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原初の星  作者: 煌煌
第四話 新生活
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開く扉

「レンが起きたぞー」


 パールが役所の中の母さんを呼ぶ。今度は慌てず歩いて寄ってくる僕の母。しっかり者というイメージを崩したくないのだろう。


「おはよう。顔を見た時はビックリしたけれど、パールさんに話を聞いて安心したわ」


 父さんと同じ赤い髪。だけど母さんのは腰までのロングで少し黄色味を帯びている。

 膝を突いて話し掛ける母さんの顔からは、さっきのような心配そうな表情はなくなっていた。今は優しさだけが浮かぶ。


「こんなに可愛い。いえ、美しい彼女さんをやたらと歩かせたらダメじゃないの」


 いや、僕が歩かせた訳じゃ。けれど止めなかったのは確かだしな。言い訳したって仕方ない。


「パールごめんね。母さんも仕事中なのに手を止めさせてごめん」


 意外そうな顔をする母さん。子供みたいに言い訳をすると思っていたのだろうか。確かにまだ子供だけれど。


「私には謝る必要ないのよ。家族なんだし」


 今、母さんの視線が一瞬僕から外れたような気がする。


「わ、私にも謝る必要はないぞ。彼女なんだからな」


 いやパールも対抗心燃やさなくても。というか、人の頭の上で火花を散らすのは止めてほしい。


「何で母さんは挑発するのさ。パールも母さんと初めて会った訳じゃないんだし、喧嘩しないで」


 話しながら起き上がる。パールが背中を押し、母さんが僕の手を引く。全く労力を費やさずに起き上がった。喧嘩してた割に抜群の相性を見せ付けられたような。


「あら、パールちゃんやるわね。レンの彼女兼私の助手なんてどう?」


 パールが機械の整備をしてたら僕は堪らず噴き出すだろう。今も想像しただけで面白いのだから。


「いや、私は」


 言葉を選んでいるのか、少し答えに詰まるパール。


「機械とかよく分からないから」


 もはや彼女が何と答えても大喜利状態。僕はまたしても崩れ落ちた。今度は前に。


「えっ。何がそんなに面白いの? もしかして頭でも打ったのかしら」


 他の人がいる前でパールが機械だと言う訳にはいかない。けれど母よ。後でたっぷりと説明して差し上げよう。


「僕のことはいいから。仕事してきなよ」


 腑に落ちない様子の母さん。けどいつまでも機械の部屋に入れないと全世界が困る。


「そう? じゃあまた後で話を聞かせてね」


 手を振りながら離れていく。すると後ろのパールが僕に声を掛ける。


「たぶん私が行かないとロックは解除できないから、一緒に行ってくるよ。レンは家の鍵を探しておいて」


 にこやかな笑顔を浮かべ、彼女も手を振り去っていく。いきなり一人きりになり、少し取り残されたような気分。

 へこんでいても仕方ない。早く鍵を探して二人の所へ行こう。




「確かこの辺でパールと話してたよな。あ、あった」


 僕に彼女ができた場所。パールの名前を聞いた物陰。あまりの驚きに鞄を置き忘れたらしい。特に事件も起きずに鞄を拾うと、僕は二人のいる部屋へと向かう。


「パールちゃんたら凄いのよ。私たちが全く開けられなかったロックを一瞬で解除するんだから」


 興奮気味に話す母さんと少し引いている様子のパール。何故簡単に開けられたのかと詰め寄られたんだろうな。


「パールが引いてるから。少し落ち着いて。装置の点検をしたら帰れるよね? 僕らも一緒に行くよ」


 パールに顔を向けると彼女は深く頷いた。コアを失くした僕らの神様。幼い頃から何度も見た巨大な姿。果たして今もちゃんと動くのだろうか。


「じゃあ、入ろうか」


 パールが扉を開く。


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