許す限り、兄さんの代わりに何でもやらせて欲しい」


 覚悟を感じさせる真剣な表情をしたヴァンの言葉。彼の仲間も同意している様子。


「今回の襲撃に限っては彼らに意思はなく、鎧に操られるままになっていたそうです」


 イオンさんが右手を彼らに向け、悲しげな顔を見せて説明してくれた。もしかしたら、カラルに犠牲者を出すことなく、トパーズを倒す術もあったかもしれない。だとしても、僕はエレバーの人々を許そうと思う。憎しみのもたらす結果を、知っているのだから。




「なら仕方ないとは言えません。被害者の中には許せないと思う人もいるでしょう。けど僕は、未来にこんな悲しみを繰り返させたくないと思います」


 伸ばした右手をヴァンさんが握った。心の奥の焔が、少し大きくなった気がする。




 久し振りに感じる穏やかな時間。パールと話したいことは山ほどあるのだが、エレバーの三人に囲まれている彼女を連れ出す必要はもうない。今からはずっと二人で過ごせるのだから。などと考えていると、背中を誰かの指が突いた。振り向くと俯いたトリーさんの姿。なんだか普段より小さく見える。


「あの。今の戦い、役に立てなくて、ごめんなさい。私、皆さんに守られただけだった」


 彼女の言葉で思い浮かぶのは赤い分身体。もしパールと一緒にいたのがトリーさんじゃなければ、勝てなかっただろう。だから。


「この勝利は、星の全ての人の力だ。その中にはもちろんゲーラの存在も含まれている。だからちゃんと、借りは返せただろ?」


 決め台詞を言ったかのようなパールのどや顔。おそらくずっと我慢してたんだろうな。




 泣き崩れたトリーさんを、みんなで優しく励ましていた。すると、神覚に微弱な反応。先ほどまでの力は感じないが、放置するなどあり得ない。


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